【インタビュー】ジョニー・デップが極めた“悪”…「俳優は観客にサプライズを与える責任がある」

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『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのジャック・スパロウ、『チャーリーとチョコレート工場』のウィリー・ウォンカ、『アリス・イン・ワンダーランド』のマッドハッター…。“カメレオン俳優”ジョニー・デップが、これまで変身してきた役柄は数知れず。そのジョニーが、身も心も役に没頭し、まるでその人物が憑依したかのような熱演を見せているのが『ブラック・スキャンダル』だ。

本作で、実在する凶悪非道のギャング、ジェームズ・“ホワイティ”・バルジャーを演じたジョニーは、ハリウッドの“同業者”による全米映画俳優組合(SAG)賞で「主演男優賞」にノミネートされ、ファンが選ぶ2016年ピープルズ・チョイス・アワードでは「ドラマ映画男優賞」を受賞、主要メディアからも「キャリア最高の演技」と絶賛を受けた。これまで、奇抜な見た目のキャラクターのイメージが先行しがちだったが、本作で改めて“実力派”であることを示した彼が、そのバルジャーの役作りから、実弟で大物政治家に扮したベネディクト・カンバーバッチ、FBI捜査官を演じたジョエル・エドガートン、そしてメガホンを取ったスコット・クーパー監督のビジョンまで、たっぷりと語ってくれた。

「全くの別人だった」と、バルジャーの恋人役を演じたダコタ・ジョンソンもふり返る今回のジョニー。「ジェームズ・バルジャーには以前からとても興味をもっていた」と、彼は言う。「生い立ちや生き方だけでなく、16~17年もの間、国の追跡を逃れ続けることができたという点にね。そんなことができる人はめったにいない。だから彼について、ずっと興味があった」。

本作の舞台で、バルジャーが生まれ育ったサウスボストン、通称“サウシー”は、昔もいまも住民同士の結びつきが非常に強い場所だと言われている。「地元の人たちはバルジャーに対して、大きな恩を感じていた」とジョニー。「子どものころからバルジャーに憧れ、目標にする人も多かったんだ。彼は何をするにも自分の流儀を通し、たいてい勝利をおさめる。しかも圧倒的なカリスマ性があった。人を惹きつけてやまない独特の魅力があり、誰もがバルジャーと仲良くなりたいと思う。この人をもっと知りたい、理解したいと思わせるような求心力を備えていたんだ」とバルジャーの興味深い“人となり”に触れ、「その原動力はどこから来るのか、知りたいと思ったよ」と明かす。

「実在のバルジャーは謎多き男なんだ。バルジャーを“つかむ”うえで高いハードルだった。だけど、彼のかつての友人や仲間に会うことができて、参考になったよ。おかげで人物像の輪郭がつかめたし、演技のたたき台にすることもできたんだ。バルジャーは一触即発の爆弾だったけど、一方では感傷的でデリケートな一面もある。そんな人物を演じるのは綱渡りをするような感覚だったね」。

とはいえ、バルジャーは“サウシー”を取りしきるアイルランド系ギャングのトップに君臨し、ボストン北部のイタリア系マフィアと抗争を繰り広げていた人物。「それで(幼なじみの)FBI捜査官のコノリーが、バルジャーにこんなふうに密約をもちかけたんだ。『イタリアン・マフィアを潰す手助けをしてくれれば、犯罪に関して目をつぶってもいい。あまりにもイカれたことをしない限りは、目をつぶる』ってね。このとき、バルジャーの反応は、密告者なんかになるものか、誰のためでも、何のためでも、裏切り者にはならない、というものだった。この密約は、彼にとっては“ビジネス”だった。彼は自分の仲間を売ったりはしない。それはギャングとしての信条に反する。だから彼はビジネスとしての決断を下したんだと思う。それは間違いなく彼の利益になった。彼は密約を利用したんだ」と、アメリカ史上最悪の汚職事件をジョニーはそう言い表した。

FBIと組み、向かうところ敵なしとなったバルジャーは、ドラッグ取引、恐喝、マネーロンダリング、殺人(ときには身内までも!)など、あらゆる凶悪犯罪を実行しながら、法の裁きを逃れることになる。そんな実在の人物を演じることは、「その人、真実、歴史に対する責任を背負うことになる」と、ジョニーは言う。「それが誰であろうと敬意を払うことがとても大切。その人の生きざまを演じさせてもらうわけだから、たとえ犯罪者であっても、できるだけ本人に近づくように努めるのが礼儀じゃないかな」。

