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【MOVIEブログ】2014カンヌ映画祭 Day11&12

24日、土曜日。今朝も素晴らしい青空で、カンヌ終盤の天気はまたもや抜群で、嬉しい。今朝はもう8時半のコンペの上映は無いので、久しぶりに6時間寝ることが出来て、気分はスッキリ。

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24日、土曜日。今朝も素晴らしい青空で、カンヌ終盤の天気はまたもや抜群で、嬉しい。今朝はもう8時半のコンペの上映は無いので、久しぶりに6時間寝ることが出来て、気分はスッキリ。

見逃した作品をフォローするべく再上映のスケジュールを確認し、まずは10時の上映からスタート。「監督週間」部門に出品されたブルーノ・デュモン監督の『P’tit Quinquin 』という作品。これはもともとテレビ用のドラマを映画向けに再編集したもの(たぶん)。ブルーノ・デュモンがテレビ?というのも驚きだけれど、中身がコメディーというのもさらに驚き。

もっとも、コメディーとはいっても相当ブラックで、フランスの田舎町で起こる猟奇的な連続殺人事件を巡る物語。明るい光線の中の寂莫とした田舎の風景や、風雪が顔に刻まれたような住民たちの姿は、普段のデュモンの映画そのものなのだけれど、差別ネタすれすれのギャグが多く、大爆笑したり戸惑ったりで、見応え十分。上映時間はテレビの4話分の3時間20分で、確かに長いのだけど退屈はまったくしない。しかし、どう考えても話が終わっていない。続きのエピソードがテレビではあるはず?

アサイヤスの『カルロス』や、ジェーン・カンピオンの『Top of the Lake』(13年のTVドラマ)や、ショーン・ダーキン(『マーサ、あるいはマーシー・メイ』の監督)の『Southcliffe』など、最近有名監督がテレビ用に作ったドラマをまとめて映画祭で上映する企画が流行っている。トーキョーでもやってみたい…。

続けて、同じく「監督週間」で『Whiplash』(写真)というアメリカ映画。この作品は今年のサンダンス映画祭で受賞している作品で、かなり良いと評判になっているのだけど、なるほどさすがに面白い。

音楽学校でジャズドラムを学ぶ青年と、超サディスティックなカリスマ鬼教員が対決する物語。鬼教員が、本当に下衆な鬼なのか、それとも熱心が度を過ぎた善人なのか、分からないところがミソ。青年は両手を血だらけにしながら、地獄のレッスンに挑むが…。

鬼教員の鬼っぷりと、演奏場面のカタルシスが見どころ。これは、日本公開は間違いないでしょう。

そういえば、今年もカンヌ話題作は順調に日本公開が決まっているようで、僕が数日前に騒いだ『The Tribe』も日本の配給が決定したし、ハンガリーの驚きの『White God』も期待できそう。ドランは既に決まっているし、3時間超えのジェイランですら決まりそうとの噂がある(ただし未確認)。楽しみに待ちましょう。

続けて17時から、これまた「監督週間」の『Love at First Fight』(原題:『Les Combattants』)というフランス映画で、同部門で複数賞を受賞した作品の再上映へ。軍に入ってサバイブする技術を取得しようとする風変りな女性と、彼女に惚れて一緒に陸軍の体験キャンプに参加する青年とのラブ・ストーリー。主演のアデル・エネル嬢が強気で愛想の無い女性を演じて、とても魅力的。

上映終わり、19時からの授賞式を見に、毎年そこで中継を見るのを恒例にしている会場に行くと、遅れて着いたからなのか、もう入れないとのこと。残念。しょうがないので、会場内のモニタースクリーンで受賞式の模様を見ることにする。

結果は、もう報道されている通りで、最高賞のパルム・ドールに、トルコのジェイランによる『Winter Sleep』。僕は、本音ではジェイランがパルムで、グザヴィエ・ドランはグランプリと思っていたのだけど、カンヌ若返りの期待も込めて前回のブログではドランをパルムに予想してみた…。が、やはりジェイランがパルム。これはこれで文句なし。

ただ、ドランの『Mommy』が三等賞に相当する審査員賞というのは、少し意外だった…。ドランは、発表の瞬間はニコリともせず、無念の表情。壇上ではきちんと(そして感動的な)スピーチをしたけれど、やはり相当悔しかったはず。まだ25歳、先があるさと言いたいところだけど、『Mommy』を上回る作品がこれから作れるのかどうか、こればかりは分からない。だからこそ、今回あげたかったのだけれど…。

そして、ダルデンヌ兄弟『Two Days, One Night』が無冠だったのも残念、というか不可解。ダルデンヌにはパルム・ドール以外はあげてもしょうがない、という判断が働いたのかも。主演のマリオン・コティヤールにしても、既にアカデミー賞女優であるわけだし、今さらカンヌの女優賞でもないだろうという判断が働いたとしても理解は出来なくはないのだけど、それにしても今年のコンペで最も優れた作品のひとつであったのは疑いないわけで、んー、映画祭の賞というのはかくも難しい!

という話をエンドレスで同僚とするべく、久しぶりにレストランに入り、まともな夕食を食べ、軽い打ち上げをしつつ、夜は更けて。

明けて25日、日曜日。ついに今年のカンヌも最終日!授賞式が昨日行われたけれども、上映は今日まであるのだ。かなり緩くなってしまった気分を引き締めつつ、今日もいそいそと上映へ。

9時から「ある視点」部門の中国映画と、11時から同部門のインド映画。それぞれ平板な調子で僕には全く響かず、退屈してしまう。

次の上映まで間が空いたので、ホテルに戻って少しだけパッキングをして、再び会場に行き、16時から「ある視点」部門でオーストラリアの『Charlie’s Country』という作品へ。白人文化を押し付けられることに抵抗するアボリジニの老人の物語。告発的なリアリズムではなく、厳しい内容ながら全体のトーンが暖かい上に、主演のアボリジニの俳優さんが絶妙に上手くて、これはなかなかよい作品。

続けて、東京国際映画祭にアジア地域の情報収集を担当してくれている外国スタッフと合流し、今後の動き方に関するミーティング。

そして、いよいよ今年のカンヌで見る最後の作品は、20時から「特別上映」に出品されていたアンドレ・テシネ監督の新作『In the name of my daughter(仏題はL’ homme qu’on aimait trop)』。主演にカトリーヌ・ドヌーヴ、ギヨーム・カネ、そしてアデル・エネル。30年前に実際に起きた、南仏のカジノ経営者の娘が失踪した事件を映画化したもの、とのこと。

偶然だけど、カンヌの最後をフランス映画で締めるというのもなかなか悪くないですね。舞台も南仏だし、今年の(僕の)最後の飾るにふさわしい作品でありました。

ということで、今年も終了!体調も万全なまま、全日程をクリアすることが出来ました。良い作品にも多く出会えたし、ミーティングも多くこなせて、何よりも天気もとても良く、上々のカンヌだったのではないかな。

これを書いているのは日曜深夜0時過ぎ。明朝(月曜朝)の便で帰国します。ニース空港がストライキとの噂も入ってきているのだけど、大丈夫だろうか…。ともかく、家に帰るまでが遠足、気を付けて帰ります。

今年も長くダラダラしたブログに付き合って下さったみなさま、本当にありがとうございます!お疲れ様でした!
《矢田部吉彦》

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