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【インタビュー】三浦春馬 かけがえのない時間がもたらした成長と未来へのまなざし

「仕事について考える時間が確実に深く長くなってますね」。

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三浦春馬『永遠の0(ゼロ)』/PHOTO:Naoki Kurozu
三浦春馬『永遠の0(ゼロ)』/PHOTO:Naoki Kurozu
  • 三浦春馬『永遠の0(ゼロ)』/PHOTO:Naoki Kurozu
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  • 『永遠の0(ゼロ)』 -(C)2013「永遠の0」製作委員会
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  • 『永遠の0(ゼロ)』 -(C)2013「永遠の0」製作委員会
  • 三浦春馬『永遠の0(ゼロ)』/PHOTO:Naoki Kurozu
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「仕事について考える時間が確実に深く長くなってますね」。

三浦春馬は自らの身に起きた変化を敏感に感じ取っている。この映画が、そうしたここ最近の変化の大きな要因の一つになったことは言うまでもない。

『永遠の0(ゼロ)』で、彼の演技や存在がフォーカスされることはほとんどないかもしれない。岡田准一を始め、戦争中のパートで零戦の搭乗員を演じた面々、現代のパートで老境を迎え、過去をふり返るかつての軍人を演じた橋爪功や田中泯らと比べると彼が演じた、祖父の人生を追いかけるいまどきの青年・健太郎の存在のインパクトは決して大きくはない。

それでも彼は、現代を生きる人々――映画を観る観客と同じ目線の高さでしっかりと存在し続け、そして、おそらくこの作品を通じて共演陣の誰よりも多くのものを手に入れた。

「戦争を描いてはいるけど、これは決して戦争映画ではないということを大切にしていきたい」――。本作に臨む上で三浦さんを含むキャスト陣が製作陣から掛けられた言葉であり、何より、撮影を終えて三浦さん自身がその思いを強くしている。

原作は「海賊とよばれた男」の本屋大賞受賞が話題となっている百田尚樹のデビュー小説。特攻隊員として戦死した祖父・宮部久蔵の軌跡を追うことになった健太郎とその姉。かつての祖父の戦友を訪ね歩く中で、宮部は天才的な操縦技術を持ちつつも生還することに何より執着した男だったことが分かる。だがそんな彼がなぜ大戦末期、自ら特攻隊に志願したのか? その裏にある深く壮大な愛が描き出される。

三浦さんは「これまで仕事として戦争を扱った作品に触れる機会はなかったので、この作品を通じて自分が何を感じ、どんな演技ができるのか? 純粋に挑戦したいと思った。司法試験に落ち続けている健太郎が、自分のルーツとも言える祖父の人生を探っていく中でどんな変化を遂げ、成長していくのかに興味を抱いた」とふり返る。

健太郎は戦友会の名簿などを頼りに姉と共にかつての宮部を知る元軍人の元に足を運び、祖父について知っていることを尋ねていく。

「クランクインの前に、まさに本作と同じように、戦死した自分の肉親についてかつての知り合いに尋ねて回る人々を追いかけたドキュメンタリーをいくつか見たんです。彼らがどんな口調で自分の祖父について尋ねるのか? そのときどんな思いで、どんな表情をしているのか? 台本に書かれた健太郎のセリフやト書き以上に、実際の彼らの姿を参考にした部分が大きかったですね」。

三浦さん曰く、これらのシーンのこうした工夫だけが「撮影を通じて唯一、山崎(貴)監督が僕を褒めてくれたところ」だった。「監督の頭の中には自分のビジョン――どういう映像で、どんな心情を強く見せたいのが常に明確にあった」と三浦さん。映画を観ると零戦の美しいまでの飛行シーンや激しく凄惨な戦闘シーンなど、緻密な映像が強いインパクトを残すが、この迫真の映像に見合った“感情”が俳優陣には常に要求された。それは現代パートの三浦さんも同じ。

「幾度となく『もっと気持ちを高めてくれ!』という指示が飛んできましたね。クランクインして初日が、田中泯さんが演じる元零戦パイロットの景浦の家を訪ねるシーンだったんです。1度目は追い返され、その後もう一度、健太郎は一人で彼の元に足を運んで『祖父の本当の過去を教えてください』と言うんですが、この芝居に関して、監督からはかなり厳しく『全然、表情が足りない』とダメ出しされました」。

補足すると、物語の中では健太郎の1回目の訪問と2回目の訪問の間にはしばらくの時間がある。その間、ほかの元軍人の元を訪れ、話を聞くことで、彼の中で確実に祖父や自身の人生に対する考え方には変化が芽生えていく。それを踏まえた上で2つのシーンを同じ日、しかもクランクイン初日に撮影しているのだ。

