赤子は、ある時は女(ひと)、ある時は尾鰭をひらひらさせる、真っ赤な金魚。赤子と老作家は共に暮らし、夜はぴたっと身体をくっつけて寝たりもする。「おじさま、あたいを恋人にして頂戴。短い人生なんだから、愉しいことでいっぱいにするべきよ」「僕もとうとう金魚と寝ることになったか」奇妙な会話を繰り広げる2人は、互いに愛を募らせていく。そんな或る時、老作家への愛を募らせこの世へ蘇った幽霊のゆり子が現れる。作家の芥川龍之介、金魚売りのおじちゃん・辰夫が3人の行方を密かに見守る中、ある事件が起きた…。
石井岳龍