阿部サダヲ×菅野美穂、「家族」を語る 大切なのは“ちゃんと愛してる”を伝えること

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阿部サダヲ、菅野美穂『奇跡のリンゴ』/Photo:Manna Kikuta
  • 阿部サダヲ、菅野美穂『奇跡のリンゴ』/Photo:Manna Kikuta
  • 菅野美穂『奇跡のリンゴ』/Photo:Manna Kikuta
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  • 阿部サダヲ『奇跡のリンゴ』/Photo:Manna Kikuta
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  • 『奇跡のリンゴ』 -(C) 2013「奇跡のリンゴ」製作委員会
  • 『奇跡のリンゴ』 -(C) 2013「奇跡のリンゴ」製作委員会
なぜ彼が作ったリンゴは“奇跡”と呼ばれたのか…。リンゴを実らせるためには、年に十数回も農薬や肥料をやり、気が遠くなるほどの手間と時間を要する。しかし、2006年にNHKの番組「プロフェッショナルの流儀」で紹介された、青森のリンゴ農家・木村秋則さんが長い年月をかけて栽培に成功したリンゴは、ほかのリンゴと違い、無農薬で作られているにも関わらず甘くて美味しい。“神の領域”とまで言われ、誰しもが実現不可能だと思っていた無農薬での栽培に、世界で初めて成功したからこそ、木村さんのリンゴは“奇跡のリンゴ”と呼ばれているのだ。

しかし栽培の成功に至るまでには、リンゴ栽培に翻弄され、続けるも地獄、辞めるも地獄という辛苦を味わう。それでも諦めることなく木村秋則さんと彼をただひたすら影から支え続けた妻・美栄子さん。そんな実話を基に描かれた映画『奇跡のリンゴ』で夫婦役を演じた阿部サダヲと菅野美穂のおふたりに、リンゴにまつわる本作の魅力について話を聞いた。

「僕、リンゴに特別な思い入れがあったわけじゃないんですけどね」と苦笑交じりに口を開いてくれた阿部さん。「無農薬というものにも詳しくなかったので、木村さんのことを知ったときには『リンゴを育てるのはこんなにも難しいことなんだ、これほどの苦労の上に作られているんだ!』って本当に驚きました」と作品と出会ったときに受けた素直な印象を教えてくれた。

木村さんご本人を前に、演じる上でもいつもの演技とは違う難しさにもぶつかったようで、「演じる前は、自分が木村さんを演じることをどう思われているかなって緊張してました。でも実際の秋則さんはすごくニコニコしながら現場にいらして、僕のこと『秋則さん、秋則さん』て呼んでくれて。打ち解けやすい人柄で、チャーミングな方なんですよ」と撮影前の心配が杞憂に終わったとホッとした笑顔。

その明るく朗らかな木村さんがドン底の人生を過ごす過程を演じるとあって、演じる上で考えさせられるところもあったよう。
「木村さんも仰っていましたが、リンゴを栽培している途中で、“もう諦めたほうがいいんじゃないか…”という自分と、“まだやる!”という自分が心の中に出てきた。木村さんは若い頃から怖いもの知らずで色々改造したり、作ったりしてきてる天才だから、そんなことはきっといままで想像もできなかったこと。また失敗するんじゃないか? という怖さ、弱い部分が出てきたときを僕が演じるんだな…」と今回のモデルのなった木村さんの人生の苦悩の部分こそが、今回自分に課せられた試練だったと語る。

一方で菅野さんは、木村さんのドキュメンタリー番組や本でも大きく取り上げられてはいない、いわば陰の功労者である妻・美栄子を演じている。劇中でも、言葉で気持ちを表すのではなく、ただじっと秋則を見守り続ける難しいこの役を、どのように作っていったか。「今回は弘前で1か月半、合宿のような撮影で、じっくりとゆっくりと撮影が進んでいったのが良かったと思います。撮影の合間に近くの公民館で『カメムシいるね~』なんて、何気ない会話をしていたものの積み重ねというか…」と撮影時を懐かしむような顔つき。

「木村さんという天才の怒涛の人生を阿部さんが体現されて、私はその隣で見守っている。私は両親が岩手県出身で、雪深い地方の方々の、忍耐強さと、すぐにカリカリするんじゃなくて、半分受け止めて半分受け流すようなおおらかさに胸を打たれました」と東北人の心の器の大きさというものを、演じる上で心がけていたと話す。

「美栄子はセリフがなくても旦那さんが苦しんでいるのを“見ている”のが多かったので、旦那さんの苦悩も自分の苦悩として受け止めている人なんだなと感じながら演じていました。辛いときに『大丈夫だよ!』と言う方がよっぽど自分は楽だけど、それは逆に旦那さんを追い込むことになるっていうことを分かった上での沈黙、寡黙さなんですよね」。
見守る側の苦しさ、大変さについて語る菅野さんの言葉を受け、阿部さんも「奥さんは一回も秋則を拒絶するような顔をするときがないんですよ。一つだけ、ねぷた祭りのシーンで『少しは笑ってよ。お祭りなんだもの』っていうときくらいですね。でもそれって別に怒ってるわけじゃなくて、悲しみなんです。夫を睨むようなグッとした強い目つきとかしないんです。それがすごくいいんだよなぁ」としみじみ。

言葉でなじり合ったりぶつかり合うのではなく、寡黙に支えてくれる家族との信頼関係。それは強い絆で結ばれていなければ成り立たない関係。そんな木村家の家族関係について質問すると、阿部さんは言葉に力を込めて語る。
「旦那さんが無茶なことしていて、奥さんは苦労しているのに文句を言わない、だから子どもが親のことを信じているんですよね。もし奥さんが“何やってんだあいつは”って口にしていたらそういう風には育たない。井戸端会議して愚痴を言ってストレス解消! ってしちゃうのもいいけれど、こうぐっとこらえるっていうのも大事なんじゃないかと。でもそれが成り立つのって、旦那さんが奥さんのことを好きだからなんですよね。それを知っているから耐えられるという。だから一番気をつけなきゃいけないのは奥さんに“ちゃんと愛している”っていうことを分かってもらっていることですよね」。

夫と妻の、静かだが固く結ばれた愛情は、言葉がなくても子どもたちにもちゃんと伝わる。そんな家族関係があったからこそ、木村家は無農薬リンゴを作るという一つの大きな夢に向かって、足を揃えて歩んでゆくことができたのだろう。これが実話だからこそ、ひたむきにただ真っ直ぐにリンゴと向かい合い続けるひとりの男をスクリーンで目の当たりにしたとき、彼と彼を支え続けた、家族の姿に胸を打たれることだろう。
《photo:Manna Kikuta/text:Yurika Matsuno》

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