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【インタビュー】根性だけでやってきた――長澤まさみの挑戦し続ける女優人生

「この間『キャバレー』をやったときに、松尾(スズキ)さんに『まさみちゃんは負けず嫌いだよね~、すごいよね~!』と言われて(笑)…

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長澤まさみ『散歩する侵略者』/photo:You Ishii
長澤まさみ『散歩する侵略者』/photo:You Ishii
  • 長澤まさみ『散歩する侵略者』/photo:You Ishii
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  • 『散歩する侵略者』(C)2017『散歩する侵略者』製作委員会
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  • 『散歩する侵略者』(C)2017『散歩する侵略者』製作委員会
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「この間『キャバレー』をやったときに、松尾(スズキ)さんに『まさみちゃんは負けず嫌いだよね~、すごいよね~!』と言われて(笑)、『自分って負けず嫌いなんだ…』って初めて気づきました」と屈託のない笑顔で語るのは、長澤まさみ。いま、オファーが絶えない女優のひとりだ。彼女は自分のキャリアについて、「(演技は)絶対褒めるよりもダメな割合のほうが多い。根性だけでやってこられたのかな、と思うんです」と分析する。熱心に語る顔つきは、人気女優のそれというよりも、駆け出しの若手俳優が見せるような貪欲ささえたたえており、決して平たんな道のりであったはずがなく、実力でキャリアを積んできたことを伺わせてくれた。

デビューは、数多くのスターを輩出した「東宝シンデレラ」オーディション、第5回のグランプリ。あどけなさと透明感が印象的な少女は、芸能界という荒波にもまれながら、みるみる美しく磨かれ、大人の女性へと変貌を果たしていった。長澤さんは、当時をこうふり返る。「大きい会社に入ったら安定しているというか、ひがまれるというか、ある意味すごくバカにされていると感じていたんです。自分が『ただ得をしている人間だ』と甘んじていたら、負けだと思っていました」。

『散歩する侵略者』(C)2017『散歩する侵略者』製作委員会
反骨精神がなせる業か、元々の才能は、じき開花した。社会現象となった行定勲監督の映画『世界の中心で、愛をさけぶ』への出演では日本アカデミー賞助演女優賞を受賞し、ドラマに出れば軒並み高視聴率を更新するという、絶対的な主演女優へと進化していったのだ。「青春作品といえば、長澤まさみ」という時代を経て、20代中盤からは『モテキ』、『WOOD JOB!~神去なあなあ日常~』、『海街diary』、『銀魂』とジャンルも役柄もバラバラな作品で、生き生きとした姿を見せた。「監督に求められるとうれしいんです」と長澤さんが話す通り、フィルモグラフィーの幅の広さを見れば、女優としていかに充実し、挑戦を恐れていないかがよくわかる。

「女優の仕事は、よくも悪くも自分と向き合うことなんです。昔は、自分に足りないものがわかっていても、受け入れたくても、見栄やプライドがあったからできなかった様に感じます。けれど、年齢を少しずつ重ねて大人になると、ダメなところや不得意な部分と向き合えるようになったと思います。向き合うことで、お芝居の成長があると気づいたんです。求められる人になれるかどうかは自分の頑張り次第だし、この世界はすごくはっきりしているじゃないですか? 面白くなければ使われない。だから、努力し続けなければいけない。甘い世界ではないと思います。自分に高を括って待つ人間になっていたら、見えるものはないので」。

長澤まさみ『散歩する侵略者』/photo:You Ishii
与えられていた仕事のみを、甘んじて受け入れてきたわけではない。だからこそ、長澤さんの新作情報が解禁になれば、「今度はどんな表情が見られるのだろう? どんな役をやってくれるのだろう?」と、観客も自然と彼女のペースに乗せられてくる。

そんな長澤さんが主演を務める最新作こそが、『散歩する侵略者』である。監督は“キヨシスト”と呼ばれる世界中に熱烈なファンを持つ黒沢清。最強の初タッグだ。脚本を読んで、出演を熱望したという長澤さんは、「黒沢監督の作品なんて…出演したい俳優は山ほどいると思います。私はもともと現実味のあるフィクションが好きなので、『散歩する侵略者』は、すごく好きなタイプの作風でした。人間の概念を奪って、知恵をつけて、侵略者が成長していく過程がすごく斬新で、のめり込んで台本を読みました」と、魅せられていた。

『散歩する侵略者』(C)2017『散歩する侵略者』製作委員会
『散歩する侵略者』は、人間を乗っ取った侵略者たちが、家族・仕事・所有・自分などの大切な概念を奪い、徐々に地球を侵略していくという物語。長澤さん演じる加瀬鳴海は、侵略者に乗っ取られた夫・真治(松田龍平)の異変に戸惑いながらも、イラつき、冷たく当たる。なぜなら、真治は鳴海に浮気の疑いをかけられて夫婦仲は最悪だったからだ。いきなり穏やかになった真治に最初は疑心を抱いていた鳴海だったが、接するうちに、優しさに心をときほぐされていき、また夫婦として歩み出そうと決意する。

「台本をもらったときに、松田さんがやると聞いて、『ぴったりだなあ』と思っていました。松田さんって、何を考えているか、わからない雰囲気を持っていますよね。お芝居以上のものを持っている人じゃないと、深みが出せないと思うんです。それに、真治って、ドンくさくてかわいいんですよ(笑)。それがコメディっぽくて笑えるから、これまでの黒沢作品のイメージにないものになっています。不思議な作品ですよね」。確かに、黒沢作品特有のダークなルックが根底にありながらも、クスリと笑ってしまうようなコメディシーン、侵略者の概念にまつわるSF調の場面、激しいアクションと、およそ観たことのない世界観が広がる。

『散歩する侵略者』(C)2017『散歩する侵略者』製作委員会
さらに加えて、本作でのもうひとつの大きなテーマは「愛」だ。物語の終盤、鳴海と真治がホテルのベッドに横たわり、しっとりと言葉を交わすシーンがある。作品の肝とも言える大事な場面は、長澤さんが台本を読んだときから「すごく楽しみでした」としていた心に残るシーンだ。「この作品は大きな愛がメッセージだと思っています。台本を読んでいても涙が止まらなかった。グッとくるところだったし、皆がそのシーンをすごく大切にしていました」。

劇中では、登場人物たちが侵略者たちに様々な概念を奪われていく。鑑賞していると、やはり我々も普段から概念に縛られているのだろうか…という気持ちに捉われてもくる。長澤さんは、言う。「私、サービス精神だけは旺盛なんです。『面白い』と思ってもらえるものを作る立場にいたいし、人を楽しませる時間を作りたい。いい意味で、女優は形を変えられる武器があるので、イメージなんて関係ないわけじゃないですか。それこそ『概念』なだけだと思うんです。ルールが多い世の中は生きづらいかもしれないけれど、忠実になる必要もないのかな? 周りを変えようというより、自分が変わる考えのほうが楽しいって思うんですよね」。

『散歩する侵略者』(C)2017『散歩する侵略者』製作委員会
《text:Kyoko Akayama/photo:You Ishii》

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