少女から大人の世界へ。映画人が「17歳」を愛するワケ、いま注目したい「17歳」

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『ウィンターズ・ボーン』 -(C) 2010 Winter's Bone Productions LLC. All Rights Reserved.
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17歳というと、青春を象徴するお年頃。そのせいか映画でも、この年齢の主人公が少なくありません。ちょっと前になるけれど、ウィノナ・ライダー主演で少女特有の危うさを見事に描いていたのが『17歳のカルテ』。まだ初々しいスカーレット・ヨハンソンとソーラ・バーチの無愛想な様子が妙にリアルな『ゴーストワールド』。最近でも、キャリー・マリガンを主演に17歳を目前にした少女の揺れ動く心を描いた『17歳の肖像』や、愛を知らない少女が新しい人生を見出していく様子を映し出した『プレシャス』など、引きもきりません。

昔17歳だった人々には多少の覚えがあるでしょうが、どこか不安定で焦りやイライラなどを抱えがちな年齢なのは確か。18歳というと、世界的にも大人として認められ始められる年齢ですが、17歳はいつでも子供扱い。育った時代や環境、抱える問題は違っても、子供でもなく大人でもなく、どこかモヤモヤしていて曖昧、それでいて成長著しい面白い年齢なのです。映画人たちもそういう共通点に描き甲斐を見出しているのかもしれませんね。

世界、そして映画界にもいろいろな17歳がいる中で、今注目したいのが映画『ウィンターズ・ボーン』に登場する大人びた少女、リー・ドリー。現代アメリカ社会とは隔絶された山村で、心を病んだ母親と幼い弟妹の世話をしながら、その日暮らしの生活を送っています。ドラッグ・ディーラーの父親は警察に逮捕され、さらに自宅と土地を保釈金の担保にしたまま行方不明に。翌週に行われる裁判に父親が出頭しなければ、家も土地も没収されてしまうという危機にも瀕しているのです。両親が当てにならないために、すべてを背負う17歳。自分だって他の17歳同様に、学び、遊び、恋愛だってしたいはず。でも、家族を守ることができるのは自分だけ。そこでリーは、アメリカにいる多くの17歳が享受するすべてを捨てて、非情な掟が存在する大人社会へと足を踏み入れるのです。

のんびりと恵まれた環境で育つ者には、信じられないリーの日常が、本作では次々に映し出されていきます。単に、貧しいという状況とは違い、犯罪に関わることで生き延びてきた山村が舞台なので、父親探しを始めたリーの行動は、村に存在するさまざまな闇を穿り出していくことに。関わっていく人物もとんでもない荒くれ者ばかり。彼女の捜索を邪魔しようと、妨害工作、いやがらせ、しまいにはリンチまで飛び出す始末。そんな中でも、リーは必死に家族一緒に暮らせる術を手繰り寄せていくのです。

大人が直面したとしても、とても苛酷なリーの状況。17歳といえば、モヤモヤしながら大人への階段のありかを手探りで見つけ、なんとか一段一段登っていき、成長していくという感じですが、リーの場合は明らかに、崖を登らされたという感じ。いや、もしかすると崖から突き落とされたというべきか…。いずれにしても、環境が彼女に子供でいることを許さなかったということなのでしょう。

映画では、冒頭からすでにリーはすっかり大人びているのですが、物語を追うごとに17歳という年齢に大きな意味があるように感じられてきます。大人でも怯むような状況にも正面から向っていくあの無鉄砲さは、いかにも怖いもの知らずの子供らしい姿。彼女にかき回されることで、非情な掟に縛られた村が徐々に変化の兆しを見せるあたりも、17歳の無邪気さの勝利でもあるように感じます。

この作品が面白いのは、経験を積むことで大人になっていく少女を描いたお決まりの成長物語なのではなく、すっかり大人びてしまったかに見える少女の中に、17歳の無垢な心を見出せるところ。はかりごとをせず、まっすぐに突き進んでいく無垢な心は、大人になり計算高くなると失われがち。でも、どんなにすさんだ生活をし、心の荒れた大人たちに汚されそうになっても、彼女にはまだ、若さゆえの強さがある。それは誰にも奪いとることのできない武器なのです。

ただ、気になるのは彼女の今後。父親探しという大きな挑戦を通して得たものも大きいはずですが、そのかわりに大人になることで失う純粋さもあるはずです。それとも、彼女はほかの村人のようにはならず、その純粋さを持ち続けられるのか。今後、リーから失われていくであろう部分にも思いを馳せながら観ると、このドラマが別世界で起きている単なる他人事ではなくなるはず。何かを得ることで別の何かを失っていくというのが人間の成長なのですから、17歳だった自分を思い出しながら、リーの刹那的かつ力強い若さに酔うというのも、この映画のひとつの楽しみ方なのかもしれません。



特集『ウィンターズ・ボーン』
http://www.cinemacafe.net/ad/wintersbone/
《text:June Makiguchi》

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