そのため、彼は長年タッグを組み、信頼を寄せるメイクアップ・アーティスト、ジョエル・ハーロウとともに“バルジャー”を生み出すことになった。「バルジャーの特徴を掴みながら、ヒューマンに見えることにこだわった。僕の目はスペードのエースのように黒いから、ブルーのコンタクトは特注で作ってもらった。俳優は、リスキーな肉体的変身をして、毎回フレッシュな、異なる外見で観客にサプライズを与える責任があると思っている。試行錯誤した挙げ句、最終的に、最も近いと思われる今回のルックスに決まったんだ」。

また、「バルジャーのキャラクターが浮かび上がったとき、彼はとても肉体的で、タフな男だったから、さらに体格をよくした」と、体作りをしたというジョニー。さらに、「彼の声の録音はあまり残っていなかったので、ある意味、カンでやっていたが、うまくいった。彼の以前の仲間から手紙をもらったんだが、かなりビビっていたようだったからね(笑)。そう聞いて嬉しかったね」と、この完璧なまでの役作りの手応えを口にする。

だが、「彼は一方で、母や弟をとても大切にし、家族愛のある複雑な人間だった。そんな彼を的確に、ある意味、正当性をもって演じるようにした」とも明かすジョニー。ベネディクト・カンバーバッチが演じた弟ビリー・バルジャーは、兄弟でありながら、あまり似ていなかったといわれ、兄・ジェームズとは全く別の“政治家”という道を選んでいる。「ビリーは政界に入り、派手なパフォーマンスが身上の大物政治家になった。ビリーはビリーの道を究め、暗黒街に君臨したんだよ。それでも2人は揃って実家の母親を訪ねたりして、ずっと兄弟仲は良かった。社会的な立場はえらく違うけどね」。

そのビリーを演じたベネディクトについては、「本当に凄い。素晴らしい人物で、心も魂も美しい」と絶賛するジョニー。「ベネディクトはとても献身的な俳優で、今回も期待以上の結果を出しているんじゃないかな。ビリーの心境、忠誠心、兄への思いが透けて見えるようだよ。俳優として、彼はとにかく心がいい。彼もジョエル(・エドガートン)もどちらもだ。2人とも人に対して感謝を忘れない。彼らとの共演シーンが終わると、みんなで、『最高だった。見事だったよ』と言い合える。そんな人たちは尊敬できるよね」と、撮影現場でも“絆”がしっかりと生まれたことを明かす。「彼らとの共演は本当に素晴らしい体験だった。彼らはもう兄弟同然だ」。

バルジャーに憧れを持っていた1人、“幼なじみ”のFBI捜査官コノリー役を好演したジョエルについても、「彼には毎回驚かされたし、彼との共演では僕自身が気づかされることも多かった。彼のことは心から尊敬しているよ」と敬意を込めるジョニー。「カンの良い俳優が相手だと、心情的なピンポンができる。自分がぶつける球をしっかり打ち返せるだけの強さがあると分かるからね。すると不思議な感覚が生まれ、美しいチェス・ゲームのようになって、演技することが楽しくなる。こんな共演ができる相手との仕事が待ち遠しくなるんだ。ジョエルは見事だった」。

そして、彼らキャストたちをまとめ上げたスコット・クーパー監督に対しても、ジョニーは手放しで絶賛を贈る。『クレイジー・ハート』『ファーナス/訣別の朝』を見て「いつか組んでみたいと思っていた」というジョニーは、「現場での仕事ぶりを見ていても、これが3作目とは信じられなかった。その手腕、ビジョン、熱意に惚れ惚れしたね。まったく、すごい男だよ。スコットが監督するなら、電話帳の撮影にだってつき合うね(笑)。本気だよ! スコットのことは心の底から尊敬してるんだから」。

最後に、特別に日本のファンにだけと、本作の見どころを明かすジョニー。「この映画で最も重要なのは、最初の10分で映画を観ているという感覚を失うほどになることだ」と言う。「スコット・クーパーは素晴らしい監督で、彼のカメラの動かし方、使い方が型にはまったものでないというのは確かだ(笑)。カメラをまるで人のように扱い、覗き見しているかのように使う。カメラがあたかも一人のキャラクターとして息をしているかのようなんだ」。

だからこそ、観客は実際にその場にいるかのような感覚に陥り、ジョニーが体現する複雑さを持った人間“バルジャー”をよりリアルに感じ、恐れおののくことになる。最凶の悪人であれ、ストイックにその人物像を追求し、キャスト・スタッフに絶大な信頼を置くジョニーは、やはり最高にカッコイイ。

『ブラック・スキャンダル』は全国にて公開中。
《text:cinemacafe.net》

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