ファッション小噺vol.74 いつかは伝統衣装をさらりと着たい『トゥヤーの結婚』

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『トゥヤーの結婚』
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中国内モンゴルの北西部に広がる草原。若く美しいトゥヤーは、夫・バタールと幼い2人の子供と暮らしている。バタールは井戸掘りの際に使ったダイナマイトの事故で下半身不随。遠くの水場まで日に少なくとも2〜3回も水を汲みに行くのも、暮らしのために羊を放牧しているのも、全てトゥヤーの仕事。だが、重労働がたたって、彼女自身も腰を痛め、もう生活を支えるような激しい仕事は無理だと医者に診断されてしまう。そして、彼女はある決断に迫られる。愛する家族を守るために。

第57回ベルリン国際映画祭で金熊賞(グランプリ)を受賞した『トゥヤーの結婚』です。妻としての劇的な選択を、過剰に演出することなく、人間に焦点を当て淡々と描き出した手法が秀逸。一人で全てを背負って、押しつぶされるようになるトゥヤーの生きざまが何とも心に染みてくる作品です。

そして、寒々しい自然とコントラストを成している、色鮮やかな衣裳も印象的。トゥヤーはピンクやブルー、オレンジなど強い色を着ています。この映画に登場するモンゴルの人々と同様に、自然と共に暮らす民族の伝統衣装にカラフルな色が使われていることが多いのは、アースカラーに囲まれているせいでカラフルなものに惹かれるからなのでしょうか。

それにしても、彼女の重ね着はすごい。寒い気候に対応するためにすることは、がんがんに火をたくのではなく、ひたすら重ね着。セーターの上にシルク製の綿入れベスト。おでかけの際には、その上に西洋風のジャケット…。そして、マフラーでほっかむり。なんともエコな暮らしです。あの綿入れベストとマフラーのほっかむりは、妙に寒さの厳しい今年の冬はちょっとアリかも、と思ってしまいました。

おしゃれと呼ぶには程遠いけれど、『秋菊の物語』のコン・リー、『初恋のきた道』のチャン・ツィイーが演じた主人公たちに見られるような、懐かしいかわいらしさが伝わってきます。真似したいとは思わなくても、「ダサい」の一言で片付けられない、力強く逞しい魅力(迫力?)があるのです。

さらに忘れてならないのは、民族衣装の代表格である花嫁衣装。こちらは、文句なく素敵。色とりどりのビーズを絶妙に組み合わせた髪飾りにうっとり! いつもはおしゃれに気を使わない人々も、結婚式となると、花嫁花婿のみならずここぞとばかりに伝統的な衣装で着飾るのですね。この映画を観ていたら、なぜかしら着物を着たくなりました。某きもの教室のCMで「着物の国に生まれたのに、着られないなんてもったいない」と渡辺謙さんが言っていますが、確かにそうですよね、謙さん。私もいつかはさらりと着物を着こなして、しゃなりしゃなりと銀座の大通りを歩いてみたいと思います。いつかは…。

《text:June Makiguchi》

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