多くの女性が憧れる、ゴージャスで、やり甲斐があってエキサイティングな仕事。そんな“世界中の女性たちが死ぬほど手にしたいと思っている仕事”とは、一流ファッション誌「RUNWAY」の編集長ミランダ・プリーストリーのアシスタント。業界のカリスマとして君臨し、長きに渡ってファッションのトレンドに強い影響を持ち続けている彼女の元で修行すれば、業界内でのどんな仕事も思いのまま。ところが、その“修行”とは、予想などはるかに超える世にも過酷でおそろしいものだった―。
主役は、世界の最新モードに身を包む美しく高飛車な悪魔、ミランダの理不尽な要求と不当な命令に翻弄され、プライベートを犠牲にしながらも賢明に仕事をこなす新米アシスタント、アンドレア。本作は、社会の荒波(ミランダのイジワル?)に四苦八苦しながらも、やがてしっかりと自分にとって大切なものを見出していく彼女の成長を綴った物語だ。
2003年4月に発売された小説「プラダを着た悪魔」(原題“The Devil Wears Prada”)。瞬く間に同世代の女性たちの間で評判を呼び、ニューヨーク・タイムズ誌のベストセラー・リストに6ヶ月間ランク・イン。世界でも27ヵ国語に翻訳され、何百万人もの女性たちの熱い支持を集めた。
『プラダを着た悪魔』
(早川書房/¥2,100/発売中)
この作品が多くのありがちな青春映画と大きく違っている点は、舞台となっているのが、多くの人が一度は覗いてみたいと憧れるファッション&出版業界であるところ。ひとりの女性の選択と自立を描いた作品としても、かなり興味深い映画なのだが、気になる“業界人”の日常を覗き見ることができるのも、本作の大きな魅力のひとつだ。
カリスマ編集長はどんな毎日を送っているのか。どんな人たちと付き合いがあるのか。エディターたちの仕事の内容は? 彼女たちの興味の対象は? ファッション・ウィークの過し方は?…などなど、素朴な疑問に答えてくれるエピソードも目白押し。その内容は「いくらなんでも大げさなのでは?」と思う反面、「でも、もしかしたら実話?」と思えるほど、あまりにリアルなものばかり。それもそのばず、この映画はとある問題小説を元にしているのだから。
とある問題小説とは、2003年の発売と同時に大ベストセラーとなった「プラダを着た悪魔」。著者が20代の新人女性作家だったことも話題となったが、より注目をされたのは彼女の経歴。実は作者のローレン・ワイズバーガーは、物語の主人公同様に、一流ファッション誌「ヴォーグ」の名物編集長アナ・ウィンターのアシスタント経験を持っていたからだ。小説の大ヒットに伴って、物語はもちろん、笑いと驚きを誘う奇想天外なエピソードの数々にも話題が集まり、ローレン自身の実体験が大いに反映されているとの憶測も飛び出した。(編集長のモデルが、アナ・ウィンターであることは否定されているが。)
確かに、アシスタントの名前は覚えず全員“エミリー”と呼んでしまう、アシスタントに自分の子供のために発売前の「ハリー・ポッター」最新作を入手しろと無理を言うなど、“悪魔”ミランダにまつわるエピソードは創作にしてはあまりに具体的。ここまで酷くは無いけれど似たような上司に心当たりがある人、アンディが受ける不当な扱いに自分の経験を重ねてしまう人が続出しているのも頷ける。さらに、等身大の主人公が持つフレッシュな魅力も手伝って、今も小説の人気は継続中。世界27カ国で同世代の女性たちから圧倒的な支持を受けているのだ。
そんな人気小説から生まれた映画『プラダを着た悪魔』。動くファッション誌と呼びたくなるゴーシャスでグラマスなヴィジュアル、爽やかな後味を残すドラマを見事に融合させたのは、数々のトレンドを生み出したメガ・ヒットTVシリーズ「セックス・アンド・ザ・シティ」も手がけたデヴィッド・フランケル監督。同番組の人気スタイリスト、パトリシア・フィールドも参加している。また、ファッション最前線が舞台となっているだけに、ヴァレンティノ・ガラヴァーニ、ジゼル・ブンチェン、ハイディ・クラム、ブリジット・ホールら多くの業界人もカメオ出演しているという豪華さ。目も心も満足させてくれる本作。まさにこの秋一番の話題作と呼ぶに相応しい仕上がりを見せている。