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【インタビュー】シャルロット・ゲンズブール 激情型“コメディエンヌ”で新境地

傷つきやすさと芯の強さ、慎み深さと大胆さ。相反する要素が常に反転し続け、複雑な魅力を放つシャルロット・ゲンズブール。

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シャルロット・ゲンズブール/『サンバ』(c) Quad - Ten Films - Gaumont - TF1 Films Productions - Korokoro
シャルロット・ゲンズブール/『サンバ』(c) Quad - Ten Films - Gaumont - TF1 Films Productions - Korokoro
  • シャルロット・ゲンズブール/『サンバ』(c) Quad - Ten Films - Gaumont - TF1 Films Productions - Korokoro
  • 『サンバ』ポスター(c) Quad - Ten Films - Gaumont - TF1 Films Productions - Korokoro
  • 『サンバ』/(C) Quad - Ten Films - Gaumont - TF1 Films Productions - Korokoro
  • 『サンバ』(c) Quad - Ten Films - Gaumont - TF1 Films Productions - Korokoro
傷つきやすさと芯の強さ、慎み深さと大胆さ。相反する要素が常に反転し続け、複雑な魅力を放つシャルロット・ゲンズブール。

ここ数年は『アンチクライスト』や『ニンフォマニアック』など、ラース・フォン=トリアー監督の作品で身も心も投げ出すような熱演を見せてきた彼女の新作は『サンバ』。大ヒット作『最強のふたり』のエリック・トレダノ&オリヴィエ・ナカシュ監督、主演のオマール・シーのトリオが再結集し、ビザの失効で国外退去を命じられた青年・サンバと彼をサポートする移民支援協会の女性・アリスの交流を描く社会派コメディだ。

シャルロットが演じるのは、“燃え尽き症候群”で休職中のエリート女性・アリス。情緒不安定でキレやすいけれど、憎めない。微笑ましさと共感を抱かせる女性像を演じたシャルロットは「もう1度コメディをやってみたいと思っていたから」と出演を決めた理由を語る。「オマールと共演してみて、すごくラッキーだったと思ったわ。結果にも満足しているし、とても楽しかった」。

コメディといっても、主人公2人に身分の差が介在した『最強のふたり』と同じく、『サンバ』にも“移民問題”という現在のフランスを語るうえで避けて通れないテーマを扱っている。

「理解を深めたとまでは言えないけれど、今回改めて“移民問題”について考えさせられたし、強いものも感じたわ。撮影前に、移民の人たちと話す機会をもうけたんだけど、いろいろ聞いているうちにすごく胸を打たれる瞬間が何度もあった。彼らは自分がどう生きてきたか、本当に個人的なことまで、面白い話を聞かせてくれた。私たちも思わず笑ってしまったけど、もちろんそれは嘲笑なんかじゃなくて。あれはとても特別な時間で、強い衝撃を受けたわ」。

過酷な状況を笑い飛ばせる強さと明るさ。それは撮影現場の空気でもあった。「オマールとの共演はすごく楽しかった。エリックやオリヴィエとのやり取りもね。本当に陽気な現場だった。監督たちと最初に会ったのは夏の休暇中だったけど、休暇が終わってもそのまま続いているみたいな感じ。仕事はプロとしてしっかりやるけれど、きっと彼らは以前から遊ぶ感覚を持ち続けていたんじゃないかと思う。だから、この映画にはドラマティックな部分もあるけど、全体的に明るいトーンが見え隠れしているんじゃないかしら」。

監督たちの作品の魅力を「深刻な問題を扱っていても、常に彼らならではのユーモアで味づけして提示するでしょ。そういうところが人の気持ちに届くんじゃないかと思う。彼らにシニカルな視点はないの。自分たちが作り出すキャラクターに対しても、俳優たちに対しても、すごく愛情があって、現場でも支えてくれる。撮影現場に常にあった善意や寛容さがスクリーンからも伝わるから、彼らの作品は多くの人に受けいれられ、ヒットにつながるんだと思うわ」。

ところでシャルロットというと、シリアスな作品で内に激しい感情を抱えた女性を演じるイメージがやはり強い。今回のアリス役では意外なコメディエンヌぶりも披露して新境地を拓いたとも見えるが…。
「繰り返しになるけど、オマールとの共演も楽しみだったし、アリスという役について聞けば、受けて当然だと思う。だから、いろいろ考えてこの役に挑んだわけではなく、今回はとても自然だった」。

それぞれの役を引き受けるのに理由があるわけではないという。
「自発的にこれはやりたい、これはやりたくないと決めることが多いかも。今回は好きな人たちが参加しているからやりたいと思ったし、知らない人たちのことを知るために参加することもある。作品に関わっている人に興味があったり、映画のトーンが好きだったり、そんな要素が全て合わさって、自分が納得できた時にやってみようと思うの。この数年で4本の作品に出演したけど、これは私にしては珍しいこと。つまり、やりたいと思う条件が揃う作品が4本続いたということなの。かなり大変だったけど、諦めたくないという気持ちがあったから、がんばれたんでしょうね」。

最近の仕事ぶりについて聞いてみると、「不思議なのが…」と切り出す。「今の私が興味を持って取り組んだ題材、10年前の自分は同じように感じたかなと思って。やっぱり、これはその時々のタイミングなのね。だから今後も、全ての要素が揃って心が動かされたものに出演したいと思うわ」。
《冨永由紀》

好きな場所は映画館 冨永由紀

東京都生まれ。幼稚園の頃に映画館で「ロバと王女」やバスター・キートンを見て、映画が好きになり、学生時代に映画祭で通訳アルバイトをきっかけに映画雑誌編集部に入り、その後フリーランスでライター業に。雑誌やウェブ媒体で作品紹介、インタビュー、コラムを執筆。/ 執筆協力「日本映画作品大事典」三省堂 など。

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