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山田裕貴は“自分”のままに物語に存在する、「その場を彼の空気にする」強みとは?

山田裕貴のことを「そこにいるだけでその場が彼(この場合は村山を指していたが)の空気になる」と言ったのは、映画『HiGH&LOW』シリーズや『HiGH&LOW THE WORST』の監督・久保茂昭である。

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《text:西森路代》

山田裕貴のことを「そこにいるだけでその場が彼(この場合は村山を指していたが)の空気になる」と言ったのは、映画『HiGH&LOW』シリーズや『HiGH&LOW THE WORST』の監督・久保茂昭である。

筆者が彼の存在を意識するようになったのは、五反田団の前田司郎が演出した2016年の舞台「宮本武蔵(完全版)」であった。

山田裕貴が演じることで際立つ役の“人間性”


この舞台の中で山田さんは主人公である宮本武蔵を演じたのだか、この舞台の宮本武蔵は単に剣豪や伝説的なヒーローというものではない。普段は友人たちと普通に日常を楽しむ当時の若者として登場するのだが、時代が時代とはいえ、人を何人も斬るというのは、どういう心理状態、メンタルの持ち主だったのだろうと思わせる出来事がじわじわと示される。そしてそんな日常にひそむ歪な感情と、でもそれは誰にもどうすることもできないという複雑さ。そんな武蔵のことを見守る伊織(金子岳憲)との関係性がせつなくも、温かくも描かれていた。

こう書くとシリアスな展開にみえるが、山田さん演じる武蔵のひょうひょうとした日常があるからこそ、人を斬って生きている武蔵から、どうしようもない強い人間性が際立ってみえた。

山田裕貴『HiGH&LOW THE WORST』/photo:Jumpei Yamada
この舞台に出る前に、山田さんは前田氏のワークショップに参加し、「役半分・自分半分」という考え方を学んだそうだ。思えば、このときから、山田さんはその場を彼の空気にするということに繋がっていたのかもしれない。

『HiGH&LOW』シリーズで大きく飛躍


次に彼の作品で思い出すのは、ドラマ「伊藤くん A to E」での、相田聡子(池田エライザ)と神保実希(夏帆)との間で揺れるクズ男であった。このドラマに登場する男性たち(田中圭、中村倫也、岡田将生)はどの人物もクズだらけなのだが、山田さんはそんな中でも、ある種の男性の甘えの見えるクズをやりきっていたし、そのことで女性たちの心に変化をもたらしていた。

なにより、山田さんの知名度を上げたのは、冒頭でも触れた『HiGH&LOW』シリーズだろう。本作は、事前にプロデューサーや脚本家たちが、ひとりひとりと面談し、その本人から感じ取った印象からキャラクター作りをしたと言われている。また、その上で、撮影現場で出てきた俳優のアイディアが採用されることもあり、自分の役作りがいかされるほか、俳優の持つ個性が引き出され、役がもう一人の別の自分のようになっていく作品でもある。

「HiGH&LOW」season1「HiGH&LOW」season1
この作品では、たくさんの若手俳優が出演し、その存在をアピールしてきた。そんな中でも、特に愛され、大きくなっていったのが、山田さんの演じる村山良樹だろう。『HiGH&LOW』シリーズはそんなスタイルで撮っているからこそ、いまも新たな若手が参加し、ここで存在感を少しでも多く示そうと切磋琢磨し、その結果、次世代を担う若手がどんどん生まれる場所になりつつあるが、そんな空気を作ったのは、山田さんのような前例があったからかもしれない。

“自分”を演じ、物語の中に存在する


2019年は、朝ドラ「なつぞら」に、ヒロインの幼なじみの雪次郎役で出演。しかも、雪次郎は、ヒロインとともに上京した後、岐路に立たされた週は、「雪次郎の乱」と呼ばれるほどの話題となった。山田さん自身も土曜スタジオパークで「シンクロ率100%」「雪次郎の発してるセリフが自分のものかのように思える」と語っていたが、朝ドラがある週では、やはり「彼の物語」になっていた。

山田裕貴オフィシャルブログ「なつぞら」オフショット「山田裕貴オフィシャルブログ」より
昨今の俳優を形容する言葉で「カメレオン俳優」という言葉もある。彼もそう呼ばれることもある。2017年にはたくさんの役を演じたし、その幅が確かに広かったから、その表現ももちろん彼を表すひとつであるとは思う。

しかし、11月の初旬から上演されている舞台「終わりのない」、をみて彼はむしろ、彼の持つ独特の空気のままに、物語の中に存在するタイプであり、そんな強い彼の個性がいま、求められるのではないかと確信した。

そして、この舞台は、まさに彼の物語であった。様々な世界で生き、様々な状態の自分を演じる山田さんが、どこの世界にあっても、山田さんそのものであること、彼であることが重要な物語であり、まさに「その場を彼の空気にする」ことが求められている舞台だと思った。
《text:西森路代》

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