『悪夢探偵』松田龍平インタビュー

悪夢探偵 松田龍平インタビュー

「以前から塚本監督と一度仕事をしたいと思っていたので、オファーをもらったときは嬉しかったです。最初に脚本を読んだとき──ト書きに『黒いマントに裸』とあって、首に巻くような風呂敷みたいなマントを想像したんですけど、実際はけっこうちゃんとしたマントだった(笑)」

本作でいうマントもそうだが、強烈なビジュアルは塚本作品に欠かせないアイテムのひとつでもある。また、それ以上に注目すべきはユニークなキャラクター。松田龍平の演じる主人公・悪夢探偵こと影沼京一は、悪夢から人を助けるヒーローではあるが、事件解決に“超”後ろ向き。おまけに自殺願望はあるし、やる気はない…という風変わりな男だ。

「最初からヒーローという目線では見てなかったんです。完成した映画を観て京一は精神的に弱いなぁって思いました。登場してすぐにやられちゃうし(苦笑)。でも、ピンチのギリギリ、タイミングよく出てきてくれるので、その辺は正義の味方って感じはしますね」

夢なら何でもあり!?

塚本監督からは京一を演じるにあたって特に注文はなかったそうだが、監督の中で完璧に創られた京一像をつかみ取ることは簡単ではなかったはず。

「そうですね…。今回はhitomiさんが演技初ということで、何日かリハーサルがあったんです。リハ最終日にhitomiさんと安藤くんと3人で顔合わせをして、その時に何となく京一の雰囲気がつかめたというか。京一はクセのある台詞が多いので、役作りというよりもその台詞に忠実に演じた方がいいのかなと。印象的な台詞ですか?『ああ、いやだ、ああああ、いやだ。ああ、いやだ…』ですね(笑)。

ただ、台本だけではどういう映画になるのか見えてこない部分もありました。夢の中に入ったり出たり、夢が何層にもなっていたりするので、それを映像でどう表現するのかが楽しみでした」

確かに、夢なのか現実なのか、一体自分は今どんな世界を目の前にしているのか分からなくなる瞬間が何度も訪れる。それがこの作品のみどころでもある。

「冒頭で畳と座布団の間からスラッ〜と出てくるシーンは楽しかったですよ。夢なら何でもありっていうかね(笑)。あと、京一と塚本さん演じる〈ヤツ〉との闘いシーンは驚きますよ。共演シーンではあるんですが塚本さんと僕と別々で撮影をしたんです。完成した映像を観て『塚本さん、やべぇな!』って思いましたから(笑)」

こういう色の作品が好き

本作では監督・脚本・撮影、美術、編集、出演を自らこなした塚本晋也。松田龍平の感じた“やべぇ”塚本晋也とは一体どんな男だったのだろうか。
「自分のやりたいことが明確に見えている監督ですよね。あれだけこなすっていうのは本当にすごい。照明、音声、カメラ…すべてのスタッフを信頼していないといい作品はできないというのはどの現場でも言えること。ただ、塚本さんがすべて把握していることで色が統一されている。

だから、そこにゆるぎない信用が生まれるんだと思うんです。撮影現場が楽しくて、作品が面白い──役者としてはそれに優るものはないですからね」

テーマである夢について訊くと──
「夢はあまり見ないし、見ても覚えてないことがほとんどで…。ぶっ飛んだような〈ヤツ〉とか出てくる夢だったらインパクトあって面白いんでしょうけど。でも、夢って面白いですよね。

突然シチュエーションが変わったり、ありえない展開が起きたり…そういう意味ではこの作品で描かれているように、夢が何層にもなっているのも心の深層が夢として現れるっていうのも納得できます」

「『悪夢探偵』と出会ったことで、自分はこういう色の作品が好きなんだということが分かった」という松田龍平。最後にこんなメッセージを残してくれた。
「『面白いから観てよ!』って言うのが一番なんですけど、敢えて言うなら──生きたい、死にたいという気持ちが比例している不思議な力強さを持った作品だと思うんです。正月早々“悪夢”ではありますが(笑)、ラストは希望の持てる話になっているので、ぜひ!」
(text:Rie Shintani/photo:Toshio Kumagai)

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作品情報『悪夢探偵』
監督
塚本晋也
俳優
松田龍平hitomi安藤政信大杉漣原田芳雄塚本晋也ほか

2007年1月13日よりシネセゾン渋谷、池袋シネマサンシャインほか全国にて公開
2007,日本,ムービーアイ・エンタテインメント