コラム2008-11-25 17:39

映画、この視点vol.2 ヒロインの視点に寄り添いたい『ロルナの祈り』

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『ロルナの祈り』

ベルギーの巨匠、ジャン=ピエールとリュックのダルデンヌ兄弟が新作を発表するたびに、いつも驚かされます。『イゴールの約束』、『ロゼッタ』、『息子のまなざし』、『ある子供』を始めとする作品が、世界的映画祭で大絶賛を受けてきた彼ら。常に社会的な弱者たちに焦点をあて、現代を鋭く、そして優しく見つめてきました。待望の新作『ロルナの祈り』では、ベルギーでの幸せな生活を求めてアルバニアからやってきた一人の女性・ロルナの視点を通して、ベルギーの移民問題を扱いつつ、人間がもつ深い愛情の在りかを照らし出します。

『ロルナの祈り』

ベルギー国籍を得るために、ロルナが選んだのは偽装結婚という手段。ブローカーに紹介されたのは麻薬中毒者のクローディなのですが、その裏にはある計画が隠されているのです。

ナレーションや無駄なセリフが一切ないのがダルデンヌ流。淡々と語られる物語は、冒頭には戸惑うほど状況が不明。でも、話が進めば進むほどに事情がクリアになっていくという、特殊な臨場感を湛えていくというのが彼らの十八番。戸惑いながらも、彼らの生活の中に入り込んでいき、時にドキドキしたり、はらはらしたり。こうして、物語とともに、観る者の感情も驚くべきクライマックスが待ち構えるラストへと集約されていくのです。

この映画の大きなポイントとなっているのは、観客とロルナとの一体感。彼女は人に何を言われようと、自分が手にした愛を信じ続けようとする強い女性です。この映画を好きになれるかどうかは、彼女の視点にどれほど寄り添えるかどうか。この部分、映画の肝となる話なので詳しくはご紹介できないのですが、自らが信じることとは違う事実を突きつけられたロルナが突き進む道に、なぜか一緒についていってしまう自分に驚く人は多いでしょう。彼女が正しくて、周りが間違っているのだろうという不思議な確信を持ってしまうとでも言いましょうか。衝撃的でありながら美しいラストで、知らず知らずのうちに自分の中に芽生えている不思議な視点を、楽しんでみてください。

『ロルナの祈り』

さて、この映画を楽しむための、もうひとつのお勧め視点がこちら。これまで、音楽を使うことがなかった兄弟ですが、今回は崇高な響きを持ったベートーヴェン最後のピアノソナタ“第32番”の第二楽章アリエッタ。ロルナの愛に満ちた選択と荘厳なベートーヴェン。そのあまりに神聖な両者の結びつきに震えるような美を感じます。ダルデンヌ兄弟の変化も楽しんで。

(text:June Makiguchi

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