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【インタビュー】矢田部吉彦が語る、ショートフィルムの“熱気とその先”

――いま、ショートフィルムが面白い。

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矢田部吉彦(「東京国際映画祭」プログラミング・ディレクター)が感じた、“ショートフィルムの明日”とは?
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――いま、ショートフィルムが面白い。

かつては実験的な作品や長編へのステップアップのための低予算作品が多かったが、様々な技術の革新と共に、ショートフィルムの世界にも大きな変革が押し寄せている。同時に、企業の取り組みも大きく変わってきた。CMではなく、より長い映像――すなわちショートフィルムでブランドの理念やコンセプトを伝えようとする試みも急増している。

「LEXUS(レクサス)」はその先駆けとして、2013年より「Lexus Short Films」を開始。「LEXUS」が掲げる「Life is Amazing」をテーマにしたショートフィルムの製作を通じ、若手クリエイターの才能を支援している。今年も、米独立系スタジオ大手「ワインスタイン・カンパニー」との協同によるジョン・ゴールドマン監督の『MARKET HOURS』、大川五月(監督)&落合賢(脚本)という日本人コンビによる『OPERATION BARN OWL』が発表された。

「いまがショートフィルムの歴史上、最も盛り上がっている時代と言えるでしょうね」。

今年で27回目を迎えた「東京国際映画祭」でコンペティション部門の作品選定を務める矢田部吉彦(プログラミング・ディレクター)もショートフィルムの“熱気”の高まりを実感しているひとりだ。同映画祭に出品される作品は基本的に長編映画のみだが「短編映画を出品することはできないのか?」という問い合わせが事務局にひっきりなしに来るという。

ショートフィルムを取り巻く何が変化し、今後どこへ向かうのか? 矢田部さんに話を伺った。

矢田部さんはまず「IT革命が決定的に短編映画の存在を変えた」と語る。身近な現象として、スマートフォンや携帯用タブレットを使い、電車の中やカフェなどで海外ドラマを見たり、YouTubeにアクセスする光景はごく当たり前になった。

「僕自身、数年前までパソコンで映画を観るということに抵抗がありましたが、さすがにいまでは慣れてしまいましたね。僕が慣れるくらいなので、若い人にとってはとっくに…いや、“慣れる”以前に、彼らにとっては最初から当たり前の存在なんですね(笑)。その意味で、観る側にとって映像により気軽にアクセスできる時代になったというのは大きな変化だと思います」。

いまや、パソコンからではなくスマホやタブレットでインターネットにアクセスする人々が多数派になったとも言われる。その際、文章であれ映像であれ、長く膨大なものではなく、より短く見やすいものが好まれる。短編映画というフォーマットがこうした傾向にフィットしていることは確かだ。

「東京国際映画祭の企画で“学生応援団”によるネット上の番組の収録があったんですが、その時、YouTubeの方も『連続して見てもらえるのは長くて3分』ということを仰ってました。短い時間でフックのある展開を見せて、いかに視聴者の興味を掴むか? いかに簡潔にまとめるか? それはまさしく短編映画を作る上でのポイントでもある。そこは時代と短編映画の特性がマッチした良い面と言えるでしょうね」。

一方で懸念もある。人々がスマホの小さな画面で映像を見ることに慣れてしまうことは、劇場公開の長編映画を含めた映画界全体にとってプラスと言えるのか?

「そこは非常に難しいところですね。いまなお短編映画は過渡期にあり、激動の中にあると思うんです。短編映画の盛り上がりが、最終的に長編映画を(劇場に)近づけてくれるのか? それとも人々を劇場から遠ざけてしまうのか? 期待と不安の中で揺れているというのが正直な思いです」。

ただ、ビジネスの側面から見ると「Lexus Short Films」然り、企業がショートフィルム製作に前向きになることで、新たな映画ビジネスの流れが生まれたと言える。作り手は企業のバックアップを得て作品を作る場を与えられ、企業は従来のTVや新聞ではなく、ショートフィルムで自社ブランドのコンセプトを拡散することができ、視聴者は人気俳優が出演する質の高いショートフィルムをネット上で無料で見ることが出来る。

「15秒、30秒といった短いCMと長編映画の中間に位置する、5分、10分の短編を作る環境が出来たというのは作り手にとって非常に大きいですね。ワインスタインのような大きなスタジオが関わり、予算と時間を掛けて作品を作り、多くの人に観てもらうことができる。これまでもミュージックビデオから長編にステップアップする監督はいましたが、より映画的な要素、物語性の強いショートフィルムからどんどん新たな才能が育ってくることが期待できます。今後、若い人ばかりでなく中堅、ベテラン監督も短編映画に参戦するような状況になれば面白いですね」。

見る側だけでなく、映画を作る側のデバイスも大きな技術革新を遂げたことで、スマホひとつで誰もが映画を作れる時代になった。実際、ネット上には、手の込んだ短編映画から偶然の瞬間を捉えたペットの動画まで映像があふれかえっている。

「ものすごい量の中から、いかに面白い作品に出会うか? 見る側にとっては逆に難しい時代と言えるかもしれません。そこでやはり、キュレーター的な存在が非常に大切になってくるのではないかと思います。日本には幸い『Short Shorts Film Festival & Asia』というショートフィルムを扱う素晴らしい映画祭があります。既にそうした企画は一部で始まっていますが、映画祭との連携の中で、人々の口コミをうまく活用して、良い作品と出会える場を整えていくことが大切だと思います。ひとりひとりの観客が出来ることとしては、まずは『面白い!』と思える作品に出会ったら、とにかく一人でも多くの人に勧めてほしいですね」。
《シネマカフェ編集部》

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