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【インタビュー】エディ・レッドメインが明かす、"リリー"になるまでのアプローチ

『レ・ミゼラブル』で革命に身を投じる良家の子息・マリウス役を演じ、世界的ブレイクを果たした英国の実力派エディ・レッドメイン。理論物理学者のスティーヴン・ホーキングを演じた『博士と彼女のセオリー』…

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『リリーのすべて』エディ・レッドメイン/photo:Nahoko Suzuki
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  • 『リリーのすべて』 (C)2015 Universal Studios. All Rights Reserved.
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  • エディ・レッドメイン&アリシア・ヴィキャンデル/『リリーのすべて』 (C)2015 Universal Studios. All Rights Reserved.
  • 『リリーのすべて』エディ・レッドメイン/photo:Nahoko Suzuki
『レ・ミゼラブル』で革命に身を投じる良家の子息・マリウス役を演じ、世界的ブレイクを果たした英国の実力派エディ・レッドメイン。理論物理学者のスティーヴン・ホーキングを演じた『博士と彼女のセオリー』では、アカデミー賞主演男優賞を受賞し、名実ともにトップスターの仲間入りを果たした。メジャー街道をひた走る彼が新作『リリーのすべて』で挑戦したのは、世界初の性別適合手術を受けた実在のトランスジェンダーの女性、リリー。男性として生まれ育ちながらも、結婚後、自らの内にある女性性に目覚め、とまどいながらも自分らしく生きる道を選んだ女性という難役を演じた彼の役者魂に迫るべく、映画公開を控え来日したエディに話を聞いた。

「こんにちは、エディです」。柔らかい声と、優しい笑顔で登場したエディ。知的で物静か、繊細な雰囲気は、これまで演じてきた好青年たちとどこか重なる。だが、今回演じたのは、自らの奥深くに眠っていた女性性を花開かせていく人物という、今までにない役どころ。内面のデリケートな変化を表現するに当たり、どうアプローチしたのだろう。「今回はリリーがどんな女性であるかというところから、アプローチをしていったんだ。それが見えてきたところで、彼女が男性として生きていたとき、どんな人物だったのか遡って考えてみたんだ」。

リリーがどんな人物であるかを知るために、大きかったのがトランスジェンダーの女性たちとの対話だったという。「彼女たちが自分の経験を快く打ち明けてくれたことに感謝している。LAで会ったカップルは、ひとりが男性として生まれ性別移行した女性で、パートナーの女性はそのまま寄り添い続けていた。トランスジェンダーの女性は、人生のすべてをかけてでも、真の自分として生きたいと話してくれた。ただ、性別移行するというのは本物の自分を少しずつ明かしていくことになるから、あくまでも個の体験。でも、カップルとして生きていくからには、相手の女性の思いやりの深さはどのぐらいなのだろうと考えずにはいられなかったというんだ。その話がとても印象的だったから、台本の最初のページにこのふたつの想いを書き留めて撮影に臨んだんだ」。

さらに、パートナーのゲルダが描いたリリーの肖像画、そしてリリーが書いた日記がもとになっている回顧録“Man into Woman”も参考にしたという。「リリーがどんな人物だったのか感覚的につかめた後で、男性としてどう生きてきたのかを知るようにしたんだ。アイナー・ヴェイナーという男性として生きていた時の写真も残っているけど、高い襟のシャツ、きつめのジャケットを着ている。それを見たとき、外骨格“エクススケルトン”のような印象、あるいは改装中の建物を覆う足場のような印象を受けた。リリーがいて、そのまわりに何か別のものを作って、アイナーとして生きてきたと感じたんだ。その一方で、眠っているときなど無意識下では、とても柔らかいしぐさをして、秘めたる女性性が表出していたのではないかという点を意識して演じたんだ」。

リリーが生きた1920年代にも、トランスジェンダーの人々はいたはず。それでも、性別移行をせず、生まれたままの性で生きた人がほとんどだ。「リリーの何がほかの人との違いを生んだのかと何度も考えたんだ。元来あった資質なのかもしれないし、愛でサポートしてくれたゲルダという強い女性が側にいたからかもしれない。二人がアーティストだったからかもしれないしね。アーティストというのは、先進的な思考を持っているものだから。それに1920年代は、ジェンダーの概念が流動的になってきた時代。ファッションをみても女性が男性のスーツを身につけはじめた時代でもある。第一次大戦後、ジェンダーに対する考え方に変化があったのではないかな。戦争中は、男性の仕事を女性が担い始めたから、時代性もあったかもしれないな」。

アイナーの中で目を覚まし始めたリリー、移行期のリリー、完全に女性になったリリー。それぞれの演じ分けはどう気をつけたのだろう。「どの段階においても大事だったのは、映画の最後に真のリリーがどんな姿をしているかだったんだ。そこから遡って、どの段階ではどんな風に生きているかを考えた。トランスジェンダーの方々に話を伺うと、ある女性は、トランジションした当時はメイクも濃く、洋服もかなり女性らしいものを着ていて、まるで思春期の少女たちが自分らしさを見つけるのに試行錯誤しているのに似ていると言っていた。過剰な女性らしさを試してみたんだってね。そんな意見を参考に、メイクアップアーティストや衣装デザイナー、ムーヴメント・ディレクターとともに、女性らしさを作っていった。初めて舞踏会に行くシーンでは、リリーが初めて女性として周囲に見られるエピソードが描かれているけれど、メイクも彼女自身も、行動も、他の女性を観察し真似して、様式化された女性らしさを表現している。話が進むにつれて、徐々に自分の中の女性らしさを見つけていくから、ウィッグではなく自分の髪になり、メイクも薄くなる。女性らしさを出そうとしているのではなく、リリーらしさが自然に出ているだけという状態になるようにしたんだ」。

そして、リリーと、彼女をサポートし続けたゲルダとの関係については、こんな風にも。「二人の強さに感銘を受けた。リリーが自分らしくあるために支えたゲルダの圧倒的な愛は素晴らしいと思うしね。愛というのは肉体も、セクシャリティもジェンダーも関係ない。彼らの関係は、まさに二つの魂の出会いだったのだと思う」。

2014年に、最愛の女性と結婚したばかりのエディ。素晴らしいパートナーと支え合い共に生きる喜びが、本作にもきっと存分に反映されているに違いない。「リリーとゲルダの物語というのは、本当に偉大だ。だから、解釈も多岐にわたるだろうし、いろいろな形で綴られ続ければいいなと思う。今回の映画は、彼らの物語をフィクション化したものを映画化している。焦点を当てたのは、二人のラブストーリー、親密な人間関係なんだ。トランスジェンダーのコミュニティの中には、暴力や差別は当然あるわけで、そういったものはリリーも経験しているはず。でも、二人の愛にフォーカスしたことで、とても優しく、悲劇ではなく自分を見つける喜びに満ちた作品になったんだと思うよ」。
《text:June Makiguchi/photo:Nahoko Suzuki》

映画、だけではありません。 牧口じゅん

通信社勤務、映画祭事務局スタッフを経て、映画ライターに。映画専門サイト、女性誌男性誌などでコラムやインタビュー記事を執筆。旅、グルメなどカルチャー系取材多数。ドッグマッサージセラピストの資格を持ち、動物をこよなく愛する。趣味はクラシック音楽鑑賞。

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