
――絶大な人気を誇る原作の中でも、人気の高い涼役に挑んだ勝地涼さん。小夜子同様、決して一筋縄ではいかないこのキャラクターは、彼にとってプレッシャーとの戦いだった。
「原作はもちろん脚本を読ませていただいた時も、まず難しいお話だなと思って。この独特の世界観を、自分が100%理解して、壊さないようにできるのか?っていうのが、最初はすごく不安でしたね。原作ファンの方も多いと思うので、プレッシャーもありましたし。でももう出演するのが決まったからには、これはやってやるしかない! と(笑)。
涼に関しては、彼が背負っているものを大事にしようと思っていました。一見クールで寡黙なんだけど、本当は優しくて、実は孤独で…っていうのを、セリフじゃなく表情や目で表現しなくちゃいけなかったので、そこは大変でしたね。でも僕としては絶対に“分かりやすく”は、したくなかったんです。暁(深水元基)との関係も、義兄弟だったりして、複雑だと思うんですが。例えば暁が“おい! 涼!”って強く出たとしても、そこに寂しそうな表情や弱さを全面に顔に出してしまったら分かりやすいなと思ったので、なるべく対等に喋るようにしたり。でもどこかで、寂しさ、弱さをにじませたいなとは思ってました」。
――これまで何度も共演を重ねてきている鈴木杏。そんな鈴木さん演じる小夜子は、勝地さんにとっても初めて見る彼女の一面だったとか。
「小夜子に対しては、初めて会った時から“自分と同じ匂いがする”と涼は感じていると思います。同じ孤独を背負っているというか…。2人のシーンでは、警戒しながらもセリフ以外のところで、お互い攻撃する感じを探ったりしていました。でも、杏ちゃんと役についての話し合いは特にしていません。これまでの作品でも普通のお喋りはしても、役についてじっくり話すことってないんです。たぶん彼女もどういう涼を演じるんだろうと思ってたと思うし、僕もどんな小夜子を演じるんだろうと思ってた。正直、最初は小夜子=杏ちゃんのイメージがうまく湧かなくて、どういう小夜子になるのか、楽しみにしてたんです。でも現場に入ると、彼女はもう小夜子そのものでした。立っているだけで、なんかすごくゾクッとしたというか。僕は小夜子の魅力を自然と感じて、撮影に入れたんです」。
――及川監督からは、かなり具体的な演出を受けたという勝地さん。監督の画へのこだわりも現場で強く感じたという彼は、原作の世界観がスクリーンにしっかりと投影されていることを確信している。
「及川監督からは事前に『俺たちに明日はない』という映画を見てほしいと言われました。その主人公の関係が、涼と暁に似ているからと。現場に入ってからは、目の動き、強さ、表情、それこそ首の角度まで細かく指示されました。僕は細かく言われない方が不安になっちゃうタイプなので(笑)、すごくやりやすかったです。
監督の画へのこだわりも、撮影しながらひしひしと感じましたね。決して明るいだけの画ではないんですけど、スモークの炊き方、日の光、雨粒…、演じながら“綺麗だな〜”と思うほどでした。
お話自体は現実的というより、完璧に『吉祥天女』の世界なので、この世界観にどっぷり浸かって見てもらえたら嬉しい。もうとことん、はまり込んでほしいですね(笑)。そうなるだけの美しい映像になっていると思います」。
(text:Kaoru Endo/photo:HIRAROCK)
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