【インタビュー】『黒執事』水嶋ヒロ 「完璧」の中でもがく…自らに課した「ハードル」

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水嶋ヒロ(セバスチャン役)/映画『黒執事』
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  • 『黒執事』-(C) 2014 枢やな/スクウェアエニックス -(C) 2014 映画「黒執事」製作委員会 (C)Yana Toboso/SQUARE ENIX
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「ベストを尽くす」――。

たった7文字の言葉だけれど、本当にそれをやってのけることは難しい。特に演じるという答えのないものに対しては尚のこと難しいはずだ。水嶋ヒロさんが「この役をやる上でできる限りのことをやった。それをやらずに現場に立つことはできなかった」とベストを尽くし愛情を注ぐのは、映画『黒執事』。約3年ぶりにスクリーンに映し出される水嶋ヒロには主演俳優だけではないもうひとつの顔があった。

「実は一度は出演のオファーをお断りしているんです」。理由の一つは、過去に執事を演じたことがあるから。ドラマ「メイちゃんの執事」で演じた執事の印象が強い、それが彼の頭をよぎった。

「理由はさまざまあったんですけれど、またこの手の役かというのもありました。でも、出演する側ではなく作る側として一緒に『黒執事』の企画を練り上げていかないか? という話をもらって…。純粋にそれは面白そうだなと思い、スタッフとしてならやってみたいと返事をしたんです」。

製作サイドとして作品に関わったことで水嶋さんの中で変化が生まれ、「セバスチャン(黒執事)を演じられるのは水嶋ヒロしかいない」というプロデューサーの想いに応えることになる。しかし、製作として関わったからこそ演じたくなったと同時に、製作として関わったからこそとことん役を追求しないと「申し訳ない」──自分に課せるハードルはより高くなった。けれど、それを飛び越えてしまうのが水嶋さんの凄いところだ。

要した月日は、脚本作りに1年半、役作りに半年、そのうちの4か月はアクションも同時進行だった。映画の冒頭のアクションシーンを観れば、その完璧さがどれほどのものであるか一目瞭然。執事としても、役者としても、完璧。完璧な男のイメージがより強くなった。そんな「完璧」という言葉に「ホントですか…失敗しましたね」と苦笑いしてみせる。謙虚さも彼らしさだ。

「器用にできる人もいると思うんです。でも、僕はじっくりひとつのことに関わりたいし、こういうプロモーションの間にほかの作品(撮影)を入れることもしたくない。もちろん、いままでは勢いでやっていたこともあります。役作りは1週間でというのはざらで、1日2日しかないことも、作品が重なっていることもありました。そんなせわしない毎日を送っていく中で自分を見失いそうになるというか、『あれ、オレってこんなんだったっけ?』と思う瞬間があったり、人に優しくなれなくなっていたり…。自分本位にならないとこなせないスケジュールだった。それが一番つらかった。だから、こうしてみなさんに映画を届けられるまで集中することは自分のスタイルに合っている、いまはそう思うんですよね」と、かつての自分の影を見つめる。

けれど、そういう過去があるからこそ「じっくりと一つのこと(作品)に向き合いたい」と気づくきっかけになったわけで。そこには以前の多忙とは別の多忙──面白さというこの上ない醍醐味を併せ持った、製作としての多忙さが待っていた。

「面白さで言えば、自分が“いい”と思うことを反映していけること、自分が深く関われたと実感を持てることですね。大変だったのは、何だかんだいまに至るまでに2年半近くこれだけに費やしてきていること。やっぱり2年半は長い、ですね(苦笑)。1本の映画を作る大変さを身に染みて感じた時間でした」。

水嶋さんが反映させたかったことのひとつは、単なるエンターテインメント映画、単なるアクション映画として終わらせないこと。アクションもサスペンスも活かしながら「ちゃんと人間ドラマを描きたい」という願いは、自身の演じた悪魔である執事の“セバスチャン”をしっかり描くことで叶えられた。

「悪魔がいることで人間の本質とは何かを答えとして出せる気がしたんです。人間とはこういうものなんだといくら言っても説得力がない、けれどそばに悪魔がいることで浮き彫りになる。セバスチャンの存在によって最後の清玄(=汐璃/剛力彩芽)のセリフが入ってくるんです。『黒執事』だからこそできるフタの閉じ方と、黒執事だからこそできる人間とは何だというメッセージ、それを描くことでいままでにない作品になるんじゃないかなって。僕が一番こだわったことですね」。

ある理由で男として生きる決意をし、悪魔(セバスチャン)と取引をした清玄(汐璃)の宿命がたまらなく切なく、さらに「2人の心が近づいていくほど切なくなっていくっていうのもまた深いんです」と語るように、2人はいったいどうなるの? と匂わせつつも人間愛に泣かせられる。ありきたりではないストーリー展開もいい。

「僕はまったく恋愛にするつもりはなくて、そこは頑なに拒みました。セバスチャンと清玄の関係性が絶妙なバランスなのに、それを恋愛にもっていくと先が見えてしまう気がしたんです。女性が男装して生きる悲しい宿命とその健気さ、その救いは唯一信頼できる存在(悪魔)がそばにいること。でも、信じられる存在ではあるけれど、清玄は目的を果たしたところで自分はこの世から消えることを覚悟している…その絶妙な関係性がこのストーリーの軸。なので、後半にある口移しは最後まで反対していたんですが、説得させられて折れました(笑)」。

観客、特に原作ファンがどう捉えるのかが「心配です」と深刻な表情を浮かべる。それも水嶋さんの“完璧”を求める性格ゆえ? 

「何をもって完璧かは人それぞれだと思うので、僕が求める完璧がほかの人から見てどの程度なのかは分からないけれど、一生懸命に妥協せずにやりたい、という思いは強いです。仕事に対しては特に」。

では、仕事以外は?

「ほかはもう…(笑)。だって、ほかでも完璧を目指すような奴だったら、僕と一緒にいる人たちはしんどいですよね(笑)。むしろ、芸能活動をしている“水嶋ヒロ”と戦っている、齋藤智裕(=本名の自分)がいます。僕、実は脆いんです。それでも崩れずに立っていられるのは、自分を支えてくれるファンだったり、仲間や家族がいる帰る場所、自分の居場所があるからだと思ってる。若いときは主演俳優になりたいとか具体的な目標があって、“水嶋ヒロ”としての自分を大切にしていたけれど、いまはその頃とは違う生き方をしています」。

一つ一つ言葉を選びながら丁寧に自分の心の内を伝えようとする。その中でつぶやいた今後の水嶋さんの生き方は、自分自身と向き合うことだった。

「より自分の本質を探りたくなっているんです。本質の部分と寄り添いながら作品を作ってみたい。たとえば、子どもの頃に抱いていたけれどいつのまにかなくなってしまったものってあるじゃないですか。そういう気持ちを掘り起こして何か(作品を)作ったらどうなるんだろうって、そんな気がしているんですよね」。

まだ固まっていないものを言葉として残したくない、という意味合いを含んだ「作ったものが表に出るかどうかは分からないですよ(笑)」。その言葉もやはり彼らしい。その“何か”が形になる日が訪れることを密やかに待ちつつ、『黒執事』という渾身作を通して現在の水嶋ヒロの素晴らしさを、目で、耳で、そして心で感じてほしい。
《text:Rie Shintani》

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