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【MOVIEブログ】8日/ベルリン

8日、金曜日。朝のルーティンをこなして外に出ると、雪だ!やはり、こうじゃなくっちゃ。あまり積もらないような降り方だけど、すでに一面うっすらと雪景色。気分も上がる!

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8日、金曜日。朝のルーティンをこなして外に出ると、雪だ!やはり、こうじゃなくっちゃ。あまり積もらないような降り方だけど、すでに一面うっすらと雪景色。気分も上がる!

今日は9時からコンペ部門のプレス上映で(マスコミが優先で入場し、席があれば遅れてマーケットパス保有者も入れる)、『In the name of』というポーランド映画からスタート。ポーランド映画がベルリンのコンペに入るのは実に久しぶりだとポーランド人の知人が喜んで話していたので、楽しみにしていました。

ポーランドの田舎で、男色の欲望と葛藤する牧師の苦悩を描く物語。牧師が酒に逃げるばかりなのが僕には少し物足りなく、テーマそのものも目新しいとは思えなかったので、僕の評価はいまひとつ。重要なシーンで使用されるロックのセンスもイマイチ。丁寧には作られているだけに、残念。ただ、一緒に見た同僚は気に入っていたようなので、評価が分かれるところなのかな。

11時から、5件連続でミーティング。去年のお礼とか、今年もよろしくとか、夏以降の新作情報は?などなど。

14時を過ぎたので、同僚と、昨日に続き「ソーセージ&じゃがいも&酢キャベツ」でクイック昼食。またまた幸せ。

15時半から、またコンペ部門のプレス試写で『Paradise: Hope』。ロッテルダムのブログでも書いた、オーストリアのウルリッヒ・サイデル監督の「パラダイス3部作」の完結となる3作目。今年のベルリンで最も楽しみにしていた1本です。

もともとが1本の長編として企画されていたものが、三つの作品に分割して発表されたのがこの3部作。ひとつの家族の成員が体験する物語で、主婦がケニアにセックス・ツアーに出かける1作目(副題はLove)、その姉妹が度を越した信仰にのめり込む様を描く2作目(副題はFaith)、そして1作目の主婦の肥満気味の娘がダイエット・キャンプに参加するエピソードが今回の3作目(Hope)。

人間の行動に対するシニカルでペシミスティックな考察が、乾いたタッチとブラックなユーモアで展開し、人間存在の深淵を見つめていくのがサイデルの持ち味で、これは3作まとめてイッキ見したいところ。いや、相当に疲れると思うけれど、これは体験しておくべきでしょう。映画祭でこそまとめて紹介したいところだ!ただ、1作目で性器のあからさまな露出が非常に多く、日本で紹介するにはその対策を検討しなければいけない…。

続けて、17時半から、「フォーラム」部門のドイツ映画へ。ベルリンは「フォーラム」部門が一番面白いと僕は思っているのだけど、本作はまあ可もなく不可もなくの1本で、こういうことももちろんある。

19時半から、また「フォーラム」部門で『A Stranger』(写真)というクロアチアの作品。今晩は日本の映画関係の方から会食に誘われていたのだけれど、どうしてもこの作品が気になったので、上映を優先してしまったのでした。なので、収穫でないと困るところだったのだけれど、これが正解で発見だった!

いや、一般劇場公開はとても望めないような、いわゆる「映画祭映画」。でも、この個性は全くもって捨てがたい。冒頭から物語は分かりにくくて、どうやら亡くなった友人の葬式に行く車を確保するために、老夫婦が議論している。その夫が本編の主人公で、彼の行動を追うことが一応作品の軸にはなっていく。

が、本作の主役はそのスタイル。手持ちで手振れの接写キャメラ、というとまたかと思うのだけれど、本作ではその手法が成功していて、ここぞという時に用いられる長廻しが異様(というか異質)な緊張感を醸しだしていく。そして、とてもしつこく、ほとんどうるさいほどの会話の応酬。何度も何度もひとつの話題に食い下がる人たち。さらに、粒子の粗い、ざらざらとした暗めの画面。一体なんなのだ、これは?

ああ、まだ見たばかりで上手く説明できないな。

主人公の中年男性の心理ドラマであることは確かなのだけれど、彼が劇中に何度も死ぬ。でもその直後に何事もなかったかのように男性は登場して物語は続き、この人を食った展開に唖然としつつも、パラノイア的な現実世界の混沌に観客は引きずりこまれる。背景には、クロアチアにおけるイスラム文化とキリスト教文化の併存が生む難しさがあることが伺えつつ、映画はさらに、より深く、人間の闇に迫っていく…。そして、ああ、あのラストときたら!

んー、もう一度見たい。というか、もう一度見ないと書けないな。恥をしのび、上記記述はこのままにしておくことにしよう。

わけのわからない収穫を得たわけのわからない興奮に包まれて、もう今日はいいかなと思ったのだけど、やはりもったいないので、21時15分からまた「フォーラム」部門のアメリカ映画へ。南部を舞台にした、陰鬱なスリラー。

23時半過ぎに宿に戻り、『Paradise: Hope』の変態世界(サイデルの「変態性」については上記で書かなかったけれど、またの機会に)と、クロアチアの『A Stranger』の異様で形容しがたい迫力が頭にこびりつき、妙に目が冴えてしまう。

ビールを飲んで頭を冷やしながらこれを書き(失礼)、でも考えがまとまらないので、心地よい満足感に浸りながら、1時半にダウン(予定)。
《text:Yoshihiko Yatabe》

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