【インタビュー】鈴木亮平<後編> 緻密に、本能のままに、カッコ悪く!

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鈴木亮平(メラ役)『TOKYO TRIBE』/Photo:Naoki Kurozu
  • 鈴木亮平(メラ役)『TOKYO TRIBE』/Photo:Naoki Kurozu
  • 鈴木亮平(メラ役)/『TOKYO TRIBE』-(C) 2014INOUE SANTA/TOKYO TRIBE FILM
  • 『TOKYO TRIBE』ギラギラポスター/(C) 2014INOUE SANTA/TOKYO TRIBE FILM
  • 鈴木亮平(メラ役)『TOKYO TRIBE』/Photo:Naoki Kurozu
  • 鈴木亮平(メラ役)VS YOUNG DAIS(海役)/『TOKYO TRIBE』-(C) 2014INOUE SANTA/TOKYO TRIBE FILM
  • 園子温(監督)/鈴木亮平(メラ役)VS YOUNG DAIS(海役)/『TOKYO TRIBE』-(C) 2014INOUE SANTA/TOKYO TRIBE FILM
  • 鈴木亮平(メラ役)『TOKYO TRIBE』/Photo:Naoki Kurozu
  • 鈴木亮平(メラ役)/『TOKYO TRIBE』-(C) 2014INOUE SANTA/TOKYO TRIBE FILM PARTNERS
今後、演じてみたい役柄は? という問いに、鈴木亮平は「いっぱいありますね…」と前置きの一拍を挟み、「実は、子どもの頃からずっと『シティーハンター』の冴羽りょうを演じてたいと思ってるんです」と少しだけハニかむような笑みを浮かべて明かした。

そもそも、俳優へのこうした質問に対し、返ってくるのは抽象的な答えがほとんどで、あとは「○○さんのような…」と憧れの先輩俳優の名が挙がることも多く、具体的な漫画の登場人物の名前が挙がることなどめったにない。しかも、冴羽と言えば、彼の世代にとっては十二分に“伝説”と言えるキャラクター。ちなみに、過去に製作された唯一の公認実写映画でその役を演じたのはジャッキー・チェンである。

大言壮語? いや、この男ならやりそうな気がする。『TOKYO TRIBE』で原作を踏襲しつつもラップという映画ならではの要素を取り入れて、彼が作り上げた主人公・メラを見れば、子どもの頃からの夢が単なる“夢想”にとどまらない“目標”であることが分かるはずだ。『TOKYO TRIBE』公開記念ロングインタビュー【後編】!

インタビューの【前編】で語った、演じる役柄の劇中では語られることのない人生の軌跡や岐路にまで思いを巡らせ、それに沿って行動パターンまでをも積み上げていく緻密な内面の役作りに加え、フィジカル(=身体能力)も鈴木さんの大きな武器であり魅力である。今回、トーキョーの一大勢力である「ブクロWU-RONZ」の武闘派のリーダーを演じた撮影時には、この取材の時よりも優に10キロ分は筋肉が付いていたという。

「(トレーニングは)ジムですね。撮影に入ってからは、セットを組んでいるパイプで懸垂したりして、筋肉が落ちないように気を付けてました。キャストの中に本物のラッパーで、すごい筋トレ好きのYoung Hastle(ヤング ハッスル)という男がいて、一緒に腕立てやったり(笑)。ちなみにヤツの代表曲は『Workout』という曲で『やっぱりササミはヤバい』と『筋(スジ)はキレイにとりたい』が韻を踏んでて、名曲です! 『HK/変態仮面』の時とは違って、筋肉の上に少し脂肪を乗せる“不良”の体を目指しました」。

外見という点では、本作の公開を前に出されたニュースの中には、劇中の鈴木さんの“黒Tバック”姿を扱ったものも! 鈴木亮平の黒Tバック――それ自体がすでに映画館に足を運ぶ理由となりうるのだ。

「脚本のト書きに『Tバックで入ってくるメラ』とだけあって、すごくハードル高くてプレッシャーでした(笑)。Tバックでも強いメラに見えないといけないわけですから。だからこそ、(体作りで)なるべく大きなプロレスラーのような体型を目指しましたね。最初の顔合わせを兼ねた衣裳合わせの時、当然、その場で初めてお会いする方が30~40人いたわけですけど、衣裳としてTバックが3つ置いてあるんです。じゃあどれにしようか? と話し合うんですが当然、決まらなくて『じゃあ、着てみますよ』となるわけです。初めてお会いする女性スタッフもいる中でTバックを穿いて、『これ、どうでしょう?』と出ていく…向こうの方が恥ずかしいですよね、きっと(苦笑)。そもそも、あのシーンでなぜメラがTバックで入ってくるのかも分からない! 一切、ツッコまないし、ツッコむ方が野暮と思わせる園子温監督の勢いですね」。

さらにさらに、映画版ならではの大きなチャレンジとなったのがラップ。実際の劇中のラップは全て、アフレコではなく現場で収録したものであり、そもそもラップのリリック(歌詞)を作る作業にも携わり、プロのラッパーと意見を交わし、相談しながら作り上げていったという。

「(内容が)決まったら、後は一人でいる時はひたすら口ずさんでました。かなり怖い光景だったと思いますよ(笑)。電車や飛行機で金髪の、プロレスラーみたいな体型の男がラップを口ずさんでるんですから。現場で歌ってみると、自分の歌声でトラックが聞こえなくなって合わなくなったり、感情が高ぶって何言ってるのか分からなくなる部分もあったんですが、園さんは『キレイにしなくていい』と。『ズレているのがカッコいいんだから。“ボブ・ディラン”ラップだ』って仰ってました(笑)。僕自身、音がズレていないカッコいいものへの憧れはあったんですが、園さんは一貫して『新しいカッコよさを作りたい』と仰っていて、それは面白いなと思いました。確かにカッコよくあろうとして作ったものって、結局はその時代にしか、いや、その時代でさえもカッコ悪かったりする。この映画は、30年後に見ても、なんかよく分からないカッコよさがあるのを感じます」。

カッコよくあろうと「整える」ということをせず、愚直に生真面目に突き詰めていく。それは本作に限らず彼が出演する多くの作品から感じられることかもしれない。数年前、「週刊少年ジャンプ」(集英社刊)で異彩を放った「究極!!変態仮面」の映画化が発表された時、多くの人々が驚いた。当時、映画界ではともかく一般には知名度の低かった鈴木さん主演で映画が公開されると、観客はもう一度驚き、その鍛え上げられた肉体をはじめ、とことんまで突き詰めて作り上げられたキャラクター、その“変態”ぶりに喝采を浴びせた。

それからさらに1年が過ぎ、鈴木亮平は「花子とアン」で優しく温かく主人公・花子(吉高由里子)を支える夫として、お茶の間でも知らぬ者のいない存在になった。鈴木さん自身「芝居でやっていることは、『ふたたび SWING ME AGAIN』(※鈴木さんの初主演作)でもご指導いただいた、塩屋俊監督(故人)に昔、演技の学校で教えていただいたことをいまでも変わらずにやっているだけ。昔から全く変わってないです」と語りつつ、ここ数年の内に生じた“考え方”の変化についてこう語る。

「以前は良い役者だと思われたがっていたし、自分で自分を良い役者だと信じてやってきたけど、だんだん、自分に出来ないことや苦手なことが分かってきて、自分よりも遥かに上手い俳優がいっぱいいると分かった時から、演じることが楽しくなってきたんですよね。自分なりに出せる色で不器用なりに勝負すればいいやと思えて、変にカッコつける必要もなくなりました。現場でも『ナメんなよ』的な姿勢もなくなって(笑)、その分、監督とすごくコミュニケーションが取れるようになって、余計なことを考えずに真摯に向き合えるようになったし、それはすごく大きかったと思います。年齢のおかげですかね? 出来ないことが見えてくると『出来ないかもしれないけど、一生懸命トライします』と言える“自信”のようなものも付いてくるし『逆にこれは出来ますよ』とも言えるんです」。
先ほどの『変態仮面』にしても本作にしても、内面的な部分――いわば“静”の部分に関しても緻密に練り上げ、作り上げているにもかかわらず、どうしても分かりやすいフィジカル(肉体)の部分ばかりが注目されることも多い。その点に葛藤は? そんな問いを鈴木さんは一笑に付す。

「俳優ってフィジカルなことも内面的なことも一緒だと思うんですよ。全てで自分というひとつの“楽器”なんです。だから、フィジカルで注目されることは、自分という役者の個性に注目していただけているということなので、嫌な気持ちや迷いはないですね。“演技派俳優”と思われたいという欲もなくなってきましたし(笑)、自分は自分なりのやり方でやっていけばいいかなと。まあただ、こういう取材で質問が筋トレの話ばかりになると、ちょっとあれですけどね…(笑)」。

まさに「心・技・体」の絶妙なバランスの上に、役柄が築かれていることが分かる。そして、現場では共演者とのやりとりや空気の中で感覚的な部分や本能が引き出されることも…。

「現場ではそれが一番大事なことだし、それを感じたときは、最重要視して身を任せるようにしています。僕はそれを『衝動』と呼んでいますが、相手と対峙した時、いままでの準備を忘れるってことがすごく大事な気がするんです。向き合った時にお互いに影響を受けるものというのは一番の真実だと思うので。ただ、それに甘んじて準備していかないと、またそれも違うんですよ(苦笑)。“何となく”な芝居になってしまうんです。一時期、そっちの芝居に傾いたこともあったし、その時は『これが芝居だ』『これが気持ちいい』と思ってたんですけど、やはりそんな簡単なものじゃないですね(笑)」。

役者の道はなかなかに険しい。それでも、歩き続ける価値があるし、何より楽しい。劇中とは打って変わった何とも優しい笑顔がそう語っている。

【前編】狂気のマッチョから朝ドラまで華麗に演じ分ける男の流儀
《photo / text:Naoki Kurozu》

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