【シネマ羅針盤】境界を超えるヒロイン像…『ルーム』『ボーダーライン』

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『ルーム』 (c)ElementPictures/RoomProductionsInc/ChannelFourTelevisionCorporation2015
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  • エミリー・ブラント『ボーダーライン』 (C) 2015 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.
  • 『ボーダーライン』 (C) 2015 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.
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  • 『ボーダーライン』(C)2015 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.
ブリー・ラーソンが第88回アカデミー賞主演女優賞を受賞した衝撃のヒューマンドラマ『ルーム』がついに日本でも公開された。未体験の感動が静かな波紋となって、映画ファンにじんわりと広がることを期待したい、2016年を代表する傑作だ。

映画はある男に誘拐され、7年間“部屋”に監禁された女性と、外の世界を知らずに育った息子が外の世界に決死の生還を果たし、失った時間を取り戻そうと奮闘する姿を描いた。家族愛や母性といったテーマに加えて、緊張感あふれるサスペンスとしての魅力も放つ本作は「部屋/世界」という境界を超えるヒロインを通して、人間の尊厳、人生の輝きを見つめており、世代や性別を超えた普遍的な問題提起が深い余韻を残している。

先月、初来日を果たしたブリーは、記者会見で「ハローで始まり、グッドバイで終わる映画」だと語っていたが、この言葉には「グッドバイの先にある新しい世界」という意味合いが込められている。折しも就職や進学、異動など変化に富んだ春が到来し、その先の自分に不安や戸惑いを隠せない人も多い季節。境界を一歩踏み出す主人公、そして見るもの、触れるものすべてが初めてで新鮮に驚く息子の姿が、そっと背中を押してくれるはずだ。

メキシコ国境を超えて、麻薬戦争の渦に巻き込まれる女性捜査官の葛藤を描き、アカデミー賞で3部門にノミネートされた『ボーダーライン』も力強い一作。サスペンスアクションとして超一級であると同時に、麻薬戦争の現実や手荒な超法規的な捜査を目の当たりにし、善悪の境界で揺れ動く主人公の葛藤をエモーショナルに捉えている。『プラダを着た悪魔』『イントゥ・ザ・ウッド』のエミリー・ブラントが披露する体当たり演技も必見だ。

原題は「暗殺者」を意味する“Sicario”だが、実は二転三転するストーリー展開のかなり核心部分を突いており、興ざめと言えば興ざめかも。国境、善悪、生死、男女、真偽といった境界を総合的に意味した『ボーダーライン』こそ、この映画の本質を捉えた理想的な邦題といえる。『ルーム』とは別の意味で、より直接的にショッキングな描写もあるが、早くも続編の製作も決定しているだけに、やはりこの春見逃せない秀作に数えたい。

『ルーム』『ボーダーライン』は公開中。
《text:Ryo Uchida》

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