【インタビュー】鬼才ジャック・オディアール、『ディーパンの闘い』は「家族のラブストーリー」

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ジャック・オディアール監督 - (C) Kazuko Wakayama
  • ジャック・オディアール監督 - (C) Kazuko Wakayama
  • 『ディーパンの闘い』- (C) 2015 WHY NOT PRODUCTIONS - PAGE114 - FRANCE 2 CINEMA
刑務所内でのしあがる若者を描き、カンヌ映画祭審査員グランプリを受賞した『預言者』(’09)、大事故で脚を失うシャチの調教師をマリオン・コティヤールが演じた『君と歩く世界』(’12)など、毎回衝撃的な題材と、繊細な人間描写で世界にインパクトを与えてきた、フランスの鬼才ジャック・オディアール。最新作『ディーパンの闘い』では、第68回カンヌ映画祭で『キャロル』(’15)などの話題作を抑え、最高賞パルムドールを受賞したオディアール監督に話を聞いた。

映画の主人公は、スリランカ内戦で家族を失い、難民としてフランスにやってきた元兵士・ディーパン。彼は難民申請をしやすくするため、赤の他人である女性と少女と偽装家族となり、パリ郊外の団地い落ち着く。しかし、暴力の支配から逃げてきたにもかかわらず、団地はギャングのアジトとなっており、3人はまたも暴力にさらされてしまう。難民や移民の受け入れ、人種、宗教的対立など、ヨーロッパ社会が現在抱える問題に背景に、オディアール監督は全てを失ったディーパンが、家族の絆を再び獲得していく姿を、ドラマティックに描き出している。オディアール監督本人はとても紳士的で知的な人柄。柔和な笑顔で、この映画の持つ愛について語ってくれた。

――難民や移民は多くいますが、スリランカ難民を主人公にした理由を教えてください。

「まったくフランス語を理解しない、フランス文化にも縁がない人にしたかった。他の地域からの難民でもよかったかもしれないが、戦争地帯からやってきたということで、スリランカのタミール人になったんだ」。


――ギャング団同士の抗争や、ディーパンがそれに巻き込まれていく描写は、とても娯楽映画らしい要素があり、面白く感じました。

「そうしたジャンル映画らしい要素はこの映画全体にあると思う。後半は特に主人公・ディーパンが父親として、男としての気持ちを獲得し、闘って行く姿を描いているからね」。

――激しいバイオレンスが描かれる一方、ディーパン一家の食事や、日常生活についてもきめ細やかに描写されていますね。

「パリのレストランで食事をしていると、移民の人たちが薔薇の花や、おもちゃなんかを、テーブルをまわって売りに来る。よくみかける光景だけれど、そもそも彼らはなぜパリにやって来たのか。普段は、どんな生活をしているのか。そこにとても興味をひかれたんだ。彼らの食事風景や、日常の何気ない描写をたくさん入れたんだ。この描写があったからこそ、ディーパンたちの持つ美しさというものが生まれたと思う」。

――この映画はラブストーリーでありながら、バイオレンスもかなり強烈です。その配分を計算されたのでしょうか?

「事前に暴力をこれくらい入れていこう、とバランスを考えて作ったわけではないんだ。『ディーパンの闘い』は、疑似家族が本当の家族になっていくという意味では、家族のラブストーリーだ。ここに出てくる暴力は、愛の裏返しとしての存在であり、同時に愛の不在を表すものでもある。彼らはどう愛を表現していいのか、わからない人たちなんだよ。だから暴力はメタファーとして存在している。ディーパンと偽の妻・ヤリニが喧嘩をするシーンで、ディーパンは『平和を求めるために闘っている』という発言をするのが、その象徴なんだ」。

――ディーパンとヤリニの偽の娘となるラーヤの存在も重要ですね。

「彼女はとても繊細な子供で、素っ気ない態度を取り続ける母役のヤリニに『なぜ私を愛してくれないの?』と問いつめる。ヤリニは『私はあなたの本当の母親ではないし、家族でもないわ』と突っぱねるが、ラーヤは『じゃあ、妹だと思って』と、さらに詰め寄る。彼女の存在が、ディーパンたちに絆を生むきっかけとなるんだ」。
《text:Ayako Ishizu》

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