「そこは役者からしたら、『よくあること』でしかないです。それでもこの映画に関しては、その健太郎の変化というのが非常に大きな意味を持っているので、大変ではありましたね」。

田中泯に橋爪功、平幹二朗、山本學…健太郎が訪ね歩く、かつての祖父を知る男たちを演じた面々である。これだけ豪華なベテラン名優陣と一つの作品でひざを突き合わせて芝居をする機会などなかなかない。撮影当時22歳の三浦さんにとっては、かけがえのない経験となった。

「役柄上、僕が聞き手となってみなさんが話されるという芝居が大半なのですが、あれだけの実力を持った俳優さんが、それぞれに培われてきた演技の形というのを目の前で余すところなく見せてくださる。おひとりずつ芝居は異なるんですが、みなさんが長い時間をかけて熟成させてきたもの――その時間が見えてくる気がして、それは本当にカッコよく、そして貴重で楽しい時間でした」。

もう一つ、三浦さんにとって忘れられない、そして二度とない経験となったのが、今年5月に亡くなった夏八木勲との共演である。夏八木さんは、健太郎の血の繋がらない祖父であり、彼に宮部について調べることを勧める賢一郎を演じている。撮影当時、夏八木さんの体は既に病に蝕まれていたと思われるが、三浦さんは「すごくパワフルな方という印象でした」と共演をふり返る。

「正直、病を抱えてらっしゃるなんて全く思わなかったですね。いつも奥さまが現場に付き添っていらして、昼食や夜食に奥さまが持ってきた野菜に味噌をつけて食べて『これはウサギ飯だよ(笑)。酵素が摂れるんだ』って仰ってました。

いま思うとですが、少しでも長く自分の一番良い状態で演技を残そうとした気持ちの表れだったのかもしれません。奥様に対しても本当に優しくて、愛情深いんですよ。夏八木さんがご自身の病状について、どんな風に感じていらっしゃったのか分かりませんが、どれほどの熱意を持って撮影に臨み、情熱を持たせ続けていたのかというのは、いまになって僕にも少しですが分かる気がします」。

三浦さん自身、10代の頃はベテランの俳優と共演する機会があっても、自分から積極的に話しかけることがなかなかできなかったというが、ここ数年「演技のことだけでなく、みなさんがどんなことに熱を注いできたのか? ということにすごく興味を持つようになり、自分から声を掛けさせていただくことが増えた」という。本作はまさに、身近に居ながらも知らなかった家族の物語であり、自分のルーツや家族について知りたいと思わせる。

「そう感じていただければ何より嬉しいです、普通に暮らしていると遠ざかってしまう肉親に興味を持つというのが伝えたいことなので。この映画の物語は決して他人事ではないし、自分の生い立ちや自分を産んでくれた人を知るということは、これからの自分の生き方にも繋がることだと思います」。

昨年末から今年初頭にかけて、「劇団☆新感線」の舞台でミュージカルに挑戦し、ドラマ「ラストシンデレラ」では“年下の男の子”を好演。さらに『キャプテンハーロック』では声優にも挑戦し、ヴェネチア国際映画祭のカーペットを踏んだ。来春放送開始の連続ドラマ「僕のいた時間」では難病に侵された主人公を演じるなど、常に異なるステージ、役柄への挑戦が続く。

「これからの役者としての方向性、どういう立ち位置でどんな演技ができるのか? やっていきたいのか? それぞれの作品の中で自分の役をどのようなイメージで見る人に受け取って欲しいのか? そういうものが見えてくるようになったのかなと思います。これまで全く考えてなかったわけじゃないけど、いろんな作品をやらせていただく中でより意識が高まってきているなと」。

具体的な“未来”のイメージについては「全部は言えない、恥ずかしいですから(笑)」と濁しつつ、「映画、ドラマ、ミュージカルにストレートプレイ、枠にとらわれずに何でもやっていきたい」と言葉に力を込める。そしてもう一つ、「いつまでも人の心に残るものを見せたい」とも。

「『自分が』という意味ではなく、作品として長く残るもの――その中で生きることができたら、ということを思うようになりました。映画というのはまさにそういう存在ですよね。いまの若い恋人たちに何十年か後、彼らがおじいちゃん、おばあちゃんになってから『また観よう』と言ってもらえるというのは素晴らしいことだと思う。最近になってようやく、そういうところに価値を見い出せるようになったと思います。だからこそ、そういう作品と出合えるように意識も技術も高めていきたいと思うんです」。
《photo / text:Naoki Kurozu》

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