『上海の伯爵夫人』ジェームズ・アイヴォリー監督インタビュー

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『上海の伯爵夫人』ジェームズ・アイボリー監督インタビュー
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『眺めのいい部屋』『日の名残り』のジェームズ・アイヴォリー監督の最新作『上海の伯爵夫人』は、日中戦争前夜の上海を舞台にした人間ドラマ。理想のバーを作る盲目の男と、そこで働く没落したロシアの伯爵夫人の恋を描きながえら、「魔都」と呼ばれた上海を美しくエキゾチックに描き出した意欲作。正体を隠したまま、2人の恋に関ってゆく日本人スパイを、真田広之が演じているのも話題だ。

レイフ・ファインズと真田広之を起用した理由を教えてください?
レイフに関しては、常々彼といっしょに仕事をしたいと思っていたし、イズマエルもそう思っていたので、お願いをしました。それに彼はアメリカ人を演じるのがとても上手いしね。ヒロ(真田広之)に関しては、『たそがれ清兵衛』『ラスト サムライ』で見ていいなと思っていたのですが、彼が英語でも上手く演技をすると聞いたんです。彼は中国や日本にいて、私はロンドンにいたので、まずは電話で話しました。それで会うことに決め、脚本を送りました。起用したのは2人がいい俳優だからです。一緒に仕事をするのは今回が初めてです。いつも同じ俳優を使うほうが楽なんでしょうが、私は新しい俳優を使うことが好きなんです。

撮影をクリストファー・ドイルさんが担当したのも、今回の映画の新しさですね。
私たちには、中国人クルーをまとめられるキャラクター必要でした。当初予定していたイギリス人のカメラマンでは上手くいかず、その彼が「そういうことならクリストファー・ドイルがいいんじゃないか」と推薦してくれたんです。彼の独特の仕事が今回の映画にこれまでとは違うスタイルを与えてくれました。それこそ私たちが必要とし、非常に望んでいたことでした。撮影に当たって、私たちは資料や想像力を駆使して古い上海をまるまる作り上げなければならなかったのですが、その点でも彼は優秀で私たちはラッキーでした。それに彼は仕事が速いし、経済的なんです。

監督の映画は階級を意識したものが多いですが、それにこだわるのはなぜですか?
この世に存在するすべての人々は、様々に異なる階級に属していると誰もが知っていますよね。ただ階級は物語の一部でしかありません。当時の上海はとても豊かな町で、金持ちの中国人がいる一方で、ヨーロッパから来た貧しい避難民もいました。映画には貧しいロシア人が登場しますが、彼らはロシアにいた頃は貴族の王子様やお姫様だったりしたのですが、今では生きていくことすら難しく、頼る人もなく、娘がすべての家族を支えるために、見知らぬ男とダンスしているんです。すべてが逆転しているんです。ご指摘のように、それは興味深くドラマティックなシチュエーションといえるかも知れません。

ジャクソンにとって理想のバーとはどんなものでしょうか?
夢のバーは抽象的なものでしかありません。夢のバーの3つの要素は、彼が心の中で作り上げた理想の静止画のようなもの。それは目の見えない彼にとっては本物で、聞くことも感じることも出来ますが、決して見ることはできません。中国の政情が非常に悪かった当時、彼はその方法で実際にバーを作り始め、成功します。その一方で、実際の伯爵夫人であるナターシャに出会って恋に落ちるのです。夢のバー“ホワイト・カウンテス”は抽象概念ですが、彼はそこのキャラクターである本物のカウンテス(伯爵夫人)との幸せを見つけ、絶望から抜け出すことが出来るのです。

ラスト近く2人はやっと手を取り合って上海を脱出しますが、映画はその後を長めに描いています。それはなぜでしょう?
観客もその後に何が起こるのか、彼らが無事脱出できるのかを知りたいと思うと考えました。たとえ2人が一緒になっても、大いなるハッピーエンドにはならないということです。だってあのボートでマカオに行っても、当時はマカオにも日本軍が侵攻しているし、そのうち第二次世界大戦だって始まります。幸福な結末を迎えるのは難しいでしょう。彼らは生きているのか、死んでしまうのか……あの時点では、ただ目指す場所へ向かうボートが安全に出航しただけのことなんです。

監督にとっての理想の映画とは、どんなものですか?
私がいつも描きたいと思うのは、人間の関係についてです。人と人が出会い、つながりをもち、過去に横たわる困難を克服し、愛し合い、助け合い……そういうようなことを描きたいのです。それぞれの映画にそれぞれの力点があり、一般化していうことはできません。ただ世の中には人々が出会わない、結ばれない映画もたくさんたくさんありますよね。それはリアルなのかも知れませんが、私は人と人が結ばれるという点については気にかけています。この映画はそのいい例といえるでしょうね。



©GION/WISEPOLICY
《text:Shiho Atsumi》

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