石川寛監督、『ペタル ダンス』を撮り終え友人に20年ぶりに連絡とったと明かす
映画『ペタル ダンス』の公開を控え、4月14日（日）、東京・下北沢の旅をテーマにしたカフェ「cafe Stay Happy」にて本作の撮影監督を務めた写真家の長野陽一と文筆家の甲斐みのりによるトークショーが…
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大学時代の友人が海へと飛び込んだとのうわさを聞いて、遠路はるばる車で彼女に会いに行く女性たちの旅路を静かに描き出す本作。長野さんと甲斐さんのトークはまず旅をテーマに展開する。
日本全国の島々を巡り、その地で出会った人々や風景を切り取った写真で知られる長野さんは当然、仕事で旅をすることも多いが、若い頃から海外も含め、あちこちを旅していたという。「なぜ旅をするのか？」――甲斐さんのそんな問いに対し、「時間があるから。目的があるわけではなく、知らないものを見てみたいし、その地に行ってみたいという衝動がある。僕が若い頃、バックパックを担いでの貧乏な旅行が流行ったことがあったけど、お金は使えないけどそこにいるというだけで楽しかった」と語る。旅に関する著作を数多くしたためている甲斐さんは、国内を中心に回ることが多いそうだが「つまらない街ってないんですよね」と長野さんの言葉に頷いていた。
旅雑誌などに文章を書く際に「写真に助けられることが多い」と語る甲斐さんだが、長野さんは「僕ら（カメラマン）はみなさんが見たいものを代わりに見ているだけ。（書き手が）なぜそこに行きたいのか？ が大事であって、その人が何を見ているのかを捉えないといけない。目線をなんとなく探りながらそれを見つけるのが仕事」と語る。
こうしたスタンスは本作の撮影でも同様だったよう。「でも、監督が何を考えているのかを直接聞くのは野暮。それを探り、悟っていき、その蓄積が形になるのが理想。今回も現場で、まさにその場に即しつつ、些細な一つ一つのことを見逃さないように撮りましたね」とふり返った。
甲斐さんは2回、本作を鑑賞したそうだが「感情移入する女性が変わっていく。場面ごとに『この人が自分のよう』と思えてきて愛おしく切なくなった。4人の女性を描いてはいるけど、実はこの4人とも女性らしくないところが多い。（“女性の旅映画”とカテゴライズされやすいが、）あまり男女は関係ないのかなと感じます」と語ると、長野さんもこれに同意。「僕自身、女性誌での仕事が多くて女の子の気持ちが分かると思われているところがあるけど、そんなこと全然なくて、下世話なおじさんです（笑）。簡単にカテゴライズできそうで、型にハマらないものって多い。この映画も一見、そう見えるけど、物語の本質はそこにないと思います」と語った。
トークの途中には石川監督も姿を見せ、2人に促されて壇上へ。タイトルにある“ペタル”は花びらを意味するが「一回、散った花びらが風によってもう一回舞う。一度は自分が汚れたような気持ちになりつつも、風に心が揺れる。そういう人の話にしたかった」と説明する。甲斐さんの「旅というのは自分から行動を起こすことができる。日常の中でも全ての人にドラマはあるけど、その中でも旅は自分から行動し、ドラマチックなことを起こすことができる」という指摘に、監督も「そう、それが大事！」と我が意を得たりと頷く。
監督自身、この映画を作ったことで、映画の主人公たちと同じように疎遠になっていた大学時代の友人に卒業以来、約20年ぶりに連絡を取ったそう。まさにこのトークの前日に思い立って電話を手にしたそうで「最初はためらったけど、このタイミングでないと…と思った。『来週、3本目の映画が公開になるんだ』と言ったら、『映画撮ってたのか？』とビックリしてたけど、声も話し方も全然、変わってなくて嬉しかった」と笑みを浮かべていた。
『ペタル ダンス』は4月20日（土）より公開。
