秋の夜長、人恋しくなったときに──vol.2 孤独な男の人生で人恋しさに浸る

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『グッド・シェパード』
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めっきり秋らしくなりました。この頃は、ちょっと着るものに困る時期でもありますね。日中は爽やかな秋晴れでも、夜になるとかなり肌寒かったりして。そんな夜は、人恋しさも一段と募ります。そんな寂しさを吹き飛ばすためには、明るいコメディなどがおすすめ。でも、せっかくなので、この感覚にどっぷり浸りたいという方のためにあるのが今月のコラムです。

今週の一作は『グッド・シェパード』。名優ロバート・デ・ニーロが、『ブロンクス物語/愛につつまれた街』以来、13年ぶりに発表した意欲作です。主人公は、CIA(アメリカ中央情報局)の誕生に関わった男、エドワード。新約聖書に出てくる“良い羊飼い”=グッド・シェパードよろしく、羊(アメリカ国民)のためには命を捨てることも辞さない覚悟で、諜報活動に従事するのです。優秀であったがために、大学在学時より軍から白羽の矢を立てられ、第二次世界大戦中にCIAの前身である組織へ参加。当然ながら、主人公の人生は家族にも言えない秘密に溢れたものとなります。

つまりその日を境に、エドワードは一般的な幸せからは隔絶されてしまい、ありえたかもしれない小さい幸福の数々を犠牲にしていくことになります。やがて、妻、一人息子との関係もギクシャクしていき、エドワードの人生は孤独感で占められていくのです。

「いくつ愛を失くせば、この愛を守れるのか」という、この映画のキャッチコピーは、この男の葛藤を見事に言い当てていると言えるでしょう。国を守るという大きな任務を背負い、その栄誉や権力を手にしていても、人間として空虚感を抑えきれないエドワード。でも、心に空洞を抱えているという意味では、彼の妻も同じです。夫がお国のために重要な任務に従事していると知りつつも、心を通わせられない女の寂しさをアンジェリーナ・ジョリーが熱演。男を惑わすファム・ファタール役が板についていた昨今ですが、本作では夫とのすれ違いによりアルコールに溺れていく悲劇的な女性を演じています。この映画の中では、誰もが寂しく孤独。人間は誰しも秘密や孤独を抱えて生きているとは言え、辛い胸の内を誰にも明かせない人生なんて、あまりにも寂しすぎるのです。

それにしても、心に秋風が吹いているような主人公の孤独を体現したマット・デイモンがイイ。偶然にも、違ったタイプの“孤独なスパイ”を演じる『ボーン・アルティメイタム』が今年公開に。豪快なボーンと静かなエドワード。彼が孤独な二人の男をどう演じ分けているか見比べるのも面白いかもしれません。でも、人恋しさに浸りたいあなたには、断然『グッド・シェパード』がお勧めですけれど。

《text:June Makiguchi》

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