現代のパリ。自身のアート活動に深くのめり込んだために、前妻スイコを失った日本人パフォーマー・カミムラ(以後、K)は、以前のようにシンバルを使ったパフォーマンスが出来ないでいた。初夏のある午後、Kは公演に使う板ガラスを買うため、パリ13区トルビアックにあるガラス店を訪れ、日本人の女主人・朝子に出会う。同じ日、突然の雨でメトロ構内に入り込んだKが見たのは、大勢の人々の視線にさらされるイタリア人の美しいフリークスの女性・シャルロットだった。そこでKは、シャルロットに「夢の中で逢いましょう」と告げられる。そしてその晩、夢を見た。パリ、ノルマンディ、東京、福島。未来とも終焉ともつかない、心のおもむくままの旅が始まる――。
岩名雅記