
恋愛映画に登場するヒロインは、贅肉のない完璧なボディを持つ美女であることが多い。一日中、隙のない完璧なファッションに身を包み、寝るときは素敵なネグリジェに薄化粧。そして極めつけは、おき抜けの顔。むくみもなく、髪も整い、まったくの崩れなし。
でも、こんな人なんていないよねというのが観る側の本音。
ところが、『カンバセーションズ』の女は、ひと味違う。ドレスを脱いだら、おなかは可愛くプルプル。「これが今の私なのよ。文句アル?」とでも言いたげな貫禄あるボディなのだ。飾らず、取り繕わず、思い切りの良い30女の等身大な女性像に、なんだか親しみを感じてしまう。演じるヘレナ・ボナム=カーター(ご本人は40歳)の勇気にも拍手!
10年ぶりに再会した男と女。お互いに、時に経過によって生じた変化が、相手にどう見られるのかはどうしても気になるところ。久々に体を重ねればなおのこと。
それなのに、デリカシーも成長も全くない男は、「長い髪の方がいい」とか「肌のキメが違う。紙のようにカサカサだ」などと、とんでもないイジワルを口にする。女は、それに対してムキになるほどもう子供でもないし、子供っぽい男を相手に喧嘩をするほど熱くもない。10年前の自分と今の自分とが大きく違うことぐらい、自分が一番知っているのだから。
それでも、照れ隠しの無邪気な言葉は、どれだけ女心を傷つけることか。こんなときこそ、女は昔の男との埋められない溝、越えられない違いを実感するのかも。
お互いを知り尽くした仲だからこそ、隠しておきたいこともあれば、隠す必要のないこともある。例えば、止められない悪癖も、昔の男にならば気にすることなく見せられるというもの。
女は夫に隠れて吸っているタバコも、昔の男の前では気兼ねなく吸う。男はその事実を知って、秘密を共有したような気になるのか、自分だけは特別のような気がするのか、「僕の前では吸ってくれる」と笑顔を見せる。
だが、それって本当に男が思っているような“親しみのしるし”なのか。女は、大事な人の前では少しでも自分を良く見せたいと思うもの。相手が喜ぶよう、禁煙しているフリをするのも、その人が自分の人生において大切だと思っているからなのかもしれない。どうでもいい男の前では、概して女は気兼ねなどしないのだから。
女は男より精神年齢が上だというのが世の定説。それが事実かどうかは、関係性にもよるだろうが、実はこの傾向、決してネガティブなものではない。
実は女性には、少年らしさを残した男性が好きという人も多いのだ。頼りがいがある人が好きとか、包容力がある人が好きとは言うけれど、それに加えて、自分だけに見せる可愛らしさ、弱さというものにめっぽう弱い。特に、年齢を重ねるに連れ、若い頃は許せなかった男性のそんな部分も受け入れてしまいたくなるのだ。
だからこそ、元カレの子供っぽい発言や、成長の感じられない態度も、なんとなく許せてしまう。そのときに、相手を余裕で許せてしまうほど大人になった自分に気づいたりして。そこでついこの発言。どっしりと構えた自分を、つい“年増女”と称してしまった、30女のリアルな感情がここに現われている。
恋愛ドラマにありがちなもの。それは、実際にはありえないほど出来すぎた話と、とってつけたようなハッピーエンド。そろそろ、そんな非現実的な結末にも飽きはじめてきた人に、この映画はもってこい。ここには極めてリアルな“エンディング”が用意されている。
人生を達観した女と、ロマンを求め続ける男が再び出会ったとき、どんな結末がお似合いなのか。2人の“恋”にまだ可能性はあるのか。2人にとって、これまで築き上げてきた人生をすっかり投げ捨てるのは「アリ」なのか。
もう一度、どこかでやり直そうと語りかける男。そう話す男が今さらそんなことはできないと承知しているであろうことを、十分知っている女。そんな男女の会話を通して見えて来るのは、大人の恋愛のリアルなのである。
Ads by Overture
2007年2月3日よりシネスイッチ銀座ほか全国にて順次公開
2005,アメリカ,松竹
©CONVERSATIONS WITH OTHER WOMEN LLC ALL RIGHTS RESERVED.