鹿料理のレストラン「ディア・イーター」を営む風祭善(原田芳雄)は、300年の伝統を持つ村歌舞伎の公演を間近に控え、準備に勤しんでいた。そこへ、18年前に駆け落ちで村を離れた能村治(岸部一徳)と善の妻であった風祭貴子(大楠道代)が現れた。貴子は前頭葉に疾患があり、彼女の記憶障害に悩まされている治は、「善ちゃん、どうしようもなくて…返す」と言う始末。変わり果てた元妻を前にして、善は治を何度も殴りつけるが、気が晴れない。結局、駆け落ちしたことすら忘れた貴子を、治と共に店に住まわせることに。そんな中、大鹿歌舞伎は公演日が迫っていた。貴子は、18年前に演じていた役柄のセリフだけはしっかりと記憶していたが、ある日、彼女の記憶が突如として蘇り…。
阪本順治