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宮崎あおい×忽那汐里インタビュー リアルな会話で紡ぐ、等身大の“大人の友情”

友だちを思い出す映画、友だちに会いたくなる映画──『tokyo.sora』『好きだ、』に続く石川寛監督の7年ぶりの新作『ペタル ダンス』は、自分にとっての大切な友だちの今を考えたくなる。

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『ペタル ダンス』宮崎あおい、忽那汐里 / photo:Toru Hiraiwa
『ペタル ダンス』宮崎あおい、忽那汐里 / photo:Toru Hiraiwa
  • 『ペタル ダンス』宮崎あおい、忽那汐里 / photo:Toru Hiraiwa
  • 『ペタル ダンス』宮崎あおい / photo:Toru Hiraiwa
  • 『ペタル ダンス』忽那汐里 / photo:Toru Hiraiwa
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  • 『ペタル ダンス』忽那汐里 / photo:Toru Hiraiwa
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友だちを思い出す映画、友だちに会いたくなる映画──『tokyo.sora』、『好きだ、』に続く石川寛監督の7年ぶりの新作『ペタル ダンス』は、自分にとっての大切な友だちの今を考えたくなる。そして、自分と友達がこれから生きていくほんの少し先の未来を見つめたくなる映画だ。石川監督が作り上げるなんとも温かで心に染みる世界感がたまらなく「好き」だと言う、宮崎あおいと忽那汐里がその世界感を言葉にする。

「久しぶりに石川監督の世界にどっぷりと浸かることができて、そして完成した作品を観て、とても満足しました」と、愛しい眼差しを向ける宮崎さん。石川監督作品は『好きだ、』に続いて2度目となるが、「どんなに小さな役でもいいので、監督の撮る作品に参加したいと思っていた」と超大級のラブコール。
「あのような映画を撮れる方ってほかにいないと思うんです。『好きだ、』に出させてもらったとき、お芝居を通して、好きな男の子に対してのフワフワした感じとかドキドキ感とか、そういう感情を感じさせてもらったことはとても貴重な経験でした。なので、今回のお話をもらったとき、とにかく嬉しかったんです」。

忽那さんは、何年か前に『好きだ、』をDVDで鑑賞していたそうで、「なぜかすごく気になる作品だったんです」と、やはり石川監督の作り出す世界感に引き寄せられていた。“気になる”作品の監督の新作に出演すること、その作品の中に存在していた宮崎さんとの共演は「すごく嬉しかった」と、ほほ笑む。
「宮崎さんと最初にお会いしたのは、図書館のシーン。とても目が印象的な方だなって。直進的で澄んでいて奥の深い目という印象があります。今日もこうして会うとつい宮崎さんの目に、目がいっちゃうんですよね」。忽那さんのストレートな告白に、「照れますね(笑)」と、宮崎さんもほほ笑む。

彼女たちが『ペタル ダンス』で演じるのは、ごく普通の等身大の女性。大学時代の友人のミキ(吹石一恵)が自ら海に飛び込んだという話を聞いたジンコ(宮崎さん)は、ふとした偶然で知り合った原木(忽那さん)と、もうひとりの同級生・素子(安藤サクラ)と共に、ミキに会いに行くことにする。6年間会っていなかった友人に会いに北の町を目指す──たったそれだけのロードムービーだけれど、静かに、深く胸に刺さってくる友情、“大人の友情”が描かれていると宮崎さんは語る。
「ベタベタした友情というよりも、あっさりさっぱりしているというか…。若い頃は、みんな一緒、みんな同じだと安心するけれど、この映画に登場する友情はそういうのがなくなってからの友情の形のような気がしました。それぞれの個性を認め合いながら一緒に過ごす時間を共有しているというか、大人の友情ですね」。

そんな大人の友情を描いていく中で中心となるのは、会話と佇まい。シンプルなストーリーの中で自然な会話を繰り広げることは、とても難しいはず。しかも「アドリブと言えば、全部アドリブです」と、石川監督ならではの演出を宮崎さんが説明する。
「監督からそれぞれキーワードを渡されるんです。私の演じたジンコの場合、たとえば冒頭の会話の中に“はしょらないで”というセリフがあるんですけど、監督から『このシーンでは“はしょらないで”という言葉を使ってください』と言われていたので、その言葉を使って会話をしていました。こういう気持ちでここにいてくださいと、監督が求めている想いだけを受け取ることもあります。ニュアンスだったり言葉だったりいろいろですが、だいたいアドリブですね(笑)」。

