母と別れ、故郷から遠く離れて、真実の名前を隠して生きる新しい地――普遍的な“母と子の絆”が心揺さぶる一大叙事詩『約束の旅路』を大特集!

エチオピア系ユダヤ人 エチオピア系ユダヤ人とは、ユダヤ人の中で唯一の黒人であり、アフリカ大陸の黒人の中でも唯一のユダヤ人とされている。エチオピアでユダヤ教が広まった理由については諸説あり、定かではない。

彼らは、ソロモン王とシバの女王の子であり、ユダヤの血を受け継いだメネリク1世王子をアクスム王国(エチオピアの起源とされる国)へと連れ帰ったイスラエル12部族の代表の子孫とも考えられている。 また、モーセとともにエジプトを出たヘブライ人がエチオピアへ行き着いたとする説、イスラエルの部族のひとつダン族の子孫とする説もある。

では、起源が不明な彼らをなぜユダヤ人とするかといえば、それは独特の定義によるもの。ラデュ・ミヘイレアニュ監督の説明によるとこうだ。「ユダヤ民族は、人種としては定義されないし、また宗教としてのみ定義されるものでもない。ユダヤ民族は、ある伝統と、言語と歴史に対する独自の関係とを幾世紀にもわたって維持してきた人々の集団として定義される」

長年、イスラエルへの帰還を望んでいたエチオピア系ユダヤ人。エチオピアを襲った大飢饉をきっかけに、彼らをイスラエルへと戻すために、1984年11月から翌年1月にかけて行われた大規模な作戦が取られた。これがモーセ作戦だ。指揮したのはイスラエルと米国。
当時、移民を禁じていた政権の目を盗んで出国した人々は、スーダンの難民キャンプまで命の危険にさらされながらひたすら歩き、実際に4千人が到着前に襲撃、餓えや渇き、衰弱などで命を落としたという。キャンプでは移送のための飛行機が待機し、第1回の空輸で8千人が救出された。1991年に政権が交代すると、2回目の帰還作戦が実施される。これはソロモン作戦と呼ばれ、1万5千人がイスラエルへと移住した。

モーセ作戦

現在、イスラエルには9万人以上のエチオピア系移民が移り住み、コミュニティを形成。本作で主人公シュロモを演じた少年たちも、モーセ作戦、ソロモン作戦によってイスラエルに移住したエチオピア系ユダヤ人。成長したシュロモを演じたシラク・M・サバハは、俳優業の傍ら、I'IAEJ(イスラエル・エチオピア系ユダヤ人協会)のスポークスマンを務めている。

アフリカの難民事情 難民とは、「人種、宗教、国籍、政治的意見、または特定の社会集団に属するなどの理由で、自国にいると迫害を受けるか、あるいは迫害を受ける恐れがあるために他国に逃れた人々」とされている(「難民の地位に関する条約」より)。難民の救出に尽力している国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、世界全体のUNHCRの援助対象者は約1,920万人。そのうち、455万人がアフリカにいるという(2005年6月発表)。

その背景には、国の独立による宗主国との緊張、飢饉、繰り返されてきた内紛などが上げられる。 アルジェリアの独立戦争、エチオピア大飢饉、ルワンダの大虐殺、シエラレオネのクーデター、アンゴラ内戦など、不安定な状況が難民を大量に生み出してしまっている。
アフリカ難民の出身国上位は、スーダンを筆頭に、ブルンジ、コンゴ民主共和国、ソマリア、リベリア、エリトリア、ルワンダと続き、8番目がエチオピアとなっている(2005年1月 UNHCR発表)。

養子縁組について 映画の中にも登場する養子縁組。日本ではかつて、家長制度を存続させるため、子供のいない者、男児のいない家などが跡継ぎとして養子に迎えるケースは多くみられた。これは古代ローマ時代から見られるもので、大人側の都合によるものという性格が色濃い。

欧米では第一次世界大戦で孤児が増えてしまったことから、親のいない子供たち、恵まれない子供たちが経済的に余裕のある家庭に引き取られるケース、つまり子供のための養子縁組が増えるようになり、そのための法制度が導入された歴史がある。最近では、開発途上国の難民を、先進国の裕福な家庭が引き取ることも多い。また、社会的な成功者たちが養子縁組を行うケースも多く観られる。ウディ・アレン、アンジェリーナ・ジョリー、ニコール・キッドマンなど、俳優たちが貧しい国から複数の子供たちを引き取るというニュースも耳にするように。だが、国境を越えて子供を引き取る国際養子の場合には、人身売買を防ぐ意味でも、両国の法務局が全ての手続きについて責任を持つよう、ハーグ条約で定められている。

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作品情報『約束の旅路』
監督
ラデュ・ミヘイレアニュ
俳優
ヤエル・アベカシスロシュディ・ゼムシラク・M・サバハ

2007年3月10日より岩波ホールにて公開
2005,フランス,カフェグルーヴ、ムヴィオラ