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『手紙』玉山鉄二インタビュー

玉山鉄二

玉山さんが新作『手紙』で見せた演技は、衝撃的だった。両親を早くに亡くし、山田孝之演じる弟のためだけを思って生きてきた青年を演じている。彼は、弟の進学費用欲しさに資産家宅へと侵入し、誤ってその家の主婦を殺害してしまう。そして弟は兄が犯した罪ゆえに、弟は社会から差別を受け、恋人も夢も失ってしまうのだ。原作は、東野圭吾の同名社会派小説。ベストセラーを頻発する筆者の作品群の中でも、常にファンからの強い支持を集めて続けている作品だ。

「社会に対して、時代に対してメッセージ性が強い作品。自分も中学生、高校生のときに、放送されていた沢山の社会派ドラマに影響を受けたことが沢山あった。今回、『手紙』という作品を通して、観ている人たちが何か考えるきっかけ、思うきっかけを作ってもらえればいいなと思いました」

そう話す玉山さんだが、演じるのは手違いとはいえ人を殺めてしまった犯罪者の役。これまで演じてきた役の中でも最も複雑でリアルな青年を演じるにあたっての覚悟は並々ならぬものだったという。「不安や恐怖は全くなかったけれど、これだけメッセージ性の強い作品で、原作もすごく素晴らしいので、間違った演じ方は絶対にしちゃだめだなと思っていました。テーマがとてもデリケートなものなので、慎重に自分の思いを確認しながら演じなきゃいけないなと思ったんです」

字は生きてるものだし、書く人の感情が表に出るもの

罪を犯すとは。そしてその罪に与えられる罰とは。そして、その先にある真の更正とは。難しくも重要なテーマを紐解いていく鍵となるのが、兄と弟の間で交わされる手紙のやりとりだ。玉山さん自身、この映画をきっかけに手紙の素晴らしさを実感できたのだそうだ。


玉山鉄二

「今まで、あまり手紙を書くことがなくて。メールや電話をする方なので。でも、実家のある京都から東京に出てきて、1年ぐらい経ったとき、おふくろから手紙が来たんです。

そのときに、お袋ってこういう字を書くんだと、22年ぐらい生きてきて初めて知った。そして、その手紙一枚だったんですが、内容以外の部分が自分の中に入ってくるという印象を受けました。自分のことを凄く思ってくれているんだとか。字って生きてるものだし、書く人の感情が表に出るもの。そう実感しましたね」

本作で、そんな手紙があぶり出すのは兄弟愛だけではない。加害者家族の悲劇とともに被害者家族が抱え続ける永遠に消えない痛みにも触れ、壮大な人間ドラマを映し出している。

死ぬまで加害者と被害者は背中合わせ

日頃、私たちがニュースでは決して知ることのできない、事件の知られざる側面を丁寧に、だが厳しく、ときに慈愛に満ちた視点でえぐり出していくのだ。「犯罪に対しての考え方、ニュースの見方が変わりましたね。日本という犯罪大国の中で、数ある事件があって、でもひとつの法律でしか物事はくくれなくて。それに対して遺族はやるせない気持ちになる。犯人が服役することで、遺族の苦しみが癒えるわけではない。加害者にとってはもしかすると自己満足の世界なのかもしれないし」。そして、ひとつひとつの言葉をゆっくりと選び、かみ締めるようにしてこう続ける。「やっぱり答えが無い世界。(加害者や加害者家族が)差別を受けることも、もしかしたら償いなのかもしれない。死ぬまで加害者と被害者は背中合わせなんだろうなと思いますね」

人生初という丸刈りスタイルで難役に挑み、見事な演技で観る者を圧倒してくれた玉山鉄二さん。役者道をまっすぐに歩み続けている彼が本作で見せた新たなる魅力は、日本映画界にとっても大きな収穫であるに違いない。

(text:June Makiguchi)
もっと恋をするアジアの男たち

日本映画界はいまクールな表情が魅力の若手俳優が注目。『悪夢探偵』『長州ファイブ』『世界はときどき美しい (2006)』と来年にかけて新作公開が続く松田龍平は、さすが故・松田優作の血を引くだけあって、硬派な演技は折り紙つき。年々人気・実力ともに増すオダギリジョーは、時には見せるコミカルな表情も魅力のうち。来年GWに大ベストセラーの映画化『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』が控え、こちらも注目。独特の存在感で話題作へのオファーが相次ぐ加瀬亮は『硫黄島からの手紙』でハリウッド進出。『Shall We ダンス?』の周防監督が手がける『それでもボクはやってない』では見事主演を務める。

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作品情報『手紙』
監督
生野慈朗
俳優
山田孝之玉山鉄二沢尻エリカ吹石一恵尾上寛之ほか

2006年11月3日より渋谷東急ほか全国松竹・東急系にて公開
2006,日本,ギャガ・コミュニケーションズ powered byヒューマックスシネマ
©2006『手紙』製作委員会