『ヒトラー 〜最期の12日間〜』ブルーノ・ガンツ、オリヴァー・ヒルシュビーゲル監督来日記者会見

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ドイツ人によって初めてヒトラーについて描かれた映画『ヒトラー 〜最期の12日間〜』が注目を集めている。本年度のアカデミー賞にもノミネートされ、本国のドイツでも歴史の真実と向き合った映画としてきわめて正当に受けとめられているという。主演のブルーノ・ガンツと共に来日したオリヴァー・ヒルシュビーゲル監督は会見の席で「コンニチハ。ニホンニコレテウレシイデス」と見事な日本語を披露した。

前作『es [エス]』に続いて、人間の心の暗部や内面の弱さを描くことに成功しているが、監督自身はそれが自分のスペシャリティであるとは思っていないという。「たまたま人間のダークサイドを描く映画が続きましたが、興味は人間の全方向に向けていますので、今後はラブストーリーやコメディなど(様々なジャンルで)やっていけるのではないかという自負はあります」。

この映画はヒトラーの女性秘書であったトラウドゥル・ユンゲの視点で語られている。映画のラストにはアンドレ・へラー監督による彼女のドキュメンタリー作品の映像が引用されている。戦後60年経った今、このテーマにトライした思いとして監督は「単純にこのストーリーを語ってみたいし、今までに誰もやったことがないことだから」と答えた。ヒトラー役のガンツもオファーを受けたときに同じ質問をしたという。そして「私にとってはそれで十分な理由だったので、出演することにした」と説明した。

また、本作を製作するにあたって監督が一番気を遣った点は、“アドルフ・ヒトラーという男を立体的な人間として描くこと”と“ヒューマニティを持つ作品にすること”だったという。「観客が何らかの形で少しでも彼のことが分かるようなキャラクターを描かなくてはならないというのが難点でした」。その難しい役の演じ手として選ばれたのが、『ベルリン・天使の詩』『永遠と一日』で知られるドイツの国民的俳優、ブルーノ・ガンツ。ヒトラーについての映画をドイツ人が製作するのも、ドイツ人がヒトラーを演じるのも初の試みであった。役づくりについてガンツはこう語る。「彼に近づくためにたくさんの本を読みましたが、ヒトラーとは一体どういう人だったのかという核心については全く分からないままでした。彼がユダヤ人に行ったことに対するイデオロギー的、理論的な説明は何も残っていません。その部分に関してのヒトラーの内面は空虚だと思います」。

ヒューマニティについては、“登場人物たちが悪い人間として見られている中で、いかに観客に人間性を感じてもらうか”が重要なポイントだったという。確かにガンツのヒトラーは私たちが知っている独裁者のイメージと比べてあまりに人間的で弱々しい。「といっても彼らにシンパシーを抱いてほしかった訳ではありません。あの当時何が起きたかを理解するためには、彼らも我々も同じ人間であると理解することから出発しなければいけないと思ったのです。彼らは決して“モンスター”ではありません。当時のナチはユダヤ人を人間として見ませんでした。それがどのような結果を招いたかというのはご存知の通りです。そういうことが繰り返されないように今回は(逆の立場から)人間性を非重視しました」。ちなみにこれまでに作られたヒトラーに関する映画の中で印象深かったものとしては2人ともチャールズ・チャップリンの『チャップリンの独裁者』を挙げた。

「すべての人間の中には善と悪の両面があり、その悪をいかに抑制するかというのは、それぞれの手にかかっているのだと思っています」と語ってくれたヒルシュビーゲル監督。今だからこそ、あえてこの映画が作られなければならなかった理由について考えてみたい。
《text:cinemacafe.net》

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