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「セックスという言語で人間関係を語りたかった」ジョン・キャメロン・ミッチェル監督

『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』から5年、ジョン・キャメロン・ミッチェル監督の新作『ショートバス』は、自身のアイデンティティを模索しながら、人とのつながりを求めてさまよう男女7人の姿を見つめた珠玉のヒューマンドラマだ。カンヌをはじめ、世界各国の映画祭では、劇中に登場するリアルなセックス描写も話題に。ミッチェル監督は「いままで見たことがないような形でセックスを扱う映画を作りたかった」と語る。「この映画を通して語りたかったのは、“人間は果たして孤独でいられるのだろうか?”ということ。セックスという言語を通して、友人や家族といったさまざまな人間関係の問題に触れたかったんだ」。

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『ショートバス』のジョン・キャメロン・ミッチェル監督
『ショートバス』のジョン・キャメロン・ミッチェル監督
  • 『ショートバス』のジョン・キャメロン・ミッチェル監督
  • 『ショートバス』 -(C) 2006 Safeword Productions LLC
  • 『ショートバス』 -(C) 2006 Safeword Productions LLC
『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』から5年、ジョン・キャメロン・ミッチェル監督の新作『ショートバス』は、自身のアイデンティティを模索しながら、人とのつながりを求めてさまよう男女7人の姿を見つめた珠玉のヒューマンドラマだ。カンヌをはじめ、世界各国の映画祭では、劇中に登場するリアルなセックス描写も話題に。ミッチェル監督は「いままで見たことがないような形でセックスを扱う映画を作りたかった」と語る。「この映画を通して語りたかったのは、“人間は果たして孤独でいられるのだろうか?”ということ。セックスという言語を通して、友人や家族といったさまざまな人間関係の問題に触れたかったんだ」。

一見すると過激で大胆な作品に捉えられがちだが、実際にはハートウォーミングな語り口が心地よく、観終わった後は優しさに包まれたような気持ちにさえなる。それは、全編を通してミッチェル監督の温かい眼差しが感じられるからだ。
「結局、人間というものは孤独を貫くことなどできない。それは悲しすぎることだからね。僕自身、『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』を作っている間に多くの辛い出来事を経験した。恋人をドラッグの問題で亡くしたりね。『ショートバス』を作ったことはそんな自分自身の助けになったし、癒しのプロセスにもなった。それはキャストにも言えることで、彼らの多くは『ショートバス』に出演したことで自分が抱えていた問題を解決できたんじゃないかと思うよ」。

オーディションで選んだキャストたちとは2年間におよぶワークショップを開催。キャストとの対話の中で脚本を書き上げていくという異色のプロセスをとった。
「それぞれにとっての感情的なゴールを見つけ、正直になってもらう必要があったんだ。自分と役を関連づけ、どの方向に導いていくかを彼ら自身に探ってほしかった。例えば、(オーガズムを味わったことのないカップルカウンセラー、ソフィアを演じた)リー・スックインはアジア系の家庭に育ち、自己を抑圧しなくてはならないところがあった。だから、彼女は肉体と意識のバランスを上手に取ることを目標にした。また、(他人を拒絶するゲイのジェイムズを演じた)ポール・ドーソンにはゲイに嫌悪感を抱いている家族がいる。そのため、彼は自分が悪い人間だと見なされている気になり、愛を皮膚で感じることができない状態にあったんだよ」。

リー・スックインやポール・ドーソンら、完成した『ショートバス』に登場するキャストたちは“ゴール”にたどり着いたのだろうが、それが叶わなかった者たちもいるという。
「自分の体験や感情を役に吸収し、その上で自分と役を切り離せるかどうかが問題だったけれど、それが上手くできなくてナーバスになったり、僕たちのもとから去った役者もいる。それは監督としてとても悲しいことだったよ。去った役者たちの多くは若かった。だから、結果として『ショートバス』は大人の物語になったけれど、自分の変化を見つめる物語という点では結果的によかったのかもしれないね」。

最後に、“大胆”と言われがちな本作のセックス描写について語ってもらった。
「僕自身、実はセックスをオープンに考えるタイプの人間ではないんだ。できればプライベートな問題としてしまっておきたいし、劇中に登場するようなフリーセックスのパーティには興味がない。僕が描きたかったのは、“セックスに対する不安や恐怖がどうしてそんなに大きいのか?”ということ。戦争や暴力に対しての不安や恐怖を扱った映画は過去にも作られてきたよね? セックスは複雑なものなのに、往々にして単純に扱われる。オープンに描くことで、セックスに向けられる不安や恐怖を取り除きたかったんだ」。

《渡邉ひかる》

映画&海外ドラマライター 渡邉ひかる

ビデオ業界誌編集を経て、フリーランスの映画&海外ドラマライターに。映画誌、ファッション誌、テレビ誌などで執筆中。毎日が映画&海外ドラマ漬け。人見知りなのにインタビュー好き。

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