ヨーロッパチャンピオンズリーグ決勝戦の当日、ロシア、トルコ、スペイン、ドイツをそれぞれ訪れた外国人旅行者4組のエピソードがオムニバス形式で綴られるヒューマンドラマ。決勝戦が行われるのはロシアで、決勝に進出したのはスペインとトルコのチーム。そして、ドイツの新鋭ハネス・シュテーアが監督を務めている。ロシアではイギリスのビジネスウーマンが強盗の被害に遭い、地元の老婦人が彼女の世話を親切に焼くが、一方のスペインでは巡礼に来たハンガリー人が同じく強盗に遭うも、地元の警察にのんびりとあしらわれてしまう。また、トルコ編には保険金目当てに強盗に襲われたふりをするドイツ人青年が、ドイツ編には同じく保険金詐欺を実行しようとするフランス人カップルが登場するなど、似たシチュエーションの中で、それぞれのお国柄をカリカチュアした内容が楽しい。『ワン・デイ・イン・ヨーロッパ』は、舞台設定がヨーロッパチャンピオンズリーグ決勝戦の当日であるため、サッカー中継にクギづけになるあまり、仕事を後回しにする警官たちや熱狂的な街のサッカーファンの姿も。とはいえ、それらはあくまでも背景の一部に過ぎず、モチーフとして物語を支配しているのは盗難、詐欺、警察。旅行者はちょっと耳を傾けておきたいトピックを散りばめつつ(ただし、詐欺を試みるのは旅行者側だが…)、ヨーロッパの1日をポン、ポン、ポン、ポンと軽妙に切り取った1作。