

中谷美紀

凛とした佇まい、にじみ出る艶っぽさ、そこはかとない知性──女優・中谷美紀から放たれる“美”の要素を数えたらきりがない。そんな多様な美をまとった彼女が新たに挑むのは、ドキッとさせられる大人のためのラブストーリー『スイートリトルライズ』。女優という仕事は物語(映画)を作ることであり「私の職業は“嘘”」だと言う彼女にとって、甘く小さな嘘をつく瑠璃子という主人公は一体どんな女性だったのか──。
―夫がいるのに別の男性に惹かれてしまう瑠璃子。彼女を演じるにあたって心がけたことはどんなことですか?
実は、瑠璃子というキャラクターに最初は共感できなかったんです。私自身、結婚の経験はないですから、夫がいながら他の人に心奪われていく気持ちが分からなくて。でも、人間なら結婚しているしていないにかかわらず、そういう気持ちが多少はあるのかも…そんなふうに想像しながら演じていました。正直、この瑠璃子という役は簡単ではなかった。演じていて心地よくもない(苦笑)。難産でしたね。
―その苦労の中から中谷さんが捉えた瑠璃子とはどんな女性ですか?
瑠璃子は日々の暮らしをとても大切にしている人です。朝起きて、窓を拭いて、時計のネジを巻いて、コーヒーを淹れる。しかもコーヒーフィルターではなくわざわざサイフォンを使って時間をかけて淹れるような人。とても秩序だっている女性ですよね。煩雑な事柄に忙殺されていると瑠璃子のような丁寧な暮らしはできないですから、ある意味彼女の暮らし方は素敵だと思いました。

瑠璃子の夫・聡を演じるのは『ハゲタカ』、『笑う警官』、『ゴールデンスランバー』など日本映画界の一翼を担う大森南朋。出演作が目白押しであることからも実力と人気のほどがうかがえる。また、彼の大人の男の色気に女性たちは魅了され続け、注目度は上がる一方だ。そして、社会派の作品が続き「そろそろしっとりとした恋愛ものをやりたい」と彼が変化を求めていた矢先に舞い降りたのが、この『スイートリトルライズ』だった。
―穏やかな妻・瑠璃子と積極的な後輩・しほ。どちらの女性がタイプですか?
中谷さん演じる瑠璃子と池脇さん演じるしほ。その2人の女性の間にいる心地はよかったです。現場でも瑠璃子としほ、どっちがタイプか? という話題はよく出ていましたけど、生意気承知で言うならば、瑠璃子としほの両方を持ち合わせている女性が理想。ただ、しほのような元気のある女性もいいけれど、僕自身は瑠璃子のようなちょっと面倒に思われがちな女性も嫌いじゃないかもしれないです(笑)。
大森南朋
―「人は守りたいものに嘘をつくの」という瑠璃子の言葉がとても印象的でした。大森さん自身は上手に嘘をつけるタイプですか?
自分では得意ぶっていても実際はバレているんじゃないかなと。最近ついた嘘ですか? かわいい嘘でいうと、マネージャーが僕に内緒でサプライズ誕生会を企画していて、僕はそれを知ってしまったけれど知らないフリをしている。かわいいもんです。でも、平気な顔をして嘘をつくのは女性の方なんじゃないかと。実際、完成した作品を観てびっくりしたシーンがあって。僕は中谷さんと(春夫役の)小林十市さんのシーンでは現場にいなかったので、映画を観て「(瑠璃子は)春夫とあんなに濃厚なキスシーンをしていたんだ!」と、イラッとしました(笑)。中谷さんも「(聡が)しほとあんなことしていたなんて!」と、言っていました。

聡が瑠璃子としほ、2人の女性の間で揺れ動くように、瑠璃子もまた聡と春夫の間で揺れ動くが、中谷さん自身が惹かれるのは「もっと男らしい人」だときっぱり。
―では、どんな男性がタイプですか?
自分を犠牲にしても責任を負うとか、人のために自分が悪者になれるとか、そういう男らしい人は素敵ですよね。女性は仕事をしていると精神的にタフになってしまうので、一緒にいるときにこちらがタフにならなくてもいい、タフな男性が好きです。
―ということは、自分の部屋にこもって鍵をかけてしまう聡の行為をどう感じているのでしょうか?
女性の観点からすると少し寂しい気もしますよね。でも、私自身演技に集中したいときは、大勢でいるよりも1人の時間を大切にするタイプ。そういう意味では聡の気持ちが分からなくもないんです。聡にはパーソナルスペースが必要だったのではないかなと思います。
―そのパーソナルスペースが強調されているからこそ、瑠璃子が聡の腕のなかに入るシーンがとても愛に満ちているように思えました。
たとえば、マッサージやエステは人の手が触れることでエネルギーが循環すると思うんです。でも、瑠璃子と聡の夫婦にはそのエネルギーの交感がなかった。だから、ほんのちょっとでも自分に触れてほしいという気持ちが彼女にはあったのかもしれないですね。
スイートリトルライズ