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【インタビュー】俳優・役所広司の声の仕事 “カタチ”をとらない導き手

深く、太く、そしてどこか優しい――役所広司の声は、そんなすべてを包んでしまうような響きで出来ている。

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役所広司(声のナビゲーター担当)/紀行ドキュメンタリー「地球イチバン」(NHK総合テレビ)
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深く、太く、そしてどこか優しい――役所広司の声は、そんなすべてを包んでしまうような響きで出来ている。

俳優の道を歩むこと実に30年以上。『Shall we ダンス?』『ドッペルゲンガー』『THE 有頂天ホテル』『わが母の記』、そして“今年最大の問題作”と言われた『渇き。』…と、その活躍を挙げていけばキリがない。スクリーンに彼の姿が映るたび、その独特の存在感に目を釘付けにされた人も多いはずだ。そんな彼の魅力はもちろん声にも宿っている、たとえ姿は見えずとも。

役所さんが今回、10月でシーズン4を迎える紀行ドキュメンタリー「地球イチバン」(NHK総合テレビ/毎週木曜22時放送)で、視聴者を見たこともない世界へと導く、声のナビゲーターを務めることとなり、収録真っ只中の彼に取材を敢行した。

この番組は、世界各地のさまざまな“イチバン”の地を訪ね、日本とはかけ離れた圧倒的な風景と究極の非日常を、リビングに居ながら味わえるというもの。アリッサ・ウーテン、川原亜矢子、渡辺大、高橋光臣らが“旅人”となり、世界一の星空や絶海の孤島、果ては究極のパワースポットなど驚きの暮らしや人生哲学と出会いながら、明日を生きるヒントを探っていく。

役所さん自身、これまでに様々な声の仕事をこなしてきているが、収録前にどんな準備をするのか聞いてみると、「前準備は、本編の映像を見させていただいて、あとは台本を間違えないように読む練習をする(笑)」。それだけと語るが、それ故に「難しいですねぇ」とも。

ナレーションや語りといった仕事は、何かキャラクターや役が与えられているわけではなく、あくまでも“ナビゲーター(導き手)”としての立ち位置でしかない。豪快に笑ったり、声を殺して泣くこともない。心を出し過ぎず、それでも感情は香る程度に漂わせる。そのサジ加減は恐らく、相当に難しいはずだ。

「あまりナレーションは前に出ない方がいいかな、と思うんです。なんとか“カタチ”にならないように、ならないようにっていう仕事なんです」。

そうはいえど、下条アトム然り、熊倉一雄然り、滝口順平然り、個性派な声の仕事人というのは存在する。役所さんならではの語り口というのは、何かあるのだろうか?

「(そういうのは)全然意識してないんです。たぶん、ああいうものって、下條さんにしろ、熊倉さんにしろ、やってるうちに出来上がってくるものだと思うんです。恐らくですけど、最初からそういう風には読んでないかもしれない。最初からそこを狙っているわけではなくて、やっていくうちに、そっちの方が映像や番組の雰囲気に上手く合ってくるものとして、そういう形が出来てくるんじゃないかと思います。

ただ僕も今回、『地球イチバン』をやらせてもらって、語り口が定着していくかもしれませんね。独自というか…僕の癖も出てくるでしょうし。それが良い雰囲気になればいいですけど。できるだけ同じ形じゃなくて、毎回毎回違う雰囲気になればいいなって。(その旅に寄り添うような?)そうですね。旅人と現地の人たちが、浮き立つようにできればいいなって思います」。

この取材を行ったときは、収録の真っ最中。「朝から収録で、この後も実はあるんです(笑)」と明かしてくれた。そんな役所さんに「地球イチバン」の見どころを聞いてみると、こんな答えが返ってきた。

「やっぱり…僕たちとは“違う距離感”って部分でしょうか。例えば、160kmという距離。僕らの感覚だと、160kmなんて車でひと走りできちゃう、大した距離じゃない。けど、ある地域ではその160kmという距離は、命を懸けなきゃいけない程の遠さなんです。それだけ離れてると、それはもう親には会えないかもしれない、という距離なんです。そういうところからすでに感性が違っているような気がしますよね。どっちが良いのかは分からないですが、すぐ行って会える方がいいのか、160km離れた遥か遠くの人のことを思う気持ちがもっと大きくなってる人たちの方が豊かなのか――そういうところが『地球イチバン』の面白さだと思います。

羅針盤も何にもなくて方角を決める動物的な勘なんて、もう僕たちはきっと退化してるだろうし。ちょっと前までは方角も分かったのに、ナビができてからもう本当に考えなくなってきた。そういうところでね、もっと人間って能力があるのに、便利な方に進むと、人間自体はどんどん退化していくような気がしました」。

人間が進化を続ける上で、文明の利器による本能の退化――「地球イチバン」で感じた世界を通して、そんな部分にまで目を向ける役所さん。なんとステキな話をしてくれることか! そんなこと思いながら、最後に役所さん自身の旅(冒険)について聞いてみると、まさかの答えが返ってきた…。

「どこでも僕にとっては、冒険なんです。自転車でどこか都内を走っていると、もうすぐに“冒険”になるんですよ…方向音痴なので(苦笑)。『オレの家はどっちなんだ!』『オレが向かってるのはどっちなんだ!』っていうふうに、路地なんかを走ってると分からなくなっちゃうんですよ、自転車だとナビも付いてないですから。そういうときに自分の知ってる道にポっと出たりすると、『あっ! ここだ! ここからなら帰れる!』っていう。それもひとつの旅であり、冒険のような気がします(笑)」。

身近な場所でもスペクタクル。そんな話を聞くと、ついつい“旅人”としての登場も期待してしまう。

■「地球イチバン」
2014年10月9日(木)スタート/毎週木曜22時~NHK総合テレビにて放送。

公式サイト:http://www.nhk.or.jp/ichiban/
《シネマカフェ編集部》

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