もちろん、アドリブとは言っても石川監督の思い描いているところに近づくことができなければOKはでない。どうやったらそこに辿りつけるのか、そうやって辿り着いたときに監督が見せてくれる嬉しそうな表情に「何か満たされるんですよね」と、宮崎さん。その隣で「そうそう」と無言でうなずく忽那さんの表情からも、女優としてやり甲斐のある役、やり甲斐のある作品だったことが覗える。そして、「そう言えば、いま思い出したんですけど…」と、撮影前の事前リハーサルのときにアドリブの種が撒かれていたと思い返す宮崎さん。

「事前にリハーサルみたいなものをしているんです。私は、サクラちゃんと吹石さんと3人で、学生の頃にこういうことがあったんじゃないか…というのを話していて、監督はそこで3人に過去の経験を積ませるんですね。そうやって撮影前に学生時代の話しをすることによって、(リハーサルのときに)こんなこと言っていたよねと、撮影のときにすごくリアルな会話が生まれるんです」。宮崎さんだけでなく、忽那さんもほかのキャストもその方法で役を作ってをしたのだそう。

実際に経験を積ませる、順撮りで撮影をする。丁寧な演出と撮影によって石川監督作品のあの独特の雰囲気が生まれ、その丁寧さがスクリーンを通じて観客の心に響いてくる。そして心に残る。記憶に刻まれる風景や言葉は一人一人異なるだろうけれど、それを生み出した宮崎さんも忽那さんの心にも、もちろん刻まれた。

宮崎さんが大好きなシーンの一つとして選んだのは、忽那さんの演じる原木に向けたセリフ。「“同じ場所にいるよ”と言う言葉があるんですけど、私はあの言葉を原木さんに対してすごく言いたかったんですよね。自分も同じ場所にいるし、一人じゃないってことを伝えたくてあの言葉を選んだ。あのシーンが大好きなんです」。一方、忽那さんは、ミキに会いに行く途中で、3人が宿泊する宿でのワンシーンを挙げる。「3人とも全然セリフがなくて、お茶入れようか…ぐらいの会話しかない、ほとんどセリフのないシーンなんですけど、すごく好きなんです。ちょうど夕陽が落ちて、部屋も薄暗くなっていって、旅の後半で少しだけ疲れも出ていていて、でもあの沈黙がいい。ただ黙ってそこにいたいという3人の共通した気持ちが心地よかったんですよね」。

そして、宮崎さんが伝えたかった言葉や、忽那さんが感じた心地よさと一緒に思い出されるのは、自分自身の友だちのこと。「なんでミキに会いに行くの?」、「会いにくくない? 6年も会ってなかったんだから」とたずねる素子に、「知りたいと思ったからかな。ミキがどうしてそういう思いになったのか」、「ミキは変わんないよ」と答えるジンコ。そのセリフからも分かるように、たとえ何年も会っていなくても気持ちは繋がっている。繋がっているから会いに行きたくなる、友情について考えたくなる映画でもある。

宮崎さん自身も、映画と似た経験をつい最近したばかりだった。
「私も、ずっと連絡をとっていない友だちがいたんです。頭のどこかで連絡しなくちゃ…と思いながらも、ずっと変わらない“何か”がある人だから大丈夫だろうって、タイミングは自然と来るんじゃないかって思っていて。で、たまたまばったり会うことがあったんです。そのとき、言葉はいらなかったんですよね。会った瞬間に相手をぎゅうっと抱きしめて、ひとこと『ごめんね…』って言ったら、『いいよ、謝らないで』って。その瞬間、昔に戻ることができたんです」。

忽那さんも続ける。
「友だちを作れないのか作らないのか、私、本当に友だちは少ないんです。生まれ育った国(オーストラリア)にも友だちはいるけれど、連絡という連絡をとっていないくて…。でも、この前ものすごく久しぶりに帰ったら、連絡を取っていなくても、会わない期間を感じなかった。会話をしなくてもいい空気のような存在というか。そういう友だちがどこかにいてくれるというだけで、それだけで支えになっていると思うんですよね」。

離れていても、確かに気持ちは繋がっている──。深々とした余韻に浸り、ふと連絡をしてみたくなる、会いに行きたくなる、「大好きだよ」と伝えたくなる。『ペタル ダンス』は、そんなふうに友だちを思い出す、とてもすてきな映画だ。


[宮崎あおい]
シャツ、パンツ(NOZOMI ISHIGURO tambourine/WALL)
ブーツ(Rocco P./H.P.FRANCE exclusive)
ブローチ(MARIANNE BATLLE/goldie H.P.FRANCE[本社])
《photo:Toru Hiraiwa / text:Rie Shintani》

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