「四十年(よとせ)過ぎ 妻と歩めし 瀬戸の人生(みち) うず潮の道 今ぞなつかし」 どこからか聞こえてくる男性の声…。「やさしさの心って何?」と題された講演。 演台に立つ、白髪の老人・石崎誠吾(升毅)。若年認知症を患った妻・八重子(高橋洋子)の介護を通して、自らが経験したこと、感じたことを語っていく。「妻を介護したのは12年間です。その12年間は、ただただ妻が記憶をなくしていく時間やからちょっと辛かったですいねぇ。でもあるときこう思うたんです。妻は時間を掛けてゆっくりと僕にお別れをしよるんやと。やったら僕も妻が記憶を無くしていくことを、しっかりと僕の思い出にしようかと…。」誠吾の口から、在りし日の妻・八重子との思い出が語られる。かつて音楽の教師だった八重子は、徐々に記憶を無くしつつも、誠吾が歌を口ずさめば笑顔を取り戻すことも…。家族の協力のもと、夫婦の思い出をしっかりと力強く歩んでいく誠吾と八重子。山口県・萩市を舞台に描く、夫婦の純愛と家族の愛情に溢れた12年間の物語。
佐々部清