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性的指向・性自認は流動的で人の数だけ存在する――多様な価値観を提示する「17.3 about a sex」は気づきや学びの宝庫

「ハグしたいと思ってるんだけどさ、どう思う?」

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「17.3 about a sex」5話(C)AbemaTV
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「ハグしたいと思ってるんだけどさ、どう思う?」

いまだかつて、こんなふうに女性に同意を求めた男性が日本のドラマ史上に存在しただろうか? 「鳥肌立った」「これ、すごく大事」「素敵」など、SNSで反響を呼んでいるこのセリフはドラマ「17.3 about a sex」第4話に登場する。全ての女性が強引でいきなりの壁ドンや床ドンを待ち望んでいる、というのは大きな誤解であることが分かるだろう。

「17.3 about a sex」は高校生たちの初めての恋愛や性に真正面から向き合った作品として注目を集めているが、こうした大人世代にも刷り込まれてしまった“常識”や“定石”に疑問を投げかけ、初めての気づきや学びをもたらしてくれるドラマでもある。取り上げられるテーマは初体験だけでなく、性的指向や体型の悩み、避妊、生理など多岐にわたり、2020年のいまもなお日本ではタブー視される“about a sex”にどんどん斬り込んでいく。


大切なテーマ:性と真摯に向き合う


「17.3 about a sex」1話(C)AbemaTV
「処女卒業17.3歳。ウチらはどうする?」「そもそもセックスってしなきゃダメ?」「女子が経験人数多いのってダメなの?」――。まず、各話のタイトルからしても、その斬新性や先進性に気づくはず。「僕だけが17歳の世界で」「フォローされたら終わり」など、これまでのオリジナル作品で高く支持され、日本で最もティーン世代に観られている「ABEMA」発だからこそ、等身大の彼女たちの経験や心情に寄り添いながら実に見やすく、分かりやすく性について描かれているのが特徴的。

主人公の3人を演じるのが、リアル女子高校生の永瀬莉子、田鍋梨々花、秋田汐梨であることはもちろん、性教育監修として慶應義塾大学の現役大学生であり、性教育プロデューサーとしての活動も行う中島梨乃や、“リアル17.3代表”として、初の著書「ありのままの私を受け入れずに批判する奴には、心の中で中指立てればいい」を出版したインフルエンサー、ひかりんちょが関わっている点も大きく、学校の休み時間や放課後のファミレスで交わされる友達同士の会話にもリアルさが表現されている(ひかりんちょさんのカメオ出演にも注目)。

「17.3 about a sex」5話(C)AbemaTV
例えば、1話。「ね、めっちゃ変なこと聞いていい?」から始まる咲良(永瀬さん)の悩み事「処女卒業」に関しても、英語のポッピングチェリー、略して“ポプチェ”という言い方を彼女たちが前向きな形で使うことによってグッとポップで身近なものになる。

また、2話では、“人を好きになる気持ちがわからない”紬(田鍋さん)が、自分にとって幸せな“ポプチェ”を目指して勉強すると誓った咲良や経験豊富でませている祐奈(秋田さん)に同調できず、「そもそもセックスってしなきゃだめなわけ?」と言い放ち、“私は人と違う”と不安な気持ちになるエピソードが描かれる。

「17.3 about a sex」2話(C)AbemaTV
だが、生物学の城山先生(ソニン)の力添えによって、自分が異性・同性にかかわらず性的魅力を感じない、恋愛やセックスに気が進まないアクセシュアルであることを知ったことで、紬は初めて“人と違っても全然いいんだ!”と自分自身を受け入れることができた。そんな紬をそっと抱きしめつつ、「抱きつくのとか嫌じゃない?」と尋ねてくる咲良の姿も「こんな親友ほしかった」と思わせてくれるシーン。

「17.3 about a sex」2話(C)AbemaTV
日本のドラマや映画、ヒットソングの歌詞までも、ティーンが主人公になる作品の主たるテーマは必ずといっていいほど男女の恋愛。でも、その世界観に共感できなくてもいい、“恋バナ”にまるで興味がない人がいたっていい、そう思わせてくれる秀逸なエピソードだ。

3話で焦点が当たるのは、すでに5人とセックスを経験している祐奈だが、ある日突然、身体に不調を感じ、性病の可能性があることを知って婦人科を受診する。自分の身体を守るのは自分自身。それに自分ひとりだけの問題ではなく、大切な交際相手にも関係する問題だ。「付き合う前に性病検査、それってイケてない?」と、新しい彼氏・貴大(石川雷蔵)を明るく誘うことができるのも、祐奈が新しい知識を得て目指すべき自分の姿を見つけたからこそ。

自分の身体に向き合い、ときにいたわることは、当たり前だがとても大切なことだ。自分の身体は自分だけのもので、たとえ彼氏やパートナーであっても、誰かに支配されていいものでは決してないからだ。

「17.3 about a sex」3話(C)AbemaTV
こうして、彼女たちが性をきっかけに恋愛や友人関係、親子関係までも見つめ直していく様はNetflixの世界的ヒットシリーズ「セックス・エデュケーション」のようでもあり、それぞれがお互いの個性を尊重しながら、思いやりを忘れずに本音トークを繰り広げる様子は、世界中から支持されている「NYガールズ・ダイアリー 大胆不敵な私たち」なども彷彿とさせる。「17.3」世代の親たちには「セックス・アンド・ザ・シティ」だろうか。そんなドラマが、ようやく日本にも誕生したのだ。


セルフプレジャーやアウティング…大人がハッとするキーワードも


「17.3 about a sex」4話(C)AbemaTV
4話「男がするんだから、女だってしておかしくない?」では、それこそ母親・亜紀 (藤原紀香)がバイブレーターを使用していることを知り、混乱する咲良の姿が描かれる。マスターベーションやセルフプレジャーについて「信じられない」「変態」というキツい言葉が飛び交うが、これまで男子は“それこそが健全な姿”とばかりに公然と取り上げられてきたのに、なぜ女子についてはそんなふうに言われてしまうのか、そもそもなぜ語られてこなかったのかを考える機会を与えてくれる。

しかも、それが動物の交尾シーンでもチャンネルを変え、生理を「月のもの」と曖昧に表現する“堅物”の母親の“セルプレ”となれば、なおさら…。母親を軽蔑しかけた咲良に手を差し伸べるのは、生物部の悠(水沢林太郎)と城山先生。そもそもバイブレイターは医療機器だったという逸話に加え、女性はマスターベーションによって、子犬を抱いたときのような誰かを大切にしたいという優しい気持ちをもたらす“愛情ホルモン”=オキシトシンが分泌される、という話も登場する。「マスターベーションって自分を思いやる行為ってことだよね」という悠の見解は、“セルフプレジャー”(日本語では自分を慰めると書く「自慰」)という言葉に改めて説得力をもたらす。

「17.3 about a sex」4話(C)AbemaTV
ちなみに、19世紀ヴィクトリア朝の英国でバイブレーターを最初に発明した医師の背景は、2011年の映画『ヒステリア』でコメディタッチに描かれているので、興味のある方は合わせてぜひ。

「17.3 about a sex」4話(C)AbemaTV
そして、この件でグッと距離が縮まった咲良と悠。1話での初登場から、どことなくミステリアスな雰囲気をまとっていた悠は、咲良への好意に気づいたことで、男性も女性も恋愛対象になる「バイセクシャル」であると自覚する。一方、彼は“別の世界の人”という心のボーダーを引き始めてしまう咲良。5話「人を好きになることに、性別って関係ある?」ではそんな中、SNSで悠がゲイであるという投稿がされ学校内が騒然となる。他人の性的指向などを本人の了承を得ずに公開する“アウティング”だ。

城山先生は、アウティングはその人の人生を変えてしまう危険なことと咲良たちに伝える。ときには、最悪の選択をする場合もあることも。それほど誰かを追い詰めることになる、その人の“人権”やいのちに関わる重要なことなのだ。

「17.3 about a sex」5話(C)AbemaTV
アウティングの残酷さについては、2018年の青春映画『Love,サイモン 17歳の告白』でもつぶさに描かれる。多くの人に観てもらいたいという思いから、サイモンの母親役を演じたジェニファー・ガーナーやゲイをカミングアウトしているマット・ボマーらが映画館を貸し切って無料上映会を行ったほどの必見作だ。

本作ではそれに対し、インスタライブで“反撃”を試みる悠。「俺のこと好きになられたらどうしよう」とふざける同級生の男子に向けては、大前提として「そんなこと言う人は好きにならないから安心して」とキッパリ。むしろ、自分は性別に関係なく人として惹かれた人を好きになる「パンセクシャル」だと明言する。この超然とした態度は、彼がいままで相当な葛藤と向き合い、心ない言動を受けとめてきたからかもしれない。

さらに今エピソードで、ヘテロセクシャル(異性愛者)という言葉を初めて聞いた咲良と祐奈だが、それを当たり前として意識しなくてもいいのは特権である、とサラリと付け加える彼の姿も印象的。

「17.3 about a sex」5話(C)AbemaTV
ラスト、性的指向(セクシャル・オリエンテーション)と性自認(ジェンダー・アイデンティティ)は流動的で人の数だけ存在する、人と違っていることは当たり前、という解説で終わる5話。 “about a sex”とはつまり自分自身について知り、考え、理解を深めた各々がお互いを受けいれていくこと、つまりは愛することそのものだといえる。そんなふうに毎回、多様な価値観を提示し続ける「17.3 about a sex」をぜひ、最後まで見届けてみてほしい。

「17.3 about a sex」は毎週(木)23時~ABEMA SPECIALチャンネルにて配信、ABEMAビデオで無料見逃し配信中(全9話)。
《シネマカフェ編集部》

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