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【第91回アカデミー賞】『ROMA/ローマ』旋風、Netflixがオスカー受賞にこだわる理由は?

第91回アカデミー賞授賞式が2月25日(日本時間)、米ロサンゼルスで開催され、『グリーンブック』が作品賞をはじめ、3部門を受賞。Netflixが配信する『ROMA/ローマ』は作品賞こそ逃したものの、監督賞、外国語映画賞、撮影賞の3冠に輝いた。

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Netflixオリジナル映画『ROMA/ローマ』 (C) Netflix
Netflixオリジナル映画『ROMA/ローマ』 (C) Netflix
  • Netflixオリジナル映画『ROMA/ローマ』 (C) Netflix
  • Netflixオリジナル映画『ROMA/ローマ』 (C) Netflix
  • アルフォンソ・キュアロン -(C) Getty Images
  • 世界最大のインターネット映像配信ネットワーク「Netflix」
第91回アカデミー賞授賞式が2月25日(日本時間)、米ロサンゼルスで開催され、『グリーンブック』が作品賞をはじめ、3部門を受賞。Netflixが配信する『ROMA/ローマ』は作品賞こそ逃したものの、監督賞、外国語映画賞、撮影賞の3冠に輝いた。

異質な存在だった『ROMA/ローマ』


アカデミー賞=仲間同士をたたえ合うハリウッドの祭典だという観点では『ROMA/ローマ』は異質な存在だったといえる。メキシコで撮影されたモノクロ作品は、演技経験ゼロの女優が主演を務め、言語はスペイン語と先住民が使うミシュテカ語。何より、ストリーミング配信大手の「Netflix(ネットフリックス)」が配給を手掛け、劇場公開が非常に限定的だったからだ。

Netflixオリジナル映画『ROMA/ローマ』 (C) Netflix
「ストリーミングサービスのオリジナル映画は、オスカー受賞に値しない」と持論を展開しているのは、かのスティーブン・スピルバーグ監督。確かに、劇場で観客が一体となって楽しんでこそ映画だという考えに、異論を唱えるファンはいないはずだ。昨年の授賞式では、司会者のジミー・キンメルをはじめ、多くの候補者たちが、会場に隣接する映画館にサプライズで“乱入”する楽しい演出もあった。映画館、そして映画ファンに感謝を示すためだ。

「世界をひとつの大劇場に」Netflixの野望


一方、Netflixはストリーミング配信を通して、国境を超えて、加入者が同じ作品を楽しみ、世界をひとつの大劇場にしようと試みている。もちろん、鑑賞のタイミングや視聴環境は、人それぞれ異なるわけだが、作品を観た人たちの声が、SNSなどで共有されることで、意見や感想、興奮や感動が大きく増幅されれば、映画の新たな価値が生まれるかもしれない(視聴時間やエリアに制限があるテレビ映画との大きな違いだ)。

世界最大のインターネット映像配信ネットワーク「Netflix」
また、より多くの優良コンテンツを求めるNetflixとしても、グローバルな市場を通じて、世界各地に散らばる才能にダイレクトにアプローチし、出資などのチャンスを与えられるというメリットがある(だからこそ、Netflixはアカデミー賞にこだわるのだ)。若いクリエーターがいきなり、世界を相手に勝負できるのもNetflixの強みだ。今年の短編ドキュメンタリー賞を獲得した『ピリオド/羽ばたく女性たち』もNetflix作品である。

“垣根”を取り払おうと努めるアカデミー賞


興味深いのはNetflix作品に対して、あからさまな拒否反応を見せるカンヌ国際映画祭などとは違い、アカデミー賞がすんなり『ROMA/ローマ』を作品賞候補にした寛容さだ。もちろん、第75回ヴェネチア国際映画祭で最高賞の金獅子賞に輝き、前哨戦である第76回ゴールデングローブ賞で外国語映画賞と監督賞を受賞した実績から考えれば、評価されて当然だが、「そしたら、配信映画部門、作ろうぜ」とならないことを不思議に思う人もあるかもしれない。

いま、アカデミー賞は多様性が進む時代に追いつくため、様々な“垣根”を取り払おうと努めている段階だ。作品賞候補となった8本からも、それは明らかで、10年前、いや5年前では考えられないラインアップになっている。監督賞候補も、出身や人種はかなりバラバラ。また、例年以上に、多くの女性がオスカー像を手にしたのも今年の特徴だ。

アルフォンス・キュアロン -(C) Getty Imagesアルフォンソ・キュアロン監督
そうした変化の一環として、Netflixをはじめとする配信映画も、ことさら特別視しないというのが、いまのアカデミー賞の考え方なのだろう。それが正しいことなのか、そうでないのかは分からない。それでも、オスカーに吹き荒れた『ROMA/ローマ』旋風は、アカデミー賞が、いまも変わり続けている象徴であることに間違いはない。
《text:Ryo Uchida》

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