【インタビュー】ベン・スティラー 監督・俳優としての冒険、超えるべきハードル

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ベン・スティラー『LIFE!』/PHOTO:Izumi Kakeya
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  • 世界に先駆け日本初公開『LIFE!』劇場用ポスター -(C)2013 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved.
  • 『LIFE!』 -(C)2013 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved.
  • ベン・スティラー&ショーン・ペン/『LIFE!』 -(C)2013 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved.
  • 『LIFE!』-(C) 2013 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved.
  • 3月に来日を果たす、ベン・スティラー/『LIFE!』 -(C)2013 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved.
  • ベン・スティラー&クリステン・ウィグ/『LIFE!』 -(C)2013 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved.
――人生における転機。

大げさに聞こえるかもしれないが、ベン・スティラーにとって映画『LIFE!』はそれだと感じる。それは単に、コメディ色の濃いこれまでの作品と異なる領域に挑戦しているからだけではない。彼が本作に凝縮させた、仕事に対する思い、映画に注ぐ愛。映画公開前に、約5年ぶりの来日を果たした彼に話を聞いた。

ベン演じる主人公は、雑誌「LIFE」の写真管理部に勤務する男ウォルター・ミティ。地味で、冒険とは無縁の単調な日々を送る彼だったが、最終号の表紙となる大事な写真のネガがないことに気づき、カメラマンを探す壮大な旅に出ることに――。

元々、主演に抜擢されたのちに監督を志願し、二役を自ら請け負ったベン。その挑戦へ駆り立てたのは、ほかでもないスティーヴン・コンラッドの脚本に描かれた人間の魅力だった。

「スティーヴンは“Every man”、普通の何の変哲もない人に対する称賛をすごく上手く描いていると思った。多くの人は栄光を浴びることはないけど、毎日コツコツと一生懸命働いてきた人には威厳がある。そういう人間に私たち全員が共感を覚えると思うんだ。また、僕のように注目を集めている人だって、100%持っている面を見てもらえるわけではない。でも、100人全員が自分に気づかなくてもいい。たった一人、その人の素晴らしさに気づいたらそれだけでも十分ということが、この映画のもつ美しいところだと思う」。

それにしても臆病で、女性にも奥手のウォルター。その夢を叶えるのが、たびたび頭の中に登場する空想の世界だ。本作の前半部分では、あらゆるジャンルの空想の世界が迫力たっぷりに展開されるが、「お気に入りは冒頭の登山家になるシーンだね。自分よりも背が高くてシャープで、カッコいいから」とほくそ笑むベン。

ただ、彼の夢はもちろん空想で終わらない。それからウォルターはモノクロからカラーの世界に飛び出すように、マンハッタンのオフィスから遥かアイスランドへ向かう。恐怖とスリルに満ちた冒険が、本物の臨場感を伴って幕を開ける。

「彼がどんな場所に行ったのか、臨場感をもって撮影して、観客にもその臨場感を感じてもらいたいと思ったので、アイスランドでの撮影にこだわったよ。海に飛び込むシーンは9月末に撮影したのだけど、わざとその時期まで待って撮影したんだ。その時期が一番波が高いし、寒いからね。撮影はクレイジーで大混乱だったけど、本当に怖くて寒かったおかげで、あのシーンは演技をせずに済んで楽だったよ(笑)」。

そして旅路は海から山へ、ベンが「映画のハート」と呼ぶクライマックスへと続く。それはショーン・ペン演じる伝説のカメラマンとの対面シーン。

「とてもシンプルなシーンだけど、一日という限られた時間で山上まで登って撮影しなければならなかった、一番誇りに思えるシーンなんだ。ショーン自身も監督として冒険的な映像を撮っているから、演技の素晴らしさはもちろん、キャストとスタッフにとても協力的に一緒に作ってくれた。撮影が終わって、気づいたら機材を持って山を下りていたものだから、僕もその姿を見て何か持たないとダメだなと思ったよ」。

ベンが映画のメガホンをとるのは、主演・監督作『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』以来5年ぶり。初監督作『リアリティ・バイツ』からは実に20年が経つが、俳優である自分にこれほど付ききりで迫った作品は本作が初めてと言える。

「やっぱり乗り越えなきゃいけないハードルはいくつかあったよ。自分自身を客観的に捉えるのは辛くて、特に編集の作業は僕にとって辛いものなんだ。それに監督も主演もしていると、ほかの俳優たちのために時間を割こうとして自分のシーンはおざなりになりがちなんだけど、考えてみたらこの映画はやっぱりウォルターの物語だから、自分のシーンもとても大切だと考えを改めた。編集の段階でいろんなテイクから選べるように、俳優としての自分にあまり厳しくならずに、いろんな方法でテイクを何度も撮って、俳優としての自分にいろんな演技を許したんだ。ただ改めてふり返ると、監督と俳優を両方やるのはしばらくはいいかなと思うよ(笑)」。

ある意味、満足感の裏返しとも受け取れるこの言葉。俳優として、監督として納得のいくクリエイティビティを探求する姿は、やっぱり冒険に出るウォルターと重ねずにはいられない。最初こそ仕事に対する責任から始まった冒険が、自分のために求めるものへと切り替わる瞬間。それをベンは「大人になる過程だと思う」と捉える。

「若い頃はとにかく仕事で認められたい、人に評価してもらいたいと思って一生懸命、仕事を頑張る。でもある年齢に達するとそうではなくなる。同じ仕事でも自分のためにやる。それはなぜかと言うと、ほかの人が自分のことをどう思うとか、どう評価されるとか、どんなに一人で頑張っても左右することはできないから。だけど、やっぱり仕事も自分のためにコツコツやるのが一番大切なんだと、目的意識が変わることが大人になることだと思う。大人になるということは自分のために何かをやることだと、僕は考えているよ」。

そのうえで問う。いま自分が持っているものにどれほど満足しているのか。

「これまでなりたい、やりたいと思っててなれていないのは、より良い人間。常にもっと自分を向上させたいと思っている。人間として成長していくのが人生の過程だからね。だから願わくば、10年前の自分よりいまの自分が少しは良い人間になっていればと思うし、10年後の自分がさらに良い人間になっていたいと思う。それと年を経るにつれて、いまを生きる、いまというこの瞬間を大切にしたいというのを感じてくる。僕には子どもが2人いるけど、成長を見ていると本当に時間が経つのはあっという間だなと思うんだ。だから時が過ぎ去る前にちゃんと自分のものにするのが大切だよね」。

人生は冒険の連続。もちろん旅に出るのも賭けに出るのも好きだというベン。では、次なる冒険の焦点は?

「子どもたちと一緒に旅行がしたいんだ。世界各国のいろんな文化を見せてあげたいと思う。今回は連れてこられなかったけど、いつか一緒に来て日本の文化にも触れさせてあげたいね」。
《text/photo:Izumi Kakeya》

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