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『大奥〜永遠〜』菅野美穂インタビュー 堺雅人とのプラトニックな愛は「美しかった」

女の幸せとは何か? 母になるということはどういうことか? 男性の目線であれこれ勝手なことを考えても大層な答えなど出てこないことは承知しているが、画面の中の菅野美穂の姿を追いかけていると否応なくそんな考えを巡らせてしまう。ドラマ「働きマン」に『パーマネント野ばら』、『ジーン・ワルツ』、そして先日まで放送していたドラマ「結婚しない」然り。まもなく公開となる『大奥〜永遠〜[右衛門佐・綱吉篇]』では男女の役割が逆転した世に君臨する将軍・綱吉に扮したが、ここでも母として、娘として、国を統べる権力者として宿命と欲求の狭間で揺れる女の性(さが)を狂気すら覗かせながら見せつける。

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『大奥 〜永遠〜[右衛門佐・綱吉篇]』菅野美穂/photo:Naoki Kurozu
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  • 『大奥 〜永遠〜[右衛門佐・綱吉篇]』 -(C) 2012男女逆転『大奥[右衛門佐・綱吉編]』製作委員会
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  • 『大奥 〜永遠〜[右衛門佐・綱吉篇]』 -(C) 2012男女逆転『大奥[右衛門佐・綱吉編]』製作委員会
  • 『大奥 〜永遠〜[右衛門佐・綱吉篇]』 -(C) 2012男女逆転『大奥[右衛門佐・綱吉編]』製作委員会
女の幸せとは何か? 母になるということはどういうことか? 男性の目線であれこれ勝手なことを考えても大層な答えなど出てこないことは承知しているが、画面の中の菅野美穂の姿を追いかけていると否応なくそんな考えを巡らせてしまう。ドラマ「働きマン」に『パーマネント野ばら』『ジーン・ワルツ』、そして先日まで放送していたドラマ「結婚しない」然り。まもなく公開となる『大奥〜永遠〜[右衛門佐・綱吉篇]』では男女の役割が逆転した世に君臨する将軍・綱吉に扮したが、ここでも母として、娘として、国を統べる権力者として宿命と欲求の狭間で揺れる女の性(さが)を狂気すら覗かせながら見せつける。

ごく普通の人生の中ではとうてい経験することのできない濃厚な女たちの人生を、役柄を通して生きるというのはどういうことなのか? この小さな体の内に彼女はどれほどの思い、感情、経験を積み重ねてきたのか? 公開を前に話を聞いた。

まずは綱吉という女性について。強さと弱さ、可憐さと妖しさを併せ持つこの女将軍を菅野さんは愛する娘を失った母親という側面から捉えたという。
「最初はボーイズラブの話という印象を持ってたんですが(笑)、そういう描写もあるというだけで原作を読ませていただいたら壮大で本格的で『よしなが(ふみ)先生、天才だな!』と思いました。男女逆転で生まれるはずの難しい部分も男女の業が浮き彫りになることで(歴史の)本流に戻すという作りになっていて。綱吉は天真爛漫で支離滅裂だし、お父さん(桂昌院/西田敏行)との血の繋がりが濃くて、男性に対してすぐ興味を持つくせに薄情で…と、いろんな要素をいっぺんに持っている人。だからこそ危なっかしい魅力を持っていると感じました。その中で子を失った悲しみというのが一番印象に残ったので、それを軸にしようとは思いました」。

だが「どこを見て私にオファーしたのかと思った(笑)」と語るように、自分から遠いと感じるところが多かったこの役柄とあって演じる上では「綱吉を理解しようとは思わなかった」とも。
「親との関係や子を思う気持ちについて女性として共感できても、将軍家の一番上に立つということや大奥で全ての男が私に見てもらいたがってるという状況は想像してもピンと来ないですからね(笑)。理解しようとすれば背伸びが必要になるので。でも、その状況にいる人はそんなこと疑問にさえも思わないと思うんです。だから自分との違いを考えて演技するというよりはなるべく疑問を持たずに、目の前のシーンに集中していけば映画が完成したときに一つの“線”になるかな? という気持ちでした」。

行列を従えて美男たちがひざまずく大奥へと続く御鈴廊下をきらびやかな打掛を羽織って練り歩く姿は、まさに権力と自らを一体化させた強く輝く女性。演じていてなかなか気持ちよいものだったのでは? 一方で信頼する家臣の夫を寝取り、真夜中の廊下を白い寝間着姿でさまよい歩くさまは妖艶で何とも言えぬ迫力を放っている。
「大奥の廊下を歩くのはきっと気持ちいいんだろうなと思ってたんですが、意外と楽しめない自分がいて『あれ?』っと思ってました(苦笑)。作りが大変で夜中の2時に始まって朝の10時にやっと完成という感じだったので、その日のシーンが全部撮りきれるか心配になって意外に委縮してビビってましたね(笑)。人生で絶対に起こらないことなのでいい経験でした。(夜中のシーンは)原作でも『お前は父に似ておるな』と言う姿は、静かだけど狂気を孕んでいる綱吉の象徴のような気がしました。家臣の夫を寝取って、それに飽きてその息子までって…ちょっとひどいですが(笑)、目の前の興味に素直になり過ぎているがゆえの狂気を感じました」。

インタビューの最中、菅野さんの口からはたびたび「女の業」という言葉が発せられたが、この女将軍・綱吉の人生を通して菅野さんの胸の中に強く突き刺さったのは、堺雅人演じる右衛門佐との間の「プラトニックな愛」だった。
「人生で経験するであろうひと通りのことを経験した上での最後のプラトニックと言いますか。ほかの男たちとは世継ぎ目当ての恋愛だったけど、右衛門佐とはそこが違って…でも互いの立場もあって言い出せなくて。将軍という一つしかない席に座って何でも思い通りになるはずの彼女も手の届くものでは満たされずに、何を本当は欲しがっているのか分かってなかったと思うんです。でも、やっと右衛門佐と心を通じ合せたときに『(本当に欲しかったのは)心から添い遂げられる人だったんだ』と分かった。でも、プラトニックな愛が一番カロリーを使うと思うんですよ。それを人生が下り坂に入ってから分かるというのは哀しいかもしれないけど、ハチャメチャに生きた綱吉だからこそ美しいなと思えました。幸せかどうかは…どう取るかによりますが(笑)、それでも2人の“夕暮れの恋”は美しいと思います」。

相手役の堺さんとは初共演だったが、現場での堺さんの姿から受け取った刺激や自分自身を顧みて感じたことも多かったよう。
「堺さんはご自分で研究して役作りをなさってて、監督に自分から提案されたりするんです。研究が進み過ぎて鎌倉時代の小説とか読んでましたね(笑)。私が見て思ったのは、堺さんは学者タイプというか、論文をまとめるかのように研究していく役者さんなんですね。私はスポーツ選手のようなタイプで、監督がコーチなんです。言われたことをやるという感じで言われたことに疑いを持たずにやってるんですね。監督は実際にモニターを見て『こうした方がいい』と言ってくださるので、自分の感覚や内側の目で『ん?』と疑問に思っても監督の目の方が正しいことが多いんですよ」。

先述の“プラトニックな愛”など作品を通じて感じたことは少し時間を置いた後で自身の内側にジワジワと染み込んでくることが多いとか。菅野さんはそれを「あと役作り(笑)」と表現する。
「スイッチを押すようにカチッとではなく、ちょっとずつちょっとずつ役柄に影響された上でのいまの自分なんだろうなと思ってます。だから5年後の40代になってからの方が綱吉の気持ちをよく分かってるかもしれないですね。『ジーン・ワルツ』のこともいまになって思い出すんですよ。あのときも30代だったし十分に身近ではあったんですが、少し年を重ねたいまになってドラマのこともあったりして余計に思い出します。そういう意味では完全に自分のためだけの“あと役作り”ですね(笑)」。

「自分のためだけ」と言いつつも、それをしっかりと現在の仕事に反映させてしまうところが彼女の名女優たる所以である。今回、宿命と葛藤の果てに辿り着いた真実の愛の感情が数年後にどのような化学変化を彼女にもたらすのか楽しみだ。

《photo / text:Naoki Kurozu》

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