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アカデミー賞候補へ“勝手に授与”vol.2 『潜水服』がど根性で賞に決定!

今年のアカデミー賞で、監督賞、脚色賞、撮影賞、編集賞の候補になっている『潜水服は蝶の夢を見る』。今回は、この作品を取り上げたいと思います。

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『潜水服は蝶の夢を見る』 (C)- Pathe Renn Production-France 3
『潜水服は蝶の夢を見る』 (C)- Pathe Renn Production-France 3
  • 『潜水服は蝶の夢を見る』 (C)- Pathe Renn Production-France 3
  • 『潜水服は蝶の夢を見る』 -(C) Pathe Renn Production-France 3
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今年のアカデミー賞で、監督賞、脚色賞、撮影賞、編集賞の候補になっている『潜水服は蝶の夢を見る』。今回は、この作品を取り上げたいと思います。

主人公は実在した人物で、ジャン=ドミニク・ボビーというフランス版「ELLE」の元・編集長。華やかな世界で人生を楽しんでいたところ、突然、脳梗塞で倒れます。意識を取り戻したときは病室。頭はクリアに働いているのに、話せず、体も動かせない。いわば、言うことをきかない自分の体という牢獄に閉じ込められてしまうのです。

これまで、表現者として生きてきたジャン=ドミニクにとって、それはあまりにも残酷な現実。動かない体からほとばしる知性のやり場に困った彼は、絶望するのですが、その絶望は想像を絶するほど深い。なぜなら、いっそ死んでしまいたいと思っても、体が動かせない彼には自らの意思でそれをすることも叶わないのです。ところが、彼の目の前にひとすじの光が差し始めます。それは、一人の言語療法士によって教えられた、瞬きでコミュニケーションをとる方法。唯一彼に残された“左目の瞬き”によって、他人に意思を伝えるというのです。アルファベットを一文字、一文字伝えることを何度も何度も繰り返し、それを単語へ、単語を熟語へ、熟語を文章へ、文章を自伝へと膨らませていく。くじけそうになりながら。20万回の左目の瞬きによって。

こんなすさまじい実話、初めてです。このような現実を、心を動かすことなしに直視することなど到底出来ません。文字で表現することを仕事にしている者として、そして何より人間として、彼の表現者としての底知れぬ渇望、ど根性に心を激しく揺さぶられ、上映終了後もしばらく呆然として動けませんでした。

ここまで強烈なインパクトを持つ物語を、見事にフィルムに焼き付けたのは『夜になるまえに』『バスキア』のジュリアン・シュナーベル監督。これまでに、カンヌ国際映画祭の監督賞をはじめ、ゴールデン・グローブ賞の監督賞&外国語映画賞を受賞するなど、数々の映画賞を受賞している彼とこの作品。すさまじいまでの人間の力を伝えきった監督と作品自体も賞賛すべきなのですが、私が一番シビれたのは、ジャン=ドミニク・ボビーという恐るべき人物と、彼の自伝執筆を支えたアシスタント、クロードの存在。想像からは決して生まれない、ど根性を持った2人。私は彼らに敬意をこめて“ど根性で賞”を贈ります。



アカデミー賞カウントダウン特集
http://www.cinemacafe.net/fes/academy2008/
《牧口じゅん》

映画、だけではありません。 牧口じゅん

通信社勤務、映画祭事務局スタッフを経て、映画ライターに。映画専門サイト、女性誌男性誌などでコラムやインタビュー記事を執筆。旅、グルメなどカルチャー系取材多数。ドッグマッサージセラピストの資格を持ち、動物をこよなく愛する。趣味はクラシック音楽鑑賞。

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