『ドレスデン、運命の日』ローランド・ズゾ・リヒター監督インタビュー

「ドレスデン、運命の日」ローランド・ズゾ・リヒター監督インタビュー

「2005年、あの夜の空爆によって倒壊した聖母教会の再建事業が完了し、落成式典が行われたことで、ドイツメディアの中でドレスデンへの関心が一気に高まりました。長い間、戦争の加害者としての視点で歴史を振り返ってきたドイツにとって、これだけの時を経た今、初めてその歴史を別の角度から見ることができるようになったということでしょう」と映画化にいたるきっかけと経緯をリヒター監督はこう語る。

描きたかったのは“真実”

実際の出来事、しかもそれが戦争時の事であればなおさら、映画化にあたってナーバスにならなかったのだろうか。

「確かに、映画化は私にとって難しいものでした。しかし、“あの凄まじい破壊を描き切ることなど所詮出来ないのだ”という謙虚さを持ちながらも、出来る限り忠実に再現しようという姿勢で取り組みました。

ドイツ人看護婦・アンナとイギリス人パイロット・ロバートの愛の物語を中心にストーリーは進んでいきますが、そのストーリーはあくまで“フィクション”。ストーリーで強調したい部分を多少犠牲にしてでも、歴史的“事実”の方を忠実に描くことで、人々の苦しみをより多く表現したかったのです」

限界ぎりぎりで撮影された空爆シーン

その言葉を代表するのが、クライマックスの空爆シーン。炎の海と化した街を人々が逃げまどう様子はとてもリアルで、痛いほど胸を締め付けられる。「破壊の凄まじさを劇的に描くことで、戦争とは何かを伝えたかった」と語るリヒター監督。

「他の戦争映画にありがちな、戦争の情景をストーリーの単なる背景として描くことはしませんでした。あくまで、戦争による“破壊”と“恐ろしさ”をメインに描くことが最も重要だと考えたからです。

そこで、100ヶ所以上から炎を出し、その炎に360度囲まれるセットを作りました。さらに、3〜4台の巨大な扇風機や煙を噴出する装置などを用いて実際にカタストロフィを創り出し、その中に俳優と我々スタッフが入って撮影しました。あのシーンは、俳優たちがもはや“演じている”のではなく、肉体の限界ぎりぎりの危険な状況に、自然に“反応している”といってよいでしょう」

戦争から学べることはただひとつ

ドイツ国内では多くの感動の声が寄せられる中、当時を知る世代の人々の声の中に「観たくないと思いつつも観たが、当時の状況はまさに映画で描かれていたとおりだった」というものが多かったことを監督は明かす。「私がこの映画で表現したことが、現実に確かにそうだったのだと彼らが証言してくれたと思います」。若い世代の多くが、ドレスデンの空爆がどれほどひどいものであったのか、この映画を見て初めて知って驚いたという。

最後にリヒター監督は、映画に込めたメッセージをこのように語る。

「この映画の最も重要なポイントは、世の中にはどちらが良くてどちらが悪い、と単純に割り切れることなんてないということ。それを示すために、ドイツとイギリスの両方の視点からこの悲劇を描きました。戦争の多くが、エゴイスティックな考え方のごく少数の指導者によって引き起こされ、多くの文化、大勢の命が失われます。それら指導者が戦争によって得ようとしたことは、払われた犠牲とは比べものになりません。戦争から人間が学べることがあるとすれば、それはただ1つ――いかに戦争が無意味であるかということだけなのです」
(2007年2月 東京にて)

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