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【インタビュー】アカデミー賞授賞式ボイコット、その真意を『セールスマン』主演女優が語る

第89回アカデミー賞外国語映画賞に輝いた『セールスマン』に主演するイラン人女優のタラネ・アリドゥスティが初来日し、取材に応じた。トランプ政権によるビザ発給制限に抗議するため、オスカー授賞式への出席をボイコットした真意とは?

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女優のタラネ・アリドゥスティ/『セールスマン』インタビュー
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  • 『セールスマン』 (C)MEMENTOFILMS PRODUCTION-ASGHAR FARHADI PRODUCTION-ARTE FRANCE CINEMA 2016
  • アスガー・ファルハディ監督&タラネ・アリドゥスティ/『セールスマン』 (C)MEMENTOFILMS PRODUCTION-ASGHAR FARHADI PRODUCTION-ARTE FRANCE CINEMA 2016
第89回アカデミー賞外国語映画賞に輝いた『セールスマン』に主演するイラン人女優のタラネ・アリドゥスティが初来日し、取材に応じた。トランプ政権によるビザ発給制限に抗議するため、オスカー授賞式への出席をボイコットした真意とは?

本作が外国語映画賞にノミネートされた2日後の1月26日(現地時間)、タラネはトランプ政権がイランを含む特定7カ国へのビザ発給制限、入国の一時禁止を検討しているとの報道を受けて、自身のツイッターで授賞式をボイコットすると表明。メガホンをとったイラン映画界の巨匠、アスガー・ファルハディ監督も「もし私の渡航が例外とされても到底許せない」と声明を発表し、同じく授賞式を辞退した。そんな渦中にあって、本作は見事、オスカーを獲得。ファルハディ監督は『別離』(2011)に続き、2度目の外国語映画賞受賞という快挙を達成した。

「出演作がアカデミー賞を受賞するなんて、これほど光栄なことはない。ですから、本当は授賞式に参加したかったという気持ちもありますね。ただ、今回の一件で、世界中の映画人が(トランプ政権への)抗議の声をあげてくださったおかげで、特定の国に対する不公平な状況に、国際的な注目が集まったことは喜ばしいことだと思っています。そう考えると、やはり授賞式をボイコットしたことに意義があったと確信しています」

女優のタラネ・アリドゥスティ/『セールスマン』インタビュー
「私自身は授賞式当日、イランで出演中の連続ドラマの撮影を行っていました。非常にデリケートで難しいシーンだったので、演技に集中していて、受賞の行方を気にする余裕はなくて…。無事に撮影を終えると、現場の皆さんが『おめでとう、受賞したわよ』と教えてくれたんですが、その瞬間は『あっ、そうなの』という感じで(笑)。もちろん、少しずつ実感が湧いて、本当にうれしい気持ちでいっぱいになりました」

急激な開発が進められるテヘランに暮らす国語教師のエマッドと、タラネ演じる妻・ラナは、予期せぬ理由で転居を強いられ、アマチュア劇団の仲間に紹介された新居に引っ越した。だが、そのわずか数日後、夫の留守中に、ラナは何者かに暴行されてしまう。現場に残された犯人の遺留品を手掛かりに、犯人探しに奔走する夫。一方、ラナは事件が表ざたになることを拒み、夫婦の溝は深まっていく…。

『セールスマン』 (C)MEMENTOFILMS PRODUCTION-ASGHAR FARHADI PRODUCTION-ARTE FRANCE CINEMA 2016
「ラナが沈黙を守りたい理由の1つには、やはり『女性側にも非があったのでは』と思われてしまう恐怖があるから。身に起こった衝撃を受け止めることができず、実際にどんな被害を受けたのか、さらに自分自身の感情さえもうまく言葉で説明できない状況なんです。役柄の内面を見つめて、演じるという意味では、いつも通りの“女優業”でしたが、確かに演じながら、胸が締め付けられ、心が苦しくなる瞬間があったのも事実です」

予想だにしない展開が待ち受けるサスペンスとしての見応えに加えて、人間の奥底に眠る“復讐心”の恐ろしさをあぶり出す重厚なヒューマンドラマの側面もある本作。決して「一件落着」とは言い難い余韻とともに、夫婦の未来を暗示するラストシーンは、見る者によって意見や解釈が大きく違ってくるはずだ。

「確かにモヤモヤした気持ちが残るかもしれないですね。ただ、その分、見終わった後にさまざまな意見が交わされることが重要ですし、それを可能にするのが映画の力だと信じています。イランで女優をしている私が、こうして初めて日本の地を踏み、映画についてお話したり、ファンの皆さんと対面できる。そんな国境を超えた文化的交流が、政治の力によって、妨害されることは絶対にあってはいけないのです」

女優のタラネ・アリドゥスティ/『セールスマン』インタビュー
『セールスマン』はBunkamura ル・シネマほか全国にて順次公開。
《photo / text:Ryo Uchida》

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