小栗旬「つまんない自分」をぶっ壊す方法 「一番恥ずかしいことをするしかない」

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『グスコーブドリの伝記』 小栗旬 photo:Naoki Kurozu
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自身が出演した作品を「なんだかんだで10回は観る」という俳優も珍しいが、そこで見返した過去の自身の姿に対し「『つまんないな、この人』と思ってしまった」とピシャリと言い放つ俳優も少ないだろう。現在「自分自身の“構造改革中”」と明かす小栗旬。大ブレイクしたドラマ「花より男子2 リターンズ」が放送されたのは2007年、25歳のとき。その後も、固まりかけたイメージを塗り替えるがごとく、映画で舞台で常に異なる役柄に挑み続け多くのファンを魅了してきた。だがそんな周囲の評価に安住することなく、自らをひたすら冷静に眺め、改革の必要性を感じていたというのだ。まもなく公開の最新作『グスコーブドリの伝記』では、宮沢賢治の同名作品を原作に製作されたアニメーションで主人公に命を吹き込んだ。本作への出演をふり返りつつ、小栗さんが30歳を前に自らに求めた“変化”について聞いた。

「自分を見たときに、『つまんないな』と思った」

本作のメガホンを握ったのは、同じく宮沢賢治の名作「銀河鉄道の夜」の劇場アニメ化('85)で絶賛を浴びた杉井ギサブロー。小栗さんは「僕にとって杉井さんと言えば劇場版『タッチ』。今回、プロモーションのDVDを企画書と一緒にお送りいただいたんですが、その世界観を見て『ぜひやらせてください』と返事をしました」と明かす。当初「厳しい人なんだろうと思っていた」杉井監督は予想とは正反対に驚くほど物腰の柔らかい監督だったという。
「最初にお会いしたときから僕に対して『信用してます』という雰囲気で接してくださったのが印象に残ってます。『僕が描いたブドリは小栗さんの声だったんです』と。僕が映画などで見せているものはある意味、断片的な自分だと思っていたので、会う前から『キミで大丈夫』と感じられるというのはいったい何なんだろう? と考えさせられました。71歳になられますが、いろんな経験があるからこそ、そう言えるのかなと。演出に関してもほとんど細かい指示はなく、何度か試す中で『いまのが好きなのでそれでお願いします』と言ってくださる。自由を感じながらやらせていただきました」。

収録前に改めて80年前に執筆された原作を読んだそうだが、賢治の瑞々しい感性に触れ、大いに刺激されるところがあったようだ。
「賢治の作品を読んで何より感じるのは日本語ってこんなにいろんな使い方があるのか、ということ。例えば、クーボー博士(声:柄本明)が飛行船に乗って飛んでいってしまうくだりで、ブドリが『ほとほとあきれて見る』という表現があってそれが印象に残ってます。見とれて呆気にとられるようなニュアンスで『ほとほとあきれる』という言葉を使っているのがすごく面白い。こういうニュアンスでこんな言葉を使うのかと気づかせてくれるんですね」。

冒頭の自らの“変化”にまつわる言葉は、アニメーションのアフレコ現場で役に入り込むことの難しさについて語る中で出てきたもの。実写作品や舞台では衣裳や小道具、共演者と作り出すシチュエーションのおかげで比較的役に入り込みやすいが、アフレコの現場ではそう簡単にはいかないという。
「基本的に(役になりきるのが)すごく苦手なんです。特に声優は私服で、ギリギリまで素の自分ですから、急にテンション上げるのはすごく苦手で…。でも最近になってやっと、羞恥心のタガを外してすんなりと入っていけるようになりました」。

この“羞恥心”とは、年齢を重ねていく中でいつの間にか身に纏うようになっていたものだという。
「ある時期までは、ただがむしゃらに羞恥心なんて関係なくやってきたと思うんです。でも基本的に昔から恥ずかしがり屋だし、失敗することがすごく嫌いな人なんですよ(笑)。だからある程度の土台みたいなものが出来ていく中で『こういうことはしちゃいけない自分』というのを作ってしまったんでしょうね。そこに甘んじて過ごしていて、ふと傍から自分を見たときに『これ、つまんない。個性がない俳優さんになっちゃったな』と思ったんです」。

「自分が一番したくない恥ずかしいことをするしかない」

そこからの打開策は凄まじいの一言に尽きる。「この“つまらない自分”を壊すのにどうしたらいいか? と考えて、自分が一番したくない恥ずかしいことをするしかないだろう」という結論に至ったそうだ。繰り返しになるが、決して誰かに要求されたことではない。脂の乗り切った人気絶頂とも言える時期にもう一度、自らに向き合い、新しい自分を作り上げていく——それはとてつもない勇気を要することである。
「それはもうすごい勇気要りましたよ。元々、初めてのチャレンジをしたがらないタイプ(苦笑)で、『やってみなよ、楽しいから』と言われても『いや、おれはいいわ』と言う人だから(笑)。最近はそう言われたら必ずやってみるようにしてます。やっぱりもうボチボチ、一通りのことはやって来たと思うし、そろそろ内面を広げていかないといけないなと。もちろん、これまでも全ての作品で一生懸命やってるんですが、昔は0点取ることもあれば100点取ることもあるぐらいの思いでやってた。それが最近は60点から70点の平均点を取るような芝居ばかりしてたと思う。『失敗したくない』と『ある程度やっておけばどうにかなる』というところに落ち着いてたんだなと。それよりもつまんないときもあればすごく面白いときもある役者でありたいという気持ちが湧いてきて『もう一回、自分と会話しよう』って思いました」。

厳しい自然に向き合いつつも理想郷“イーハトーヴ”に思いを馳せた賢治は激動の時代を生きたロマンチストと言える。小栗さんはロマンチスト? そんなこちらの問いに「はい、ロマンチストな方だと思います…具体的にどんなところがっていうのは出てこないけど…」と少し照れくさそうに微笑む。ここまで述べてきた真摯な言葉のひとつひとつがその証拠と言えるだろう。その心の内に潜む甘美な夢想をぜひ映画の中で形にして私たちを楽しませてほしい。

(photo&text:Naoki Kurozu)
《text:cinemacafe.net》

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