暑い夏を忘れて、しばし別世界へvol.3 新生コッポラの新しい世界へようこそ

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『コッポラの胡蝶の夢』 -(C) 2007 American Zoetrope, Inc. All Rights Reserved.
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暑い、暑いと騒いでいたら、急に涼しくなってしまった東京。あまりの過ごしやすさに、ほっとしまいます。でも、いつ猛暑がぶり返すか分かりません。気を緩めずに、本格的な秋到来までがんばるといたしましょう。

暑い夏を忘れて、別世界へと誘ってくれる作品をご紹介してきましたが、その3回目となる今回は、10年ぶりに発表されたフランシス・フォード・コッポラの新作、その名も『コッポラの胡蝶の夢』について。『レインメーカー』以降は、監督作品を発表しておらず、娘ソフィアの方が監督としては注目されていました。が、そんな御大が再びメガホンを取ったのは、現代ルーマニア文学界の巨匠ミルチャ・エリアーデが遺した小説「若さなき若さ」。人生の終焉を迎えようとしていた言語学者が、雷鳴に打たれ、肉体の若さと魂の再生を手にする神秘的な物語。そんな主人公の数奇な運命をたどった映画も、非常に文学的で幻想的な作品となっています。

これまでのコッポラ・ファンなら、かなりの異色作と感じることでしょう。実は、彼ほど才能豊かな人物も、この数年は悩んでいたといいます。新人アーティストを支援したり、数々の映画をプロデュースしたり、ワイナリーのオーナーとしても評価されたりと、実業家としては成功しているものの、本来のクリエイターとしての欲求は満たされていなかったのだそう。その気になりさえすれば、チャンスも、候補作も、いくらでもあったはずですが、本当に心から惹かれる作品だけを作りたいというこだわりを捨てることはできなかったのでしょう。妥協し、安易に作品を撮ることは、自らが“映画監督フランシス・フォード・コッポラ”である意味を捨てることにも繋がりかねない。裏を返せば、自らが“フランシス・フォード・コッポラ”であり続けるためにも、“その気”になれる作品、本当の意味でクリエイター魂に火をつけ、自信を持って送り出せる作品を探していたに違いありません。

その証拠に、8年間のブランクを経てこの作品に出会った66歳のコッポラは、その直後から、作品作りのプランを立てることに夢中になったといいます。映画化権が入手できるかどうかも分からない時点で。まさしく、魂に火がついた瞬間なのでしょう。その魂に忠実に作品作りをした結果、本作の作風は、これまでのコッポラ作品とはあまりに違います。作風の変化は、クリエイターにとって大きな挑戦を意味しますが、魂に火のついたクリエイターは、もはや挑戦がもたらすかもしれないリスクなど恐れていないのです。

これまで高い評価を受けてきた巨匠が、69歳になる今年、10年間の沈黙の末に出した答え、それが『コッポラの胡蝶の夢』なのです。そこには、コッポラの世界でありながら未知、という不思議な世界が生まれています。正直言って難解です。「これがコッポラの映画?」と驚く人も多いでしょう。でも、好きか嫌いか、そんな判断を下す前に、一人の天才が苦悩を経て、新たなる答えを見つけ、妥協を捨ててたどり着いた世界にとっぷり浸かってみようではありませんか。

《text:June Makiguchi》

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