【シネマモード】肝の据わった金髪美人妻に脱帽!? ゴージャスな人生から転落まで

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『クィーン・オブ・ベルサイユ 大富豪の華麗なる転落』-(C) 2012 Queen of Versailles, LLC. All rights reserved.
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カメラの前で、満面の笑みをたたえてポーズをとっている派手なファッションの金髪美女。彼女はジャッキー・シーゲル。元ミセス・フロリダです。その横にいる老人は、彼女の夫。彼が「ウォルマートのお客さん」と呼ぶ、いわゆる一般庶民にリゾートマンションの共同所有権=タイムシェア権を売る(売りつける?)ビジネスで、無一文から大富豪に成りあがったアメリカン・ドリームの体現者、デヴィッド・シーゲルです。

2人のポートレイトは、いかにも成金的な香りを漂わせています。お金持ちの老人と、玉の輿に乗った年の離れた若い妻。センスが良いとは言えないけれど、お金はあることがよく分かるファッションに身を包んだ美しい妻は、夫にとってステイタスシンボルでもあるわけで、あまりにも分かりやすすぎる2人です。

当時の彼らは、全米でわずか1%しかいないという富裕層に属していました。監督が初めて会ったとき、2人はフロリダに総工費100億円、約8,500平米のアメリカ最大の個人宅を建設中。当時、夫婦の総資産は1,800億円。ところが、2008年のリーマンショックに端を発した財政危機により、数週間で1,200億円の借金を抱える身となり、もうちょっとでできあがる新居も売るはめになったのです。

もともと、数少ない生粋のアメリカン・ドリーム体現者を記録するドキュメンタリーとして企画された本作。運命のいたずらによって、小説家すら思いつかないような転落劇を間近に映し出す貴重な記録映画になりました。もともとは、桁外れな金銭感覚や、贅沢三昧の日々、成金趣味などを通して描かれる、あまりにゴージャスすぎる成功者の物語を、観客たちはちょっと冷ややかな、羨望と軽蔑が入り混じったような目で見つめるはずだったのでしょう。観客たちの感情を後押しする鍵となる予定だったのが、タイトルにもある“ベルサイユ”。フランスにあるベルサイユ宮殿を模したという全米一大きな個人住宅になるはずだった新居のことです。それが、皮肉にも転落の大きさを象徴するものとなりました。

もしそれが完成し、2人がそこで富にまみれて暮らす様子が映し出されていたとしたら、いまほど面白い作品になったかどうか。「他人の不幸は蜜の味」だからという意味ではありません。苦境にあるときほど、人間の本性が見えるものだから。何と言っても “財政危機”をきっかけに露呈しはじめたシーゲル夫婦の素顔、本性というのが、この作品を味わい深いものにしているのです。

偶然が生んだ産物といえるかもしれない本作ですが、この家族を題材に決めた監督が持つ、嗅覚の鋭さになしには驚くばかり。報道写真や、ドキュメンタリー映像で決定的瞬間をとらえる秘訣は、まず技術よりも何よりも、その場にいるということ。カメラは、そんな事態になったからこそ見えてくる、意外に謙虚な夫婦の姿をしっかりと捉えています。特に、ジャッキーは予想外にしっかりとした人生観をのぞかせるのです。自分が“こういう女性は、きっとこういう人物のはず”、という先入観を持っていたことに気づかされ、恥ずかしくなったほど。

夫が巨万の富を失っても、決して恨み言を言わず、悪態をつくわけでもありません。イラついた様子も見せる夫の傍で、ジャッキーはさほど動揺も見せず。桁外れの浪費癖がなおらず、借金を抱えていても相変わらず派手で露出度の高い服を着ているのはご愛嬌。どんな状況下でも、ファッションを変えないのが女の意地なのかもしれませんね。

高いところから落下すればするほど、衝撃は大きくなるもの。観ている側は、その振れ幅の大きさに驚くのですが、当の本人たちは、悔しそうではありながらも、不思議なほど落ち着いています。あまりに負債が巨額だからでしょうか。とはいえ、「人生ってそういうものよ」的な態度でいる金髪美人妻の様子に、自分だったらあんな風には思えないだろうな、肝の据わった様子に敬意さえ生まれました。

それに比べ、夫はちょっとちっちゃい。女は強し、です。本作は2012年撮影の作品ですから、この夫婦はいま、いったいどうなっているのか気になるところ。そんなことに興味を抱きながら、ある億万長者が見せてくれた、現代アメリカの姿をとくとご覧くださいませ。
《text:June Makiguchi》

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