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【MOVIEブログ】フランス映画祭2014 個人的おすすめ

毎年恒例のフランス映画祭が、6月27日(金)から始まります。僕も少し司会などのお手伝いをする予定です。ということで、今年のラインアップの個人的なおすすめなど!

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2つの秋、3つの冬
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毎年恒例のフランス映画祭が、6月27日(金)から始まります。僕も少し司会などのお手伝いをする予定です。ということで、今年のラインアップの個人的なおすすめなど!

今年のフランス映画祭への取り組み方は、ズバリ「俳優を楽しむ!」であると言ってしまいましょう。フランス映画ならではの作家性というくくりももちろん出来るのだけれど、今年のラインアップを見渡すと、むしろ俳優の存在感が際立っている作品がとても多い気がします。俳優中心で見るのは映画の愉しみ方の基本でもあるわけで、その意味ではとても映画らしい映画が揃ったのが今年のフランス映画祭であると言っていいのではないかな。

僕のイチオシは『2つの秋、3つの冬』(写真)で、なんといっても現在のフランス映画界で引っ張りダコのヴァンサン・マケーニュが主演。まったくもって冴えない風貌がたまらなく魅力的なのだから、役者という存在も奥が深いですね。文科系アラサー(死語か?)世代の不安と現実を瑞々しく描いて、センス抜群。ポエティックな描写も交え、ユーモアも程よく、とにかく役者が素晴らしい。これは必見でお願いします。

ジャリス・レスペール監督版『イヴ・サンローラン』は、奇をてらわない正攻法の安定した出来栄えで、サンローランの半生が垣間見えてとても面白い。ちなみに、今年はサンローランの映画が競作されていることが話題で、この『イヴ・サンローラン』を入門編として楽しんだ後に、より作家性の強いベルトラン・ボネロ版『Saint Laurent』(日本公開は決定しているけれど、時期はもう少し先になりそう)に臨むと、映画体験が深いものになっていくはず。

『イヴ・サンローラン』は、サンローランに扮するピエール・ニネがとてもいいけれど、サンローランのパートナーであったピエール・ベルジェに扮するギヨーム・ガリエンヌがとにかく素晴らしい。もともと演劇出身のガリエンヌは、昨年『Les garcons et Guillaume, a table!』(左記の原題は一部アクセント記号が非表示ですが、『不機嫌なママにメルシィ!』という邦題で今年の9月に日本公開決定!)という作品で映画界でも特大ブレイクを果たし、フランスのセザール賞も受賞して、猛烈に勢いに乗っている俳優です。サンローランの芸術から受ける刺激と、ガリエンヌの演技を見ている快感とが、今作の魅力でしょう。

『スザンヌ』のサラ・フォレスティエは、次々とオファーされる破天荒な役柄を期待以上のパフォーマンスと存在感でこなしていく個性派女優で、これまた現在最も出演作をチェックしたくなる存在です。昨年の東京国際映画祭で上映した『ラブ・イズ・パーフェクト・クライム』の奔放な女子大生役も印象的だけど、なんといっても2010年の『Le nom des gens』という作品のインパクトが強烈。彼女は、地下鉄構内を全裸で歩いていることを注意され、「あれっ、服着るの忘れてた!」と自分で驚く、サザエさんも驚愕する役柄だった!

サラ・フォレスティエはこのあたりからブレイクして、今回上映される『スザンヌ』に繋がるわけだけれど、最低のダメ人間を演じて抜群の冴えを見せる。こういう役は、もう彼女の独壇場。そして、彼女の妹役がアデル・エネル嬢で、アデル嬢(『アデル、ブルーは熱い色』のアデル・エグザルコプロス嬢と混同注意!)も、現在のフランス映画で大活躍している魅力的な若手なので、このふたりの女優競演はまさに必見であると断言しましょう。

『スザンヌ』は、なかなかしんどい物語ながら、楽観にも悲観にも揺れすぎない描写の「程よさ」がとても良く、センスが抜群。ラストシーンの素晴らしさはこの映画祭屈指。これは決して逃してはいけない1本ですね。

さて、僕がもっとも愛するフランスの俳優は、何を隠そうヴァンサン・ランドン。近年彼の出ている作品に失望したことが無い。なので、今回の『友よ、さらばと言おう』もとても楽しみにしていたのだけれど、やはりいいです。世界で最も唇の薄い俳優、と僕は名付けているのだけど(下らないですね)、クレール・ドゥニ監督作品や最近の『母の身終い』などのシリアスな心理ドラマと、犯罪アクションとの双方で見事な存在感を発揮するヴァンサン・ランドンの魅力が、本作でもいかんなく発揮されていてたまらないです。

『友よ、さらばと言おう』は見事な銃撃シーンの連続で、複数パターンが登場する密室アクションの工夫も素晴らしい。フランス的ノワールもの、そしてクライムアクションが好きな人は必ず満足するはず!

そして、意外な(といったら失礼だ!)大穴で面白かったのが『俳優探偵ジャン』。売れない俳優が、殺人事件の現場検証の死体役の仕事を得たことをきっかけに、自ら事件に巻き込まれていくコメディ。ラブコメ風味も楽しく、気持ちよく笑えて、いやいや満足度高いです。そして、ここでも主役のフランソワ・ダミアンがとてもいい。とぼけていて、ダメダメで、でもおかしくて、説得力がある。『スザンヌ』の父親役ではシリアスな役柄で主演しているので、この映画祭で彼にハマる人も多いのではないかな。とにかく、本作も見て損なし!

こうやって書いていると、本当に今年は俳優豊作のラインアップですね。上記の他にも、『素顔のルル』のカリン・ヴィアールや、『間奏曲はパリで』のイザベル・ユペールなど、お馴染みの面々も充実しているし、フランスの超ヒットメーカーである『Fly Me to the Moon(英題)』のダニー・ブーン(来日する!)も注目でしょう。

ということで、今年もフランス映画祭でお会いしましょう!
《矢田部吉彦》

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