【インタビュー】ジョディ・フォスター監督、お金から見る人間の本性とは?『マネーモンスター』

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『マネーモンスター』ジョディ・フォスター監督/photo:Kyoko Akayama
  • 『マネーモンスター』ジョディ・フォスター監督/photo:Kyoko Akayama
  • ジョージ・クルーニー&ジョディ・フォスター/『マネーモンスター』
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  • ジャック・オコンネル×ジョディ・フォスター/『マネーモンスター』
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スリリングにスピーディに展開するクライム・サスペンスかと思いきや、拝金主義を風刺し、勝者と弱者の格差を増幅させる社会問題にまで鋭く切り込んだ『マネーモンスター』。ジョージ・クルーニーとジュリア・ロバーツという2大スターの競演も話題だが、娯楽性と知性派ストーリー、エモーショナルな人間ドラマが見事に融合した良質なハリウッド映画としても注目を集めている。監督は、名女優としても知られるジョディ・フォスター。8年ぶりの来日を果たし、作品に込めたフィルムメーカーとしての想いをシネマカフェに語ってくれた。

取材部屋に入ると、ブルーのパンツスーツに身を包んだフォスター監督が、「ジョディよ、よろしく」とにこやかな笑顔とともに手を差し出して迎えてくれる。子役としてデビューを果たしてから50年以上、ショービジネスの第一戦で活躍し続けているトップスターだが、とても気さくだ。立ったままのスタッフに、「あそこにも椅子があるから座ったら」と気配りも見せる。いざインタビューという段になると、するりとパンプスを脱ぎ、カウチに胡坐をかいて、リラックスした表情を見せてくれた。

まず、最初に脚本を見せたのが主役を演じたジョージ・クルーニーだったという話からスタート。
「役にぴったりだと思ったの。観客はジョージが演じるリー・ゲイツに最初に出会った時、きっと彼を好きになれない。エゴが強いし、惰性で生きているし、酒グセも悪いし、人への思いやりがない。自分を見失っている状態の人だから。番組をジャックされると、臆病な反応を見せるしね。でも、観客は段々と彼の状況を理解していくの。いくら有名なTVパーソナリティでも、人生で失敗しているから自己評価が低いんだなと。ところが、それが事件をきっかけに変化していくの。ある意味、彼は映画の最後でふたたび人間である自分を取り戻すことができる。だからこそ、最初は嫌われるかもしれないけれど、変化し、観客を引きつけ続ける、そんな役者が必要だったの」。

ジョージがTVパーソナリティとして番組の頭で滑稽なダンスを披露するのだが、それは彼のアイディアだったそう。
「今回はジョージがダンスしたいと言ってくれたのが嬉しかった。何しろ、100%コミットしてくれて、自ら笑いものになるぐらいのショーマンシップを見せてくれたことが、映画のためにもなったの。ただ、常にアドリブを取り入れるかどうかは、映画の種類によるわね。プロットがはっきりしていて、セリフが多いと脚本がしっかり詳細まで書き込まれているから、アドリブ自体取り入れにくいし。でも、監督として私自身は、役者のアイディアを頼りにしているところがあるから、こういう提案は大好きよ」。

共演には、ジョージとの相性が良いジュリア・ロバーツだ。
「彼女は“AMAZING JULIA ROBERTS”なの! 彼女以外にこの役は考えられないぐらい素晴らしいの。ジュリアのキャスティングが決まってから、より役を掘り下げることができ、よりヒロイックなキャラクターにすることができたわ。もともと、2人が演じたキャラクターは強い絆で結ばれている必要があったの。劇中では、実際に一緒に登場するのは冒頭と終りだけ。撮影でも2人が同じ現場で演技をしたのは2日ほどなの。とてもバーチャルな共演だったから、強いケミストリーがなければいけなかったの。だから、2人から生まれるマジックが必要だったのよ」。

大スターである2人が共演しているというだけでなく、幅広い観客が楽しめる良質な社会派娯楽作であるこの作品は、最近ではハリウッドであまり見られなくなったジャンルの映画とも言える。
「そうね。こういうタイプの映画は、もうあまりハリウッドで作られなくなったわね。それは、スタジオが商業的な戦略としてシリーズもの、スーパーヒーローものを多く作っているから。今後はもっと観られなくなるかもしれないわ。でも、インテリジェントでチャレンジングでユニーク、オリジナルな映画を観たい観客が多くいると信じているの。作品を作るとき、観客がそれを観るのが大きいスクリーンか、アイフォーンか、ケーブルかなんて気にしない。私は映画を観てもらえればいいと思っているの。『マネー・モンスター』は一般向けのペースの速いスリラーでもあるけれど、キャラクターの心理描写も丁寧にしたし、意味深い作品だと思うわ。観客に観たいと思ってもらえれば嬉しいけれど」。

本作のモチーフであるお金というものは、人の本性、価値観を如実に見せるものだとつくづく感じられる。社会的成功者として、映画監督として、お金の価値というものをどう感じている?
「今回登場する男性キャラクターは、みな自分の人間としての価値を見いだせずに葛藤しているの。いまの文化では、自分の価値をはかるときに、ものさしとしてお金や知名度を意味深いものとして使っているところがあるわよね。ジョージ演じたリーに関しては、少なくとも冒頭ではそう。確かにお金にはそういう側面はあると思う。アメリカや日本のような先進国で生きていると、自分がどんな人間であるか見えにくくなる。そのときに、最初に自分が勝者なのか敗者なのかをお金や地位、名誉で測りたくなる気持ちは分かるわ。でも私にしてみれば、いままでいろいろな人とふれあってきた経験というものが最も人の価値として重んじられるべきだと思うの。それは、金銭的な財産や仕事、ましてや賞などで測れるものではないわ」。

ショービズ界といえば、知名度やギャランティで重要度が測られがちな世界。そこで人生におけるほぼすべての時間を生きてきた監督が、いったい健全な価値観をどのように育んできたのだろう。
「どうかしら。とにかく、やりたかったことは昔から変わらないの。映画を作るということよ。映画を作るアーティストとして生きることで、地に足を付けていられる。私の場合、小さいときから公の目にさらされる立場だったから、なるべくリアルでありたいと思ったし、リアルであることに目が向くのかもしれないわね。子どもとして、自分の実人生を奪われそうになることが多かっただけに、自分が大切にするもの、矜持の持ち方を自然に身に付けたのかもしれない。これは仕事、これは私の人生というふうに、わけて考えることでそういう感覚を保っているのかもしれないわ」。

先日、ハリウッド・ウォーク・オブ・フェイムにも名前を刻んだ監督。名実ともに、ハリウッドスターとして映画史に名を刻んだわけだ。今後は、女優業との割合はどのようになっていくのか。
「いまは、監督業に専念したいの。27歳で初長編を撮って、それから4本の映画を作ったけれど、決して数としては多くない。もちろん、その間も休んでいたわけではないし、役者としてのキャリアも積んだし、2人の子育てもしているから、とても満足している。でも、監督をするなら100%コミットしなければいけないの。企画と出会って、“さあ、今だ”というタイミングが来たときに、チャンスを逃がしたくない。ただ、これまで50年以上も演技をしてきた自分にとって、演技をすることはほかと比較することはできないぐらい素晴らしいことだから、止めることはないわ」。

監督業にますますの意欲を見せるジョディ・フォスター監督。小さい頃から慣れ親しんできた日本文化が大好きだと話し、いつかこの独特な文化を作品に反映させられたらと考えているとか。その“いつか”も心待ちにしつつ、今後のジョディ・フォスターの活躍に注目したい。
《text:June Makiguchi/photo:Kyoko Akayama》
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