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  明かりが消えた世界は、真っ暗闇とは限らない。実はその反対で、光が消えて見えてくるものは実は意外と多いものだ。溢れんばかりの星空、ぼんやりとした月明かり。ネオン輝く大都会から離れ、漆黒の夜を経験した人ならお分かりだろう。そして、スクリーンの中の世界、つまり映画だって、明かりのないところでこそ浮かび上がってくる世界のひとつだ。


光に溢れた現代社会。特に日本は、白く眩しい蛍光灯の光に溢れている。明るく輝く蛍光灯は便利だが、自然光とは違い冷たく人工的だ。この光は、その役割ゆえ、極めて事務的に物事を照らし出す。そして時には、人の心を緊張させ、人の目もくらませる。もしかすると、物事の本質まで見失わせてしまうのかもしれない。

だからこそ、リラックスしたい夜には、そんな光をあえて少しだけ消してみる。そして、キャンドルに火を灯す。蛍光灯とは違う、あたたかみのあるオレンジの光は、いつもと同じ見慣れた部屋を全く違った表情に変える。不思議なことに、その明かりに照らされた途端、自分の心の表情も徐々に変わっていくことに気づくだろう。

上手くいかない仕事のこと、こじれてしまった人間関係、最近しっくり来ない恋人のこと。理由のわからない苛立ちや緊張さえもほどけていき、心のこわばりが消えていく。鎧を脱ぎ捨て、すっかり裸になった自分自身の本心が、少しだけ見えてくるかもしれない。

明かりが人間の心理状態に影響を大きな与えることはすでにご存知のことだろう。昔から、ろうそくの火が精神統一を必要とする宗教儀式や厳かな行事に使われていたことでも明らかだ。

実は、ある本で読んだことがある。顔がやっと見えるほどの、ほんのりとした明かりの中で、パートナーと向き会う。リラックスした状態でこれを行えば、やがて相手の前世が見えてくるのだと。それを信じるかどうかはあなた次第だが、光のあたり次第で、見え隠れするものが世の中にはあるということは、誰もが認める事実だろう。

光の洪水に飲み込まれたまま、何気なく日々を過ごすのではなく、たまにはオレンジ色に輝くキャンドルライトのもと、ゆったりと過ごす時間を持ちたいものだ。そうすれば、忙しい毎日の中で、忘れがちになっている大切な存在、大事な想い、小さな幸せを再認識できるのではないだろうか。

劇場の明かりが消え、『大停電の夜に』が上映される。そのとき、あなたの心に去来するのは、いったいどんな思いだろうか。


牧口じゅん | June Makiguchi
(株)共同通信社、(株)カフェグルーヴを経てフリー・ライターに。映画を観るのも好きだけど、
取材を通して作り手たちの素顔を覗くのはもっと好き。
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映画祭事務局でゲスト招聘も担当していたので、いろいろなスターの秘話も飛び出すかも!?