
――かねてから憧れの女優だったという鈴木杏と、本作で初共演を果たした本仮屋ユイカ。現場で改めて彼女と対峙し、感じるところも多かったようだ。
「原作を初めて読んだ時は、率直に“怖い〜!”と思ったんです。小夜子もそうですけど、彼女を取り巻く環境や運命がどんどん悪い方に転がっていく感じが、とにかく怖くて、悲しくて。やりきれない感じがしました。
でも今回の映画の小夜子は、原作よりは人間らしいというか、普通の女の子らしい部分も描かれているように私は感じました。杏ちゃんが演じることで別の魅力も生まれたし、それまで遠い存在だった小夜子が少し近くなったような…。
私にとって杏ちゃんは、とにかく特別な存在だったんです。私だけでなく、今の10代の女優さんにとっては、みんな杏ちゃんは特別だと思いますよ。私がお芝居を始めた頃から、彼女はすでにTVや映画で活躍していて、こんなにすごい同い年の女優さんがいるんだ! って感動したし、ずっと尊敬もしていました。今回、同じスクリーンに杏ちゃんと一緒に入っている自分を見た時は、本当に感慨深かった。単純に嬉しいな〜とも思いましたし(笑)」。
――そんな杏さんへの憧れに近い思いが、ユイカさん演じる由以子の小夜子への思いにリンクしたのはラッキーだったかもしれない。
「由以子の小夜子への気持ちって、恋にも似てると思うんです。すごく不思議な感情だと思う。私も鈴木杏っていう人に最初に抱いた感情は憧れだったので、そこは由以子とリンクしやすかったですね。撮影現場での杏ちゃんは、同世代の女の子としてはとても仲良くしてくれました。でも、どこかでいつも小夜子だった気もするんですよね。
すごく大きな渦があって、常にその中心にいるような…。足のつかない不安定な渦の中に立っているんじゃないかっていう感じは、カメラが回っていない時もありました」。
――由以子役を演じるにあたっては、小夜子への思いを探るほか、能の舞いをマスターするなど、事前の準備も必要だったユイカさん。そんな彼女に、及川監督が撮影初日に話したほのぼのエピソードとは?
「能のお稽古は、撮影の1ケ月前くらいからちょこちょこ通ってました。能って、すごく背筋が伸びるというか、神聖な気持ちになるんです。舞いの形一つ一つにも意味があったり、自分が当事者でもあるんですが、何かの風景になっていたり…。本当に奥深い世界でした。そうやって準備をしながらも、由以子の内面についてはいろいろ考えていたんですが、及川監督が撮影初日にとてもヒントになるお話をしてくださったんです。
以前、監督が知り合いの方から猫を預かってほしいって言われたんですって。で、1週間預かって、知り合いの方が引き取りに来た時“ものすごく悲しくて涙が出ちゃった”っていう話をしてくれたんです。で、“それが由以子の小夜子への気持ちなんだ”って…。そうゆう切ない感情を猫との別れに例えてお話してくださったんです。素敵な監督さんだなって、思いました。そこで打ち解けられたし、監督の由以子への愛情も感じられたのですごくよかったです。
この作品ってお話自体は明るいものではないのに、完成作を観た時は思った以上にあったかい気持ちになれた。それは自分でもちょっと意外でした。こんな、ゆったりした気持ちになるんだ〜って。映画では小夜子と由以子の友情がかなり重要な軸になっているので、それも関係あるのかもしれません。女の子同志の友情にも、注目してもらえると嬉しいです」。
(text:Kaoru Endo/photo:UTAMARU